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カスミ理論の崩壊

前回の話は下記をご参照ください。


僕の中でカスミ理論は突然錆びつき始めた。
カスミ理論が間違っているわけでない。
使っている人間が理論に耐えられなくなることに気づいたのである。

カスミ理論は、積極的に行動して自分の力で人生を豊かにしていくといった理論だ。
著名人だとホリエモンやキングコング西野などが提唱している。
常に忙しく働いている人はおそらく提唱者だろう。



『頑張ったもの皆にチャンスがある。』
『人生を豊かにしよう』


提唱者はいつも大衆に対してこのようなことをのたまう。
チャンスを掴めと。

しかし、これには一つ大きな前提がある。
『人は皆平等にチャンスがある』ということだ。

何を当たり前のことをと思っただろう。
しかし、この前提がひどく厄介だ。


一つ例を出そう。
僕はベースが好きで10年ほど続けている。
歴も長い事あってそれなりに弾けるようになってきたが、プロアマ問わずバケモノみたいにうまい奴はどの世界にもいる。
特にYouTubeの『弾いてみた』動画界隈は学生、社会人でも末恐ろしい人が多い。

ある時、インタビュー動画を見たことがあった。
練習はどんなことをやっているのですか??
といった定番質問の後に彼らはこんなことを言っていた。
『学生の時は12時間。平日は4時間で休日は8時間くらい練習していますね』


僕は言葉が出なかった。
僕は指鳴らし程度に惰性で毎日30分も練習していなかったからだ。
彼らは基礎練習から耳コピ、アドリブ、コード理論まで目標設定した上で練習に取り組んでいた。

ここで僕はダメなやつだなぁと言いたいわけではない。
彼らが練習や努力することに対して適性があっただけなのだ。
好きこそ物の上手なれとも言うし、僕よりも音楽に対する情熱があっただけなのだ。
適性や情熱は平等に宿らない。

彼らは音楽に対して自分の「カスミ理論」を使った。
その結果、僕よりも難解なフレーズが弾けるしアドリブの幅も広い。
でも僕は仕方がないと思っている。
僕は彼らとは違うのだから。
彼らが「音楽」に夢中になっている間に僕は「自堕落」に夢中になっていたのだから。

そもそも人間はみな攻めて攻めて攻められるわけではない。
休みたいときもあれば、だらけたいときもある。
みんながみんな夏休みに漢字ドリルに取り組めるわけではないのだ。

人には個体差がある。当たり前だ。
勤勉な奴もいれば怠け者もいる。
エリートもいれば、働いていないやつもいる。
エリートの中にも最上位のエリートがいる。
理屈では分かっていたのかもしれないけど、頭では理解できていなかった。
様々な著者の自己啓発本が世の中に出回っているが、
少なくとも僕にとって「カスミ理論」は大衆含めた万物に応用できる理論ではなかった。


……
だからと言って、カスミ理論を否定するわけではない。
ポケモンの話に戻ろう。最近の僕はポケモン実況をよく見る。

ポケモンは数が多く、種類も豊富だ。
昔の151匹では飽き足らず、今は898匹もいるらしい(さっきググった)。
そうなると様々な特性・特徴を持つポケモンもいる。
高速アタッカーや耐久型、味方を援護するサポート型など
型の種類は豊富だ。
トレーナーはポケモンの適性・戦略に応じて、経験値を割り振っていく。

着目すべきは、ポケモンの適性・戦略に応じてというところ。
ポケモンバトルは6匹の中から3匹を選んで戦わせる勝ち抜き戦だ。
あるポケモンが攻撃寄りの特徴なら経験値を攻撃に振るし、
パーティ全体が防御重視なら不得意な防御に能力を割り振るかもしれない。


勿論、ポケモンにも個体差がある。
ピカチュウとトゲピーといった2種の異なるポケモン間だけでなく、
ピカチュウABの間にも個体差があるのだ。
しかし、ポケモン視点だとその事実に気づけない。
トレーナーの視点では当たり前のことでも
戦ってみないとお互いの差違がわからないのだ。


結局何が言いたいかというと、「自分を知ることが大事」ということだ。
自分は攻撃特化だと思い込んで、攻撃に特化しても
蓋をあけてみたらサポート型だったということもある。

自分を理解していないと、独りよがりになってしまって
自分や周りを苦しめてしまうだろう。
何より自分の適性や考え方を把握するのが第一優先。
別にバトルに勝つことだけがすべてではない。
適性がないのであれば、デパートやポケモンセンターで働く
癒し要因になることをゴールにしてもよいかもしれない。


逆に自分を理解していれば、戦略は何でもありだと言うことだ。
自分が攻撃型と分かった上であえて防御の道を進んでみる。
自分を知った上での決断は納得感があるし、失敗しても次の道を模索できるだろう。
カスミ理論はその次のステップの話なのかもしれない。


……

最後に余談になるが、ポケモン金銀にカリンといった四天王(ボス)が
こんなことを言っていた。

つよい ポケモン
よわい ポケモン
そんなの ひとの かって
ほんとうに つよい トレーナーなら
すきな ポケモンで
かてるように がんばるべき

この言葉は当時小学生だった僕に強く刺さった。
子供の時はよく意味がわからなかったが、大人になった今はなんとなく意味がわかる気がする。



今の僕はどんなポケモンでどんな特性をもっているんだろう。
僕のトレーナーはどんな戦略を描くだろう。
選んだポケモンは選べないから自分を好きになって勝てるように。
少ない休職期間でそれを見つけていきたい。


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