月曜モカ子の私的モチーフvol.253「在るだけでも良いということ/壷井さん in 滋賀」
何となくこの気配というか感触が残るうちに書き残しておきたい。……という意味でエッセイというかブログ的な気分、壷井さん in 滋賀。
デビュー直前からの付き合いだからもう14年とかになるが、実家に壷井さんがやってきた、そして泊まったのは初めて。
24日の月曜の夕方に守山駅前で待ち合わせて「がんこ堂」の守山駅前店と守山店を来訪し、その後、がんこ社長と大栢さんと壷井さんとわたしの4人で「ぜんべさん」という和食のお店へ行った。
終始熱く語っていたんだなあと思う。写真が1枚もない。
がんこ田中社長は幻冬舎に”ごっつ親しい”営業さんがいるらしいが壷井さんと会うのは初めて。
「ほんまに壷井さんは何や全然幻冬舎ぽくないなあ!」
と田中社長。田中社長は幻冬舎に対しては色々思うところあるらしいですが、わたしにとってはこの14年間彼女が「幻冬舎そのもの」なので、
あまり一般的な幻冬舎というものがどんな感じかはわからい。
(というわけで「ぜんべさん🍶」リンクを貼っておきます、いい雰囲気。松の司🍶がやはりおいしかった。古民家という一点で古民家酒場の女主人としては一気に親近感✨)
ところで。
久しぶりにがんこ田中社長と大栢さんと一緒にご飯を食べてお酒を飲んで、(ああ、自分は本当に田中社長に、がんこ堂に、愛されているんだな😭)
と実感しました。
「珍しいですよああいう本屋さんって」
と壷井さんは言っていたけど、壷井さんも逆に、
「壷井さんもようモカちゃんに付きおうて滋賀まで来て。そやけどモカちゃん、売れるとおもてるか?」
と聞かれていた。そして壷井さんも、
「それは結構難しいと思っています」と答えていた。笑
「そやろ」
その日1番のがんこ社長の嬉しそうな顔。
「3000部とか刷ろうかな♪ 言うてたから、絶対やめい!!いて言うたねん、壷井さんも止めたか?」
「まあ……そうですね、500部を提案しました」
「そやろ(満面の笑み)」
「そやから謎や。全力で売りにかかっても売るのが難儀なタイプの作家やのに何をISBNは要らんて・・・・」
その後のがんこ社長最高に面白かった。
「うちもモカちゃんの本さ ”がんこ堂でしか買えません!!!” を推してるけど、実際ほんまに”ここでしか買えへん…”て いうても、
ほんまにどこにもなかったら、
”ここでしか買えません”の意味変わってくるわな笑」
そんなわけでISBNは取得することにしました。
「ISBNないて!それだけで置いてもらえる本屋ごっつ減るんやで」
わかるか!はいもちろん。取ります。ただちに。
そんなわけで。
まあこんないきさつを綴ると、何や社長に怒られてたみたいですが、全然そうではなかったんです。
もちろんわたしも「宵巴里」がこの3ヶ月でがんこ堂でバカ売れしてると思わなかったから掛け高めに仕入れてもらった身として(つまり本屋さんの儲けが全然ない)申し訳なく感じていた。同級生とか友達とかも「いいね!」とかしたり心で「頑張ってるな!」とか思ってくれていたとしても基本「本を読む」人でなければなかなか1700円出して友達の本を買いに行くってしないし、なかなかがんこ堂で「守山出身の作家さん」と言ったって「じゃあ買いましょか」とはならないよね。
それは壷井さんに対しても思っていることだけど、わたしデビューから14年間、がんこ堂にも、壷井さんにも、こんなに熱烈に応援してもらって本出してるのに数字で返せてなくていいのかな。
大栢さんに「晩御飯は壷井さんと二人でなんて水くさい言わんと一緒にたべましょう」って言ってもらった時も、わたしはもしかして「我々も想いはあるけど商いやから、こういう低迷している数字の作家をいつまでも後押ししてられへんよ」とかそういうお話があったり、壷井さんに対しても書店としてはこれからどれくらいの営業活動をして売ってくかビジョンを聞きたかったり、あるのかな、と思っていました。
あと、不良債権作家の接待費をさらにがんこ堂さんが持つのも忍びないとか(ご飯を最初しない方向にしてたんはそういう色々もある)
でもそういうのじゃ全然なかった。
逆に田中社長も壷井さんも、
「専業作家になりたいんか? モカちゃんはそんな必要ないと思う」
とおっしゃっていた。
がんこ社長と壷井さんが言ってくれたことは概ね同じで、中島桃果子は生き様でやってるんやし店を経営したりだって誰もができることじゃないんやから、そういう生き様を大事にして、生き様の中、その一部に執筆活動があって時折本も出す。それでええんとちゃうの。
そういう感じがおもろくてわしら応援して壷井さんかって滋賀まで来てはるんやから。
ということ。
その発言は割と目から鱗で、わたし明日からまた生き様変わるなあと思った。なので記しておこうと思ったんだよね。
その後の二人飲みの時も壷井さんはそう言っていて。
「人間としてどうか、が一番大事じゃないですか」
なんとなくこの2年で自分が受けた出版界隈の人たちから自身への”見切り”のような対応、それって(人としてどうかな?)と思うようなものも多かったけど、それは自分が数字を出さなかったせいなのかなと思うと呑み込むべきなのかとも思う、と言ったような話に対して壷井さんははっきり「いや、それは違うでしょ」と言い切った。そしていつもわたしを本当に丁重に扱ってくださる譲さん(佐々木の譲さま)の話などになり、壷井さんはやっぱり人間性と作品は切り離せないと思うと言った。
つまりは作家も最終的には人間性がその人の生き残りを決めていくんだから、例えば人間的にすごく惹かれる人がいて「でもあの人売れてないし」なんて人は思わないじゃないですか、モカコさんは他人に対しては絶対そんなこと思ったり言わないのにどうして一番評価してあげないといけない自分に対してそうなんですか。みたいなお話だったんだけど、
まあそれってつまりはわたしと壷井さんや、がんこ社長と自分の関わりって「仕事を超えた」ってことでもあるんだなって感じて——仕事でもありそれを超えた存在でもある——それをありがたく思った。
やっぱりお店をやっていても「お客さんとお店の人」っていう関係性で始まったものはそこが基盤だからそこ無くして別の関係性に展開することは難しい。だけどそこを基盤に大切にすることで例えば自分とりさこや自分とエコ氏のようにそこを超越した関係になってくことは、確かにあるよな。
「まあでも。"モカちゃんが作家辞めて他のことやってそれが幸せやったらワシそれでも全然ええと思うで"って社長言ってましたけど」
それは、本当に作家辞めてもいいと思ってるという意味ではないと思いますよ。壷井さんは言った。
もし本当にそう思っていたらあんな場所にあんな風に置きませんよね、
モカコさんの本。
「つまりはそういうことなんです。著者として、ある一定以上の想いが田中社長だって、作家としての中島桃果子に、あるってことなんだと思うんです」
今は「二刀流」でも凄い結果を出してる人が世界にはたくさんいるんだけど、重ねながら進んでいく毎日の中では本業が2つあるというのは中々キツイし人に理解されにくいふしがある。
実際あからさまな「どうせ片手間感」という目線には常に晒されながら生きている。みにくいアヒルの子みたいなものだ、自分の生息場所がよくわからない。
「割と定休日多いけど休みの日なにやってんの?数字厳しいならもっと開ければ?」とか「こちとら必死で毎年1冊出してるんですよ」ってこっちの同業者とあっちの同業者は思うのかな。とか、いつも考えるので、
まさか小説同業側で、しかも本を売ってくれている本屋さんや編集をしてくれた人が「店やったり芝居したり歌うたったり、今のままですごくいいと思いますよ」なんて言ってくれると思っていなかったので。
なんというか、人はやっぱり向かい合って話さないとわからないことがいっぱいあるなと思った。
わかりあっているつもりでも、壷井さんや田中社長の、そしてもちろん大栢さんの「手放しの愛」というのはこうして写真も撮らずに話しこまないとわからなかったんだし、例えば勝手に応援してもらえてると思っていた糸が、実はもうどこかでドライに切られていることもあったりするんだし、
信頼って難しい。
だからこそやっぱり一期一会で日々を新陳代謝して、毎日をまっさらな気持ちで向かい合っていかなければならないんだなと思った。
そしてやっぱり失われた糸よりも今紡がれている糸のことを強く抱いてそこを基軸にものを考える必要が、ある。
自分が毎月気に入って見ているスピ動画があってそのEAという金髪のキュートな女性が「あなたは”在る”だけでいいの。それに気づいて”在る”ことを大切にするだけで十分すごいの」「どこかを目指したり何かになる必要なんて全然ないんだよ、それは植え付けられた間違いの考えだから」みたいなことを言っていたんだけど、
そういう感じのことを、田中社長と壷井さんは言ってくれたなあと思って。
なんか生き方や宵巴里へのアプローチも変わってきそうだなと思った。
別に「宵巴里」も売れなくていいようだし。笑。
小説も、店頑張りながら書けるときに書くのでいいみたいだし。
専業作家にならなくていいみたいだし。笑。
嬉しい。
「ISBNだけは直ちに取りなはれ」
ということで翌日からISBNのこと、始めています。
まずは渾身の装幀を仕上げてくれた松本さんに相談。
あんなに美しい本にバーコード嫌がられるかと思いましたが「剥がせるシールにすればいいですよ」とあっさり。笑。
出版者の名前をどうするか迷い中。「モカティーナ書房」なのかな、とも思うし、「Artistic Pantie」なのかな、とも思うし、シンプルに中島桃果子でもいいのかな、とかも思う。情報が全部公開になるので屋号であった方がいいんだなとは思っています。
ISBNを取ったらAmazonでも売ることになります。
もちろんイーディことInnocence Defineのストアでも買えるけど、
現在こちらのストアではこれを推していますので!
最後に。壷井さんわたしのこと「売れるのは中々難しい」とがんこ社長に正直に答えておられましたが、
「しかし出す本出す本が、少ないけれども誰かに深く刺さって一生この著者が好き、みたいなファンを獲得する。そういうカルト的な人気を誇る作家ってそういないので、そこがいいなって思ってるんです」とも言ってました。
なぜこの文を加筆したかというと月モカを読んでくれているあなた、
つまりFB小説家ページフォロワーでもある皆々さまは、わたしが文芸で本を出さない10年の間もずっと寄り添ってくれていたからです。毎回いいねくださる名前、わたしよく知っていますし、十年前から今も、
必ず毎回、欠かさずくださっていますよね。
そういう皆様の為に今後も生き様を大事に、生きて、
書いてゆこうと思います。
改めて今後ともよろしくお願いします🌝✨🥂✨
それではまた月曜日に会いましょう♫
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☆モチーフとは動機、理由、主題という意味のフランス語の単語です。
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長く絶版になっていたわたしのデビュー作「蝶番」と2012年の渾身作「誰かJuneを知らないか」がこの度、幻冬舎から電子出版されました!わたしの文章面白いなと思ってくれた方はぜひそちらを読んでいただけたら嬉しいの極みでございます!