手塚治虫『火の鳥望郷編』読書感想

★感想

『火の鳥』の6巻目。
時系列によれば、「復活編」と「未来編」以前のストーリーである。
ある意味、泣ける話だと思った。
これはもう、今の地球、これからの地球にあってはならないという話である。
テーマとしては、人類の文明によって、原罪を生み出すことによって、文明は崩壊するというテーマである。
今回は地球から別惑星に移住したロミとジョージは惑星内でどのように生活するかの話である。
勿論、ムーピーが出てきます。
地球内の人間(地球人)はどのようなプロミスで、こういった傲慢的な存在になってしまったのかを手塚治虫の作品としていかにも考えさせられるような話である。
人間の善と悪によって、それぞれの価値観が違うのである。
善は、人々を助け、親切で優しい心を持っていること
悪は、人を殺し、欲望と支配力によって、権力でコントロールする悪に支配した心を持っていること
せっかく、惑星内で生きていくために子孫を作り上げ、自分の息子とヤッて(良い子はマネしないでください。近親相姦はダメ)、そして、ムーピーとの混血児を作り上げ、神聖で、純粋なエデナという町を作り上げてきたのに、ズーターパンというネズミのずる賢い商人によって、エデナの治安が悪くなってしまったことが、地球内にいる人間と共通する。
旧約聖書によると、「創世記」のアダムとイヴの話のように、人間の悪は神にとっては許されないものだと分かる。
原罪を起源として、人間の過ちをエスカレートしていき、結局は地球もしくは人類を滅びるということになってしまうのであろう。
一番泣けたところは、コムとロミが地球で牧村によって殺されるのが切ないと思った。
やはり、コムは最後に牧村がロミを埋葬するときに読んだ『星の王子さま』に出てくる王子さまのようだった。
ムーピーとコムとエデナの住民は地球と違って、天使のような存在である。
それを穢してしまうと、文明の町が崩壊しつつもあるのであろう。
地球は宇宙の中で一番美しい惑星である。
我々はその惑星に住んでいる。
その大きくて、美しくて、神聖な星なのに、人類は何も美しくもないし、神聖でもない。
すごく汚らしい心を持っている。
コムがこう言っていた。


「どうして心を持てないチヒロ(ロボット)がやさしくて心を持っている人間がぼくたちを殺そうとするんだろう?」


このセリフを読むと、心の中がズキときた。
正しくその通りである。
これは「復活編」読んだら分かるかもしれないが、人間の心を持てないロボットだって、感情があるものだというのを認識するべきだ。
地球に来たコムとロミは密入国だとバレて、警察に追いかけられたが、ブラックジャックに似た不良青年(ヤクザ?)のおにいちゃんであるガラガラ蛇とその彼女であるフォックスによって、自然に感じさせられるような本来の地球の姿を見せられた。
やはり、ヤクザ?でブラックジャックに似たおにいさんガラガラ蛇のサリーとフォックスは親切で優しいと思った。
一方、牧村は宇宙連絡員だけれども、政治家や懲罰委員会に背けずに、密入国者の暗殺という指示に従い、ロミとコムの暗殺することになった。
やはり、そうでもない地球人はよっぽど闇でしか思えない。
今回の作品はやはり、色々考えさせられるような内容であることを手塚治虫は人間観について述べられている作品は素晴らしいと思った。


★オススメだと思うところ

「人間ってなんだろう、罪ってどこからなんだろう等」哲学的に考えている方には、今こそ読むべきオススメの本である。


★おわりに

今回の作品は本当に色々と考えさせられるかのような作品です。
でも、「望郷編」は多少、編集されています
出版社によって違うのか、単行本・マガジンに書かれている作品の中で脚色を変えているのかもしれませんが、編集されて、以前の内容と違っていたりもします。
これは、人間の哲学的な内容が含まれているので、気になる方は是非とも読んでみてはどうでしょうか。

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