不安定化する世界の中の日本
はじめに
以下に記載している内容は、私個人がこれを書いている時点で何となく思っていることであるため、相反する意見を否定するものではありません。価値観、住んでいる地域、得ている情報は人それぞれ異なるものであり、それによって多種多様な意見があるでしょう。最後まで読む方がどれほどいらっしゃるかはわかりませんが、書かれている内容についてもをそのまま受け止めるのではなく、ご自身でも色々調べてみて様々なものを比較してみることをおすすめします。
今の世界は戦後、最も不安定な時代を迎えているのではないかと思われる。戦後長らく続いた冷戦期は、東西の緊張関係はあったけれど大国間同士の関係で見れば、ある意味均衡状態が維持されていた。もちろん、途上国など多くの地域では戦争、内戦、紛争など必ずしも安定していたと言うわけではないけれど。
国家間の対立、国内の分断、先進国での左派・右派の躍進にともう中道勢力の後退、様々な要因が絡み合い世界は不安定化の一途をたどっている。
冷戦終結以降、経済のグローバル化か推し進められ、国家の枠を超えて各国が経済的な関係を強めてきた。経済的な摩擦はあるものの、大国間の対立が終わり、協調の時代が訪れるように考えられてきた。
しかし、それは良くも悪くも米国1強と言われるように、軍事的にも経済的に他国の追従を許さない米国という強力なリーダーが存在して初めて成り立っているに過ぎなかったのだろうと、今は思われる。
米国の経済的、軍事的なプレゼンスの交代に伴い、新たなパワーバランスを構築すべく、様々な国々が動き出した。大国の動きがニュースで大きく取り上げられているが、それ以外の国々も新たな自分たちの立ち位置を確立すべく動き出している。結果、戦後において世界は最も不安定な状態となっているのだろう。
戦争
日本でも大きく報道されているロシアによるウクライナ侵攻。このロシアによるウクライナへの軍事侵攻に伴いロシアと欧米の関係は決定的に悪化しただけでなく、ロシアよりの立場を撮っている中国、北朝鮮、イランと欧米の関係も対立に向かっている。この戦争によって起こった食料、エネルギー価格の高騰は日本、欧米のみならずグローバルサウスの国々も大きな影響を受けている。
中東においてはハマスのイスラエルの大規模テロを景気にガザ地区やイスラエル北部(イスラエルV&アメリカ vs ヒズボラ&イラン)での戦闘が激化。イスラエルとイランの対立も先鋭化し中東全域が不安定化し始めている。
それ以外でもある程度規模が大きものとして、アルメニアとアゼルバイジャンの間で争われたナゴルノ・カラバフ紛争。日本では既にあまり報じられていないがスーダン、ミャンマーでは今なお内戦が続いており、シリアの内戦もまだ終結したわけではなく、2022年のロシアのウクライナ侵攻以降だけをみても,中央アジア、アフリカ、アフガニスタンの各地で小規模な軍事衝突が発生している。
日本の周辺においては
戦争に至ってないまでも、北朝鮮は韓国を明確に敵国に指定し、弾道ミサイルの発射実験を繰り返すなど、軍事的な威圧を強めている。なお、北朝鮮と韓国は休戦中であり、国際法に照らし合わせれば朝鮮戦争は終結しておらず両国は今現在も戦争中であると言うことになる。
また、日本でも度々報道されている台湾有事、中国がわも台湾の武力統一と言う選択肢士を放棄しないということは明言しており、中国軍も度々、台湾周辺での軍事演習を繰り返している。
実際に中国が台湾への軍事侵攻を行う可能性は低いと見られている。それはやはり経済的なダメージが致命的なものとなるからである。ただし、経済的な観点から起こり得ないと言うならば、ロシアのウクライナ侵攻も起こり得ないということになるが、実際にはロシアは多くの有識者の予想に反してウクライナへの軍事侵攻に踏み切った。
権威主義国家においては指導者が大きな権限を持っているがゆえに、指導者の判断次第で経済を無視してでも戦争が起こりえるのだと、世界が改めて認識する事となった。そのため、中国による台湾への侵攻もありえないと思いつつも、完全に否定できないのも事実である。
軍備の拡張
ロシアのウクライナ侵攻を景気に欧米でも軍備拡大路線が復活しており、インドなども中国の軍拡に伴い自国の軍事力強化に力を入れている。
日本周辺においては
中国では経済発展とともに核戦力、通常戦力の近代化と共にその規模も急速に拡大している。中国の核戦力は500発程度と言われているが2030年頃までに倍の1000発近くになるのではないかと言われており、海軍戦力に至ってはその艦艇数では米国を抜いて世界1位となっており、弾道ミサイル戦力なども格段に強化するとともに、南シナ海、東シナ海において周辺国(日本、フィリピン、ベトナムなど)と領土、領海問題を起こしている。
北朝鮮では核保有に続き弾道ミサイルの発射実験を繰り返し、着実に核の戦力化を推し進めており、ウクライナへ侵攻したロシアは完全に戦時体制に移行し、国を上げて兵器の生産に全力を傾けている。
経済対立
ロシアのウクライナ侵攻により、日本、欧米諸国はロシアに対して経済制裁をかし、ロシアも欧州へのガス輸出の多くと止めるなど、ロシアとは経済的にも分断が進んでいる。
米国と中国間の経済対立も深まるばかりで、米国からの半導体に関する輸出規制、鉄鋼、電池、EV車両など中国製品に対する関税の引き上げ、安全保障を理由中国のファーウェイ製品の利用禁止など、中国製品に対して様々な規制、関税の引き上げが行われている。
欧州でも安全保障を理由に、通信事業者に対して中国製、おもにファーウェイ製品の使用を禁止する法案がイギリス、ドイツで制定されフランスでも政府から通信事業者に使用しないよう勧告がだされるなどの規制が始まっているだけでなく、中国での不正な補助金による過剰生産について調査を始めるなど、一部の国を除いて中国に対して厳しい目を向けるようになっている。
通信機器についてはインドも安全保障を理由に2020年におきた中国との国境紛争を契機に、ファーウェイ製品への規制が実施された。
日本について
日本は島国であり海によって他国から隔離されているせいか、主に中高年を中心に世界に対する関心が低いように思われる。また、戦後教育において戦争や軍事に関することをことさら忌避して避けてきたことから、そういた事柄に関する見識が欠落しているようにも思われる。
報道についても最近ではウクライナやガザといった一部の地域についての報道はなされるものの、依然として国外での出来事についての報道は少なく、それだけ国民の関心事も国内のことばかりに向きがちである。
もともと日本人は変化が嫌いである。一度こうあるべきと定めたらよほどの外圧がない限り変わろうとしない民族性があると思っている。近代で最も大きな出来事と言えば、一つは明治維新、もう一つは太平洋戦争での敗戦であろう。この2つは近代において、日本が進むべき方向性を大きく変えた出来事である。逆に言えば、これだけのことがなければなかなか、進む方向を変えないのが日本人であのだろうと思われる。
上記ほどではないにしても国内の方向性を変えた出来事と言えばバブル崩壊であろう、これにより日本は長いデフレに突入している。なかなか抜け出せない原因の一端として、上記のような国民性も影響しているのではないかと思われる。
見方を変えればゆっくりと方向性を変えたり、紆余曲折するのは苦手で変わる時はいつも短期間でダイナミックに変化しているとも言える。こうして改めて考えてみると、愉快な民族にも見えてくる。世界が不安定化する中、相変わらず我道をマイペースで歩み続け、最近の最大の関心事も自民党の裏金問題。世界情勢などどこ吹く風と言った感じである。
南西諸島において自衛隊の基地問題について
南西諸島において自衛隊の基地が設置された際、基地があるから攻撃を受けるというような言説も見受けられるが、実際には基地があるから攻撃を受けるのではなく、軍事的、政治的に重要な場所だから攻撃もしくは占領対象となるのであって、防衛する部隊が存在しなければ、無抵抗で攻撃を受けるか、侵攻してきた地上部隊に占拠されるだけの話である。
戦争において民間の施設だろうと民間人だろうと、攻撃・占拠の対象となりうることは、ウクライナやガザ、シリアなどで起きたことを見ても明らかである。もちろん、島民にとっては基地があることで危険が身近に感じられることから不安になることは理解できるとまで言わないが想像はできる。ただし、基地がなくなったからと言って危険(リスク)が一緒に消えてなくなるわけではない。
自衛隊と抑止力について
もう少し話を広げれば、自衛隊が、日米同盟が存在するから日本が戦争に巻き込まれるわけでもない。未だ人類は艦砲外交から脱却はできていない。軍事力は現実のものとして、国家の目的を達成する有効な手段であると認識されている。日本が軍事力や戦争を放棄しても戦争がなくなるわけでも、日本が戦争に巻き込まれなくなるわけでもない。
戦争は国家が政治目標を達成するための手段一つであるとされている以上、相手国が最終的に戦争と言う手段が有効だと判断すれば行使される。特に専制的な政治体制の国家においては。その判断を個人が行うため、より危険性が高いとも言える。逆に、その手段を行使することが有効でない(デメリットのほうが多い)と判断される限りにおいて、行使される可能性が極めて低くなると言うのが、昨今の日本でもよく使用される「抑止力」の基本的な考え方である。
日本はロシア、北朝鮮、中国といった核保有国と隣接しているという、世界でも稀な不安定な地域に存在していると言われているが、おそらく当の日本人の多くはそのような感覚は持っておらず、昭和の冷戦期の感覚のままなのではないだろうか。冷戦期においてはある意味、日本は蚊帳の外というか平和に国内の経済成長だけに専念していれば良かった。国内においても国外に関する報道は極端に少なく、あまり関心を向けてこなかった。
しかし、現在では日本もG7の一角を占め大国の一つと認識されている。つまり、日本の行動は世界からも注目されるており、また、東アジア地域の安定にも日本は大きな影響を持つ国家であることも事実だ。もちろん、そこには日米同盟を通じた米国の存在が大きいのも事実ではあるが、日本の立地そのものが大きな意味を持っているのも事実である。
有事に対応する法制度について
戦後、設立された自衛隊はながらく日本国民自身からも非難の対象であった。最近では災害救助などでのかつやくから自衛隊への理解が進み、昔ほど風当たりは強くなくなって入るが。しかし、法制度においては、まだまだ実際の有事に対応できるものであるとは言い難い。そもそもそういったことを前提としていないのだから。これは国民の理解が得られずらいという点にも起因している。
戦後一貫した軍事アレルギーのようなものである。もちろん、日本の戦争の放棄をうたった平和憲法については私もこれからも堅持すべきと思っているし、武器輸出に関しても慎重であるべきだし、閣議決定で決定するのではなく、立法すべきだとも思っている。また、日本が他国に行う支援も非軍事的なものを中心に行っていくべきだとも思っている。ただし、抑止力という点については、バランスを欠く事が帰って戦争を引き起こす引き金になりかねないということについても考えるべきである。
それは軍備だけでなく、有事に対して迅速かつ有効に対応できる組織、法制度の整備についても言えることである。(もちろん軍が文民統制(シビリアン・コントロール)下にあることが大前提である)
台湾有事について
台湾有事は日本有事と言われている。実際にその通りだと私も考えている。これは台湾有事に際し、日本が直接攻撃を受ける、受けないにかかわらず、日本も非常に大きな被害を被る可能性が高いからである。
御存知の通り日本は中国との経済的なつながりは大きく、また、台湾は半導体の生産の多くを担っている。コンピュータや携帯などに使用される最新半導体に関しては7割近いかそれ以上。更に台湾海峡を通過するシーレーンは日本の動脈の一つである。東南アジアからの食料や工業部品、インドからの綿、中東からのガスや石油、アフリカからのカカオ、コーヒー、鉱物資源、ヨーロッパからの様々製品の輸入ルートであり、逆をたどればそれらの国々への輸出ルートでもある。
日本の動脈の一つであるシーレーンが短期間でも閉鎖されれば、途端に日本は干上がってしまう。そうなった時、通貨の円自体もさらに暴落することだってあり得るかもしれない。現時点でも円は主要通貨に対してほぼ全面安と弱い通貨になりつつあり、それは現在の日本の国力、将来性への海外の評価であると見ることもできる。
現状では、もし台湾有事が勃発すれば日本、米国、中国とも共倒れとも言える大きな被害を被ると予測されているため、台湾有事が現実のものとなる可能性は低いとみなされているが、中国国内の経済悪化にともない、失業率の増加、賃金の未払い、給与の大幅なカットなど様々な国内問題から中国国内が不安定化する事も懸念されている。専制的な政治体制の国家において、国内の不満が大きくなったときに外に敵を作り、国民の不満をそちらに向けるという政策は上長手段であり、今後、中国と米国との対立が先鋭化していくことも懸念される。
ロシアのウクライナへの侵攻について
ロシアがウクライナへの侵攻に踏み切ったのみ短期間で制圧できるとの判断からだと言われている。当時のウクライナは同盟に属しておらず、国内の軍事力もロシアに比べ極めて小さなものだった。ちなみにウクライナは2014年のロシアのクリミア併合と東部でのロシアの工作による内戦が勃発する以前は、陸軍の定員を何度も削減するなど、明らかに軍縮傾向にあった。国内の兵器もほとんどう更新しておらず、兵器は旧式化し、実際に稼働する数も極端に少なくなっていた。
ウクライナに対する即時停戦論について
欧州に目を向ければ、ロシアのウクライナ侵攻も終わる気配がない。ロシアのプーチン大統領も予定通り再戦され、ロシアは本格的に総力戦の体制に移行しつつある。日本でも一部で即時停戦論というものが聞かれるが、多くの人的被害が出ているのだから即時停戦すべきと言う意見は一面では正しい。
ただし、それは物事の一面しか見ていないとも言える。停戦可能ならば停戦した方が良い、もんだいはどのように停戦を実現するのかという点である。現時点ではロシアは総力戦体制に移りつつあり、譲歩してまで停戦に応じる気配はない。ここで思い出してほしいのは、ロシアがウクライナに対して侵略戦争を仕掛けているのであって、ロシアとウクライナを一括りに戦争を行っている国とみるのは誤りである。即時停戦論においては、そのようにどちらも戦争している国と言う括りでみているから、どちらも即時停戦すべきと言う考えに至っているように見える。
侵略しているのはロシアであるというのは当然のことながら、攻撃しているのはロシアであり、ウクライナはそれに対し、国土、国民を守るために防衛をおこなっているのである。防衛のために局所的に反撃に出ることはあるが、それも国土と国民を守る防衛の一環である。
もう少しスケールを落として例えるならば、突然暴漢に襲われ暴行を受けている人、暴行を行っている人双方に対して暴力反対、争うのはすぐにやめるべきなどと言うだろうか。普通、それは暴行を行っている側に対して言うべき事である。さらに暴行が行われている現場で、話し合いでと説得し続けるのか。普通はその場で暴行を行っている側を取り押さえるか、それが無理なら警察に通報して暴漢の方を取り押さえてもらうことになるだろう。
残念ながら国家間の戦争においては、強制力を持った警察機構は存在しない。司法に関して言えば、国際機関は存在するが強制的な執行力は持っていない。加盟国は執行する義務を負って入るが。
ウクライナに対して行われているロシアの侵略戦争について
ウクライナに対して行われているロシアの侵略戦争は、日本からすれば地球のほぼ反対側、遠くで行われている戦争である。ただし、侵略を行っているロシアは日本の隣国でもあり、米国と並んで世界最大の核保有国でもあり、決して日本と無関係の出来事ではない。
この戦争が、どちらか一方が勝利して終わるにしろ、痛み分けに終わるにしろ、終わったからと言って日本・欧米とロシアの関係がすぐに修復されるわけでもなく、対立は更に深まっていく可能性のほうが高い。
また、そのロシアは中国、北朝鮮などとの関係を強化しており、実質ロシアの戦争継続を支えているのは中国であるとみなされ、ロシアは北朝鮮から武器・弾薬を調達を行う見返りとして、弾道ミサイルに関する技術を北朝鮮に提供しているのではないかとも言われている。
東アジアにおいて、日本の地理的な位置は欧米とロシア、中国、北朝鮮との境界、ある意味最前線と言っても良い位置に韓国と並んで存在している。これらの国々の対立に対して、日本が無関係である事も、何の影響も受けないという事ありえないのは明白である。
ロシアと日本・欧米の対立が深刻となれば、これら中国、北朝鮮との関係も更に悪化するすることが懸念される。そして、ロシア、中国の間でも必ずしも利害が一致していない部分もある。中央アジア、アフリカにおいて双方が影響力を強めるためせめぎ合っている部分もある。
日本は米国の同盟国でありG7唯一のアジアからの加盟国でもある。しかし、中国、ロシア、北朝鮮は地理的にはそれらの国々よりもずっと近い隣国であることも事実である。そういう意味では、日本は両者の間にあってより難しい立ち位置に置かれる事になるだろう。
大陸の情勢について
島国である日本では馴染みが薄いかもしれないが、ロシアや中国などの覇権的な大陸国家においては勢力圏というのは極めて重要な意味を持つ。陸続きであるがゆえに、国境よりもより外側に安全地帯を広げておきたいと言うのは何もおかしな発想ではない。しかし、意に反して自国の勢力圏であると言われるのも周辺国にとっては迷惑な話であり、中央アジアの国々においてもそれぞれの国が、自らの立ち位置を模索し始めている。
アルメニアはロシアから離れ欧米に接近しつつあり、アゼルバイジャンはロシアとも関係は深いが、同様に民族的にも繋がりの強いトルコとの関係を深めている。カザフスタンにおいても時折、ロシアから距離を置くような発言が見られるのにたいし、逆にカザフスタンにたいしてロシア側が軍事的な威圧とも取れる発言を行ったりもしている。
欧州について
またロシアのウクライナ侵攻において欧州における最も大きな変化と言えば、スウェーデン、フィンランドのNATOへの加盟であろう。ながらく欧州とロシア(冷戦期はソビエト)との間にあり、政治的には欧州よりであったとは言え軍事的には中立政策を取っていた両国がNATOに加盟することとなった。日本もインド太平洋の安定のため、近年ではNATOとの関係を深めつつある。
欧州といっても一枚岩ではない。EU加盟国、NATO加盟国についてもそれぞ乗れの国の思惑があり、一部ではロシア、中国寄りの国家も存在し、また極左政党が躍進する国家もあり、エネルギー問題、インフレとう国内にも様々な問題を抱えつつ、ウクライナへの多大な支援を継続している。
核の拡散について
ロシアがウクライナへ軍事侵攻を行ったことに対し、欧米は経済制裁やウクライナへ経済支援、武器の供与など大きな支援を続けているのに対し、ロシアは度々、核による脅しを繰り返しているだけでなく、ロシアでの核兵器の近代化、隣国ベラルーシへの戦術核の配備。アジアにおいても北朝鮮の核保有、中国の核兵器の急速な拡大など、再び核の軍拡が進行しつつある。
米国のシンクタンクの研究においても、ロシアがウクライナに対して勝利した場合、あらためで核の脅威が世界で認識され、現在核を保有していない国においても核武装論が広まっていくのではないかと懸念されている。事実韓国においても核武装論を主張するものが一部出てきており、一時的にではあるが日本でも核シェアリングが話題となっていた。
日本の立ち位置について
軍事、経済、エネルギー、食、情報など様々な面で安全保障という言葉が使われ、温暖化によるものと思われる気候変動など環境対策の必要性など、どの国にとっても単独では対応できない問題が山積みとなっている。もちろん、日本もその例外ではないどころか、島国であり多くを他国に頼っている日本にとっては深刻な問題ばかりである。
立地としてはロシア、中国、北朝鮮と核を保有している専制主義的な国家と隣接し、同盟国である米国をはじめ同じ自由民主主義国家は太平洋を挟んだ向こう側か、欧州のように地球の反対側と遠く離れている。
お隣の韓国は、現在の大統領は親日よりの政策を行なっているが、現在の議会で多数を占めている政党は現大統領の所属政党とは対立する政党であり、結果、過激な反日であり、次の大統領は反日に戻りそうな雰囲気でもある。
それぞれ国ごとの国益があるとはいえ、価値観が近い国家同士が近づくのは自然な流れである。しかし、日本の場合は価値観が近い国は地理的に遠く、価値観の異なる国とは地理的に近くと難しい位置にある。
阿部元内閣総理大臣の提唱した「開かれたインド太平洋構想」は、日本の置かれた政治的、地理的な問題(地政学的リスク)を考えた場合、日本にとってどれほど重要なものであるかは、以下の累計貿易額のグラフを見てもよく分かるのではないだろうか。
![](https://assets.st-note.com/img/1717311993050-JgbHyzUQgE.png?width=1200)
集計された223カ国(地域も含む)中、輸出入合計の上位30カ国を抜き出したのが上記のグラフであり、日本の輸出入全合計の約92%を占めている。
さらに、台湾有事が実際に起きてしまった場合、インド太平洋、特に南シナ海、台湾海峡を通過する貿易ルートの通行が困難となった時影響を受ける可能性の高い貿易先としては、
アジア・インド方面では、中国、台湾、タイ、ベトナム、インドネシア、香港、マレーシア、シンガポール、インド、フィリピン
中東方面からは、サウジアラビア、カタール、クウェート
欧州方面からは、ドイツ、フランス、英国、イタリア、スイス、オランダ、ベルギー、アイルランド、スペイン
以上の国の合計は全体の約61%を占めていることになる。
上記に含めなかった国は米国、韓国、オーストラリア、カナダ、メキシコ、ブラジル、チリと北米、南米、韓国、オーストラリア。しかし、これらの国との貿易もなんの影響もないというわけではないだろう。特に貿易額4位の韓国は、台湾有事と朝鮮戦争の再開が時期お同じくして発生すれば、当然こちらも大きな影響を受けることになる。
外側から見た場合、北米、欧州、韓国、オーストラリアも日本のみならず中国、台湾との貿易額は大きく無視できない影響を受けるため、遠く離れた欧州までインド・太平洋の安全に多き関心を示すのは当然のことであり、そのためNATO(北大西洋条約機構)やオーストラリアと日本の協力関係が深まるのも自然な流れである。
オーストラリアは同じ太平洋に位置する国であるため、それほど違和感を感じないだろうが、NATOは日本から見て地理的には地球の反対側に位置する。そのため、なぜNATOとと思った方もいるかも知れないが、欧州もまたこの問題に無関係ではいられず、日本とNATOが協力関係をもつのは何も米国との関係だけではないという事である。
もちろん、中国自身も経済的には大きなダメージを追うことになるため、実際に台湾有事が発生する可能性は低いとみなされている。ただし、同じ条件で考えるならロシアのウクライナ侵攻もその可能性は低いと、多くの有牛記者も考えていた。しかし、その予想に反しロシアはウクライナへの侵攻を開始した。もちろん、そこには短期間で集結できるという誤った予測がなされていたのだろうという意見が多い。
一般に西側諸国などとも言われる(冷戦期の名残)自由民主主義国家、つまり自由経済を重要視している国に住む人からすれば、経済的な損失を考えればそんなことを大国がするはずがないと考えるのは、当然のことだろう。けれど価値観が異なればどうであろうか。中国では自由経済から統制経済へと移行しつつあるような報道も多く見られる。
ロシアの経済も苦しいと言われつつも、持ちこたえている。これはエネルギーや食料品など国民が生活していくうえで重要な物資をロシアは国内で賄うことが可能なためであるという事もあるだろう。また、国民の統制もロシアでは強権的にではあるが、比較的うまくいっている。不足する物資については、最先端の技術に関わるものを除けば、中国などから調達できている。
これを中国に当てはめて考えて見たらどうだろうか、食料については自国で賄うことができると考えられ、エネルギーについても近年中国は中東諸国、とりわけイラン、サウジアラビアとも接近しつつあり、ロシア、中央アジアからも調達可能だろう。あとは国内をどれほど統制できるかである。ロシアと異なり中国は世界第2位の人口を持つ国家であり、ロシアほど国民の統制は簡単ではないと考えられる。しかし、ここで問題なのは中国もロシアと同じく、個人に大きな権力が集中していると考えられる国家ということである。つまり、実際に統制が可能なのかではなく、習近平国家主席及び共産党の中央組織がどのように判断するかにかかっているという事である。
米中の対立はチキンゲームである。最後にどちらが立っているのか。仮に戦争が勃発すれば、双方ともに軍事的、経済的に壊滅的な被害を受ける可能性が高いと考えられている。しかし、仮に壊滅的な被害を受けたとしても、現在のロシアのように、中国の国民、経済を中国共産党が十分に統制可能だと判断すればどうなるだろうか。日本自身のみならず、米国、欧州などはその被害の大きさから国内の再建に専念するしかなくなるだろう。もはや他国どころではなくなっているのは容易に想像できる。
つまるところ、戦争が起きないのは共倒れになると考えられているからであり、大きなダメージを受けても自身のほうがその後有利な立場に立てると考え、行動に移す可能性はあるのではないだろうか。
日本は戦争(台湾有事)に加担しようとしまいと、結果的に大きな被害を受けることになる。端的に言えば、台湾有事は勃発した時点で日本は経済的に大きな被害を受けることは確定しているようなものであり、南西諸島や沖縄以外に住む日本国民も無関係ではいられない。
日本は政治的には欧米に近くとも、地理的に中国、ロシアと欧米との間に位置しており、G7加盟国で唯一、東アジアに位置している国である。そのため、どちら側ともバランスを取りながら国の舵取りをしていかなくてはならない難しい立場である。
ロシアのウクライナ侵攻も、中東のガザで起きていることも、日本にとっては無関係ではない。国際法を無視し力による現状変更を受け入れることは、領土問題をかかえる日本にとっても良い前例とはならないだけでなく、中露と欧米の対立が先鋭化すればするほど、その狭間にある日韓の周辺は不安定な状況に置かれることになる。中東が不安定になればエネルギー価格のさらなる高騰に繋がりかねない。日本のもつ地政学的リスクが増大すれば、さらなる円安にも繋がりかねない。
日本のみならず、多くの国が自国の立ち位置を模索しているのが、現在の状態なのではないかと思われる。日本、韓国、欧米、オーストラリアとロシア、中国、北朝鮮、イランの対立。中東ではイスラエルとアラブ諸国(主にイラン)との対立、その中で独自の立ち位置を見出そうとしているインド。かつて植民地支配を受けた諸国の欧米への不信。
ロシアのウクライナ侵攻を皮切りに、対立が大きく表面化しつつある。そして再び再開された核戦力の拡大。各国の関係が複雑に入り組んでいるからこそ、冷戦期よりもさらに世界は不安定化と対立が促進されている。
もともと、日本人は変化を受け入れるのが苦手である。(と少なくとも私は思っている)現状、日本の国内政治は混乱の極みにある。与党である自民党はお金に関する問題で大きく信用を失墜し、やとうについても政権を担えるか不安視する声もまだ根強く、今後の見通しが難しい状況にある。
野党第一党である立憲については寄せ集めの政党と言う感じが強く、同じ党であると言っても決断が必要な際に纏まり切れるのかという不安がある。維新については関西の地域政党とう感じが強く、国民民主党も少数とは言え党から離脱する議員も出て、議席数で言えば共産党に負けて第4位となっている。立憲は共産党と強く協力すればするほど、維新、国民民主と協力関係を築くのは難しいと考えられる。
生活に直結する以上、国内の問題も重要であることは確かだが、島国であり資源もエネルギーも持たない日本は、他国との協力関係なくしては国が立ち行かない。また、立地的にも今の日本は非常に面倒な位置にあることも事実である。
戦後の日本は軍事にまつわることは全てタブー視する風潮にあった。近年においては変わりつつあるが、それでもまだ高年齢層を中心にその感覚は根強く残っている。しかし、現状においては日本も平和平和とただ唱えているだけでは立ち行かなくなってきているのも事実である。
平和外交、話し合いでの解決をというのは理想であり正論である。もちろん、理想と分かっていてもそう言った意見が主張され続けることは重要なことではあるが、国家間の問題を外交のみで解決できていないのも事実であり、いまだ人類は艦砲外交から脱却できていないのも現実である。
中国は近年、核戦力のみならず通常戦力の拡大も急速に進めている。その背景にあるのはやはり、過去にロシア、欧米の行ってきた事があるのだろうけれども、その中国と対話の席につくために、自国の自衛能力は一定以上必要である。(米国との同盟や、それ以外の国家との協力関係も含む)均衡を欠くことが、かえって戦争を引き起こしてしまうことも現実であり、一定程度の抑止力として持つことが、結果的に戦争を防ぐことになっているのも現実である。
もちろん、軍事力と言った力を背景にすれば、いずれ、本当に戦争まで発展してしまうかもしれない。人間は力を持ては使わずにはいられない生き物でもあるから。軍事力を背景とした対立、経済問題、歴史認識問題、イデオロギー、エネルギー問題、水・食糧問題、気候変動、いままで先送りにしてきた様々な問題が、ここにきて一気に噴出しつつあるようにも思われる。
不安定化しつつある世界の中で、将来を見通すことは難しくなってきている。そのなかで日本はどのような役割を果たしていくのは、果たすことができるのか。日本人自身もその結果の影響は強く受けることが考えられる以上、無関心なままではいられない。今後、日本がどのような国で有り続けていくのか、そのことを自ら選択していくことがより重要になってくる。そう思う今日このごろ。
2024年6月2日