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『派遣社員あすみの家計簿』感想

現時点の最新3巻まで読みました。

個人的にはすごく共感する作品でした!
私自身、学生時代からバイトもいろいろやったし、日雇いもしたし、就職活動に苦労したこともあるし、貧乏したこともあるし、正社員になるまで何年もかかった経験もあるし、転職もしたし、現在はフリーランスになっているという経歴ですから、主人公と符合する要素も多くて、楽しかったです。
婚約者に貢いで逃げられたことはないですけど……。

仕事ってひとくちにいっても本当に様々で、向き不向き、合う合わない、というのは本当に人それぞれなんですよね。
私は日頃、やる気満々毎日楽しく働けるタイプですけど、合わない仕事だと本領発揮できません。本作の主人公あすみは、仕事の愚痴を言わないですよね。そこが好印象でした。でも正社員だった頃は辞めたい辞めたいと言っていたらしいから、やはり仕事が合っていなかったんでしょうね。

今は本当に働き方が多様化して、私にとっては暮らしやすい時代になりました。正社員が終身雇用って感じじゃなくなったから、ある程度人員が流動的になって、会社で働きたかったら働けばいいし、フリーランスでやりたかったらそうするスタイルがある程度通用する。能力さえあれば働けるので、自分を磨き甲斐があるし、働き甲斐がある。
副業推進の波も、会社員兼漫画家をしていた当時の私にとっては追い風でした。入社当初は規則で副業NGでしたけど、漫画業をやる旨を上長と人事に相談して、規則を変えてもらったものです。

誰だってかけがえのない人生を生きているんだから、家族のこと、お金のこと、恋人のこと、友達や趣味のこと、育児のこと、健康や持病、金銭的事情、自分自身の性質、能力、夢、様々な事情で「正社員」という枠組みに収まりきらない人はいくらでもいますよね。

私は大学卒業して就職活動がうまくいかなかったとき、同級生の友達はみんな企業で働いてるのにって、自分ひとりだけ取り残されたような気持ちになったものです。だから、豊加が自分と同級生とを比べてしまう気持ちは、少しだけわからないでもありません。彼にはプライドもありますもんね。そんなことを比べてなんの意味があるのかと、外からいうのは簡単ですが。
でも私は、同級生たちと並び立ちたいとは思いませんでした。その頃は社会から見放されたような孤独感で、もうプライドどころではなく、「私ひとりくらいこの広い世の中のどこかに滑り込む隙間があるはず!」と奮起して、必死に足掻くしかありませんでした。

私自身、お金も仕事もなく落ち込んでいた時期に、友達が「今している苦労のぶん必ず報われるときがくるよ」ってメールしてくれたことがあって、それをお守りのように大事にしていたから、ミルキーのくれたポッキーを大事にするあすみには本当に共感しました。わかる。
苦しいときに見守ってくれた人、報われたときにおめでとうって言ってくれる人の言葉、それらは本当に得難いものだと思います。
だからこそ、あすみが仁子を信頼する気持ちもまた、すごくわかるんです。叱ってくれる人は貴重ですよね。私も「もっと社会性を身につけよう」と言ってくれた友達の言葉を、今でも覚えています。

2巻以降は結構自分で工夫して、派遣社員以外に副業もやって稼いで、貯金にハマりつつあるあすみ。作品の出発点からすると、随分たくましくなったものだと感慨深いものがあります。

あすみと家族との距離感もリアルに感じます。私も親が公務員で、企業の正社員じゃないと異様に心配されます。あすみと同じく、私も「ほらみたことか」って失敗したことをあげつらわれたり、王道じゃない道を行くことを無暗に心配されるのが非常に苦手です。逆に「君ならできる」って言われると、フルスロットルで頑張れる。
そういう意味では、本当にあすみには共感できるポイントがたくさんありました。私の今の身分はフリーランスだから、どちらかというと近いのは仁子の立場なのですが。

あすみが会社に「業務時間外に仕事の対応したらお給料出るようにしてほしい」って相談して、新しく残業代出るようにしてもらったエピソードのような根回しをするところにも、シンパシーを感じます。
仕事をするのが嫌なのではない。でも、業務時間外にタダ働きっていうのは、なんだか違いますよね。「それは違う」って思うことをみんなで我慢するんじゃなくて、現実に合わせて会社も変えていく、作っていく、参加していく。それも仕事だと思います。
だから、今の会社がこうで納得いかない……と思うことがあったら、しかるべき部署や上長に相談して変えていったらいいと私は思います。
どうしても変えられないなら新しい職場を求めてもいいし、新しい会社を作ることだってできるし、フリーランスになることだってできる。

自由で、責任があって、やり甲斐があって、仕事をして生きるって楽しい。自分の財布と相談して生活するって楽しい。能力を磨いたり工夫したり、挑戦したり、失敗してへこむことだってひとつの経験になる。そしてまた次の仕事に向かっていく。

そういった活き活きしたパワーが、たくさん詰まった小説だと思います。


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