『茉莉花官吏伝』感想
石田リンネ著『茉莉花官吏伝』友人からの推薦で、最新10巻まで読みました。コミカライズのほうも読んだら作画が高瀬わか先生でビックリ。同時に2本連載なさってるんですね。
立身出世に消極的かと思いきや、才能豊かで、大それた恋心や理想を持つに至るといういそうでいないタイプの主人公の物語でした。
確かに、女の子が立身出世するとなるとものすごく意思の力が必要で、男顔負けのエネルギーで頑張らないといけないというのが定型としてあると思うので、持ち前の才覚を引き出された結果として立身出世していき、覚悟はあとからついてくるという形式は新鮮に感じられました。
そのへんは人物描写のバランスが巧みというか、いうほど茉莉花は消極的でと受動的でもないように感じています。恋に憧れたり、女の子が出世できる世の中にしたいという野望を抱いたり。柔らかい感性を持っていて傷つくこともあるけど決めたことは貫く強かさもある。
また、立ち回りが巧いなと感じます。そこが茉莉花の聡明さを最も強く印象付ける点かもしれません。己の影響力や周囲の見る目を察する力に長けていて、苦境に陥らないようにふるまう。目端が利くタイプで、困っているように見えてもじつは落ち着いているように感じます。
共感はしづらい主人公像かもしれないですが、独特の魅力がありました。
エピソードのひとつひとつは地味なところを描いているように思いますが、最終的にできあがる絵はドラマチックに見えて読みごたえがありました。
私の個人的な趣味として、仕事のできる人が好きなんですが、メインの登場人物にほぼ仕事のできる人しか出てこないから、読んでいても楽しかったです。