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認知症マフのはなし その3

認知症マフとは、手元に不安を感じる人が触れたり手を通したりして落ち着けるように、ボタンやリボンなどさまざまな飾りを付けた筒状のニット小物です。
手を入れるとふんわり温かく飾りを触って楽しんだりホッと落ち着くといいます。
イギリスなど海外の高齢者施設や病院でも使われており英語で「Twiddle Muff(トゥイドルマフ)」と呼ばれています

前回はこれまでのマフ普及活動のお話しでした。

ワークショップに参加されたボランティアのみなさんが編んだマフを見せて頂くと、使う方を想像しながら気持ちを込めて楽しく作られたことが伝わる素敵なオンリーワンばかりで心温まるだけでなく様々な創意工夫が凝らしてあり、とても勉強になります。

朝日新聞厚生文化事業団インスタグラムより


プロの編み物の先生がいらっしゃるグループでは専門知識とテクニックを駆使し独自に進化させたマフを生み出されています。
しかし一般のボランティアさんが太さや質感、発色にばらつきがある寄付の毛糸でマフを編む場合、見栄え良く仕上げるには
ある程度のスキルが必要です
また、本体と飾りを別々に編むため
後からバランス良く安全に縫い付けて
完成させるまでに手間と時間がかかり
正直とても面倒くさい
このこともずっと気になっていました

ニット作家の立場で私の本分は
「編みたい!」と思える作品を提案すること
すてきにハンドメイドなどの手芸本で
趣味で編み物される読者のために
作品を提案するのとは違い
どんな状態の方がどんな場所で使うのか
わからないマフに関して重点を置いてきのは
安全性と作りやすさでした
予算が限られていることもあり
正直なところデザインは二の次
自分の名前が出る仕事ですから
これまでももちろん
プロとしてできる範囲で
見た目にはこだわってきましたが
ジレンマを抱えながらの活動でした

認知症の方の中には
病院や施設ではなくお仕事や家事をこなし
自宅で普通に生活されている方も
たくさんおられます
これからそういう方が増えていくでしょう
その方らしい好きなインテリアに囲まれ
好きな服を着るように
防寒具のひとつとして
いろいろなデザインの中から
自分好みのマフを選んでほしい
デザインは心地よく暮らすために
とても大事な要素です
活動当初からそんなマフを提案したいと
ずっと考えていました

ONBOARDは
暮らしに馴染むデザインのマフ普及活動を主な目的としたNPO法人です
イギリスからマフを導入した代表の山本氏より立ち上げメンバーに、とのお声かけを頂きました

監修としてお手伝いしてきた
朝日新聞厚生文化事業団主催の
認知症マフワークショップは
9月の東京開催を最後に
一旦休止されますが
現デザインのマフの作り方や動画は
今後も必要な方々に役立つよう
引き続き公開してくださいます
国内導入最初のステップとして
私の役割は果たせたと思っています

これまで組織や肩書きが苦手で
ニット作家としてずっとひとりで
活動してきましたが
還暦を迎えた自分も認知症予備軍
腹を括りONBOARDの理事になりました
肩書きは立派ですがNPO法人での活動は
これまでのように事業団の後ろ盾がなく
知名度はゼロ、手弁当での活動です
理想を現実にするには
初めての試みばかり
荒波の中航海スタートです

これまでの経験とマフを導入してくださった
現場からのフィードバックを活かし
試作や勉強会を重ね
作りやすさ、安全性を向上させ
使う方の好みにカスタマイズできる
「暮らしに馴染む」新デザインの
ベーシックマフがようやく完成しました
2拠点生活している鳴門の海辺で
徳島在住のフォトグラファー
ささゆりさんに素敵な
イメージ写真を撮影して頂きました
10月からONBOARDの拠点西宮で
いよいよ初のワークショップがスタートします

ONBOARDホームページより


有償ボランティアサービスとして
新デザインマフの編み方を
教えることができる
リーダークルー養成講座も
新たにスタートします
すでに定員の半数を超える
お申し込みを頂いており
これからを見据えた
社会貢献活動への
関心の高さがうかがえます

質のよいマフを購入したいという
ご希望も多いので将来的には
リーダークルーの方々に編み手になって頂き、オリジナルデザインのプレミアムマフを販売する構想もあります

ONBOARDのホームページで
各ワークショップの詳細と
機能性、安全性、作りやすさも向上した
新デザインマフの仕様をご紹介しています
興味のある方はぜひご覧ください

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