演劇・ミュージカルを紹介します1〜ミュージカル『ザ・ラストマン』
「1、2。1、2。
僕の声は聞こえていますか?」
韓国ミュージカル『ザ・ラストマン』。
韓国でも珍しい一人舞台のこの作品は、コロナ禍の最中にウェブミュージカルとして生み出されました。
そして2021年、ついに劇場にて上演。その日その時間に客席に足を運んだからこそ味わえる仕掛けに、観客たちは魅了されたそうです。
☆登場人物:生存者
20××年、×月×日。突然、街にゾンビが溢れた。ゾンビウイルスが蔓延したのだ!
地下シェルターにひとり逃げ込んだ青年は、大きな扉をたくさんの鍵でしっかり施錠した。扉の向こうからはゾンビたちの呻き声が聞こえる。だが、彼らには扉をあけるすべがない。
青年はサバイバルの様子を後世に残そうとスマホで撮影を始めた。これは映画なんかじゃない。大韓民国のリアルなのだ。
そのシェルターには、青年がボーイスカウトの知識を総動員して準備した設備があった。空気を入れ替え、食糧を作り、温度調節もして、ひとりで少なくとも1年間は快適に生きることができるよう整えられていた。青年は無線機に呼びかける。1、2。1、2。生存者がいたら返事をしてください! 僕はソウル市内のB103防空壕にいます!
だが、いつまで経っても返事はなかった。
地下シェルターで過ごすことにも慣れたある日。その日は青年の誕生日だった。ひとりでハッピーバースデーを歌い、この日のために用意していたチョコパイ(『情』という韓国のお菓子)を食べる青年は、知らないうちに自分が涙を流していることに気づいた。ゾンビから逃げ延びて悠々自適な生活を送っていたはずが、実は精神的に疲弊していたのだった。
折悪く、電気に不具合が発生し、あたりが闇に包まれてしまう。そのとき! ひとりしかいないはずのシェルターの中で、あり得ない物音がした。
ライトを付けて物音の主を探す青年は、見覚えのないクマのぬいぐるみを発見する。
神様がくれた誕生日プレゼントだろうか?
青年はクマにジョンバー(존나 버티다 めちゃくちゃ耐える)と名付け、友達として過ごすようになる。
***
ゾンビの蔓延る世界から逃げてきたという極限状態で、青年がどう変わっていくのかをぜひ見届けてください。
そして最後、彼がどのような選択をするのか。
「1、2。1、2。
あなたはひとりではありません」