『友人の本棚~1分で読める感想文~』Vol.50「木暮荘物語」
「さらっと読めて面白いよ」
前回「舟を編む」が強く印象に残っていた三浦しをんさんの作品。感想文を始めてから、少しずつ自分の中の作家さんの好みも把握しつつあったので、喜んで手に取った。
築ウン十年のボロアパート木暮荘。そこでは老大家木暮と女子大生の光子、サラリーマンの神崎に花屋の定員繭の四人と、それを取り巻くそれぞれの抱える悲しみが織りなす人間模様。都営住宅に住んでいた僕にとって、ボロアパート&隣人との繋がりというテーマに、物語とは直接関係ないけれど、どこか懐かしさを感じてしまった。
男女がお互いに求めるもののちがいが、こういうところにも表れるのだろうか。花の茎を切りそろえながら、佐伯は考える。男は花束を通して、自身の力をアピールしようとする。金銭や自分の存在の大きさというものを。でも女は、受け取った花束から相手の気づかいや対話の意思を読み取ろうとする。どれだけ自分の好みを知ってくれているか、どれだけ細やかな想いを注いでくれているかを。
-黒い飲み物 より-
本書の肝ではないのだけれど、思わず首が痛くなるくらい首肯してしまった個所を引用。これ、まさに過ぎる。僕はあまり花を贈るということはないけれど、男性と女性のプレゼントに求める違いは本当にあるなと思った。
男は実益、女は物語。これはほぼ間違いないと思う。これは会話にも言える。男はすぐに結論を出したがるが、女はオチのない話を永遠にできる、と二元論的に書くのも好きではないけれど、一般的にはそういう傾向がある。
三浦しをんさんの文章は、こうした日常的にあるものの着眼点、切り口が分かりやすい。物語に沿った無理のない比喩が、文章をよどみなくさせていると感じる。もっと他の作品も読んでみたいと思った。
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