旅人ITライター・中山智さんに聞く「コロナ後の旅と楽しみ」(01)
今回から、対談新シリーズをお届けする。
お相手は、友人で旅人ITライターの中山智さん。IT系媒体と旅系の媒体両方に取材や解説記事を寄稿しつつ、仕事・プライベート双方で色々な場所へと足を運んでいる。
その辺の状況は、彼のXアカウントやYouTubeチャンネルからもご覧いただける。
・ X(旧Twitter)アカウント
https://twitter.com/yenma
・旅人ITライターさとる YouTubeチャンネル
取材でもよくご一緒するが、先日ハワイにApple Vision Proを買いに行った時も、中山さんは「買いに行く石川温さんを配信する担当」として同行され、私も一緒に行動させていただいた。
西田はほぼ毎月のように海外に行っているが、そのほとんどがアメリカ。さらに、仕事の絡まないプライベートな旅行をもう10年近くしていない。旅慣れてはいるが、いわゆる「旅行通」ではないし、感覚もかなり違っているのが実情である。
というわけで、旅全般に詳しい中山さんに、「今の旅ってどんな感じになってるんですか?」という話をじっくりと聞いた。
なお、収録はハワイ・ホノルルにあるアラモアナ・センター内の楽天カード ハワイラウンジで行った。
・楽天カード ハワイラウンジ
https://www.rakuten-card.co.jp/overseas/hawaii/lounge/
こういう「カード会員なら無料で休める便利な場所」を教えてくれるのも、旅慣れた方ならではかと思う。(全4回予定)
初回は全文を無料公開するが、来週以降の続きは購読者もしくは単品購入者のみが閲覧可能なので、ご容赦を。
■旅にスマホは「ないと困る」存在に
西田:今回はぜひ、コロナ後の今の“旅”ってどうなの?という話を聞きたくて。
世の中的に言えばたぶん僕だって旅慣れてるほうだと思うんですけど、でも言うたら「観光」で旅をしてないので、行くところが決まってるわけじゃないですか。どうしてもどこかのカンファレンスに呼ばれるとか、取材に呼ばれるとかで決まりきっちゃってる。
だから、普通の人がする旅にもう少し近いところってわかんないんですよ。
やっぱり中山さんは、旅ライターとして、いろんなところを日常的に回ってるわけじゃないですかその中から見えた話というのを少し聞きたいなと思いまして。よろしくお願いします。
――で、今、コロナ後と、コロナ前で、そもそも何か変わりました?
中山:変わったというよりも、スマートフォンが「持っていくと便利だよ」から「ないとちょっと困る」というレベルまで来ちゃってるな、というのを感じてて。
さっき、ビールを飲んだじゃないですか。
あそこもテーブルオーダーで、テーブルにQRコードがあって、スマートフォンで読み込んでそこからオーダーして、という形でしたよね。
西田:そうですね。
中山:飛行機とかも、機内食のメニューとかがもうQRコードになってて。スマホで読み込んで、機内Wi-Fiに繋いで――インターネットには繋がなくてもいいんだけど、機内Wi-Fiに繋いで。機内のサービスは、スマートフォンなりタブレットなりから申し込んで……みたいなこともある。
西田:そうですね、はい。
中山:飲食店だったり、各サービスがスマートフォンを持っている前提でサービスを作り始めちゃっているので、スマートフォンがないとサービスを受けられないということになって。
西田:で、それが、街中で我々が暮らしてる日常の中でスマートフォンがなければ……という話だけじゃなくて、旅で来た人に対して、その時の1回にやっていただくサービスというのを、これまでは人でやったり紙でやったりしてたけど、スマートフォンでより簡単にとか、向こうの手間を減らしてみたいな形になってきてるという。
中山:はい。
アメリカに行ってメジャーリーグの試合を観ようとなったとき、やっぱりチケットもオンラインで買って、スマートフォンに送られてきて、スマートフォンで入場するとかというふうになってる。ヨーロッパのサッカーとかもそうだったし。
鉄道に乗るにも、ネットで申し込むとQRコードで来て、それを車掌さんに――ヨーロッパとかだと改札がないところも多いので、車掌さんにQRコードを見せるとか。コロナ前まではプリントアウトしろって言ってたところもわりと多かったんですけど、もうここ最近はほぼほぼ、スマートフォンで見せてもOK。
西田:あ、それで思い出したんですけど。
僕、アメリカで未だかつてで一番ムカついた体験というのがあって。
それは、2000……何年だろ。2010年より前ぐらいかな。eチケットが出始めたけど、まだプリントだった時代。でも日本だと、飛行機とかはバーコードで発行するようになってて、乗る・乗らないみたいな話がガラケーで出てた時代があったじゃないですか。
その時に、たしかiPhoneを持ってたと思うんで、アメリカの国内線に乗らなきゃ!となって。
eチケットを印刷していくのを忘れて。
で、セキュリティで「はい」ってスマートフォンを出したら、「このアジア人、バカじゃないの? 紙以外で飛行機に乗れるわけないじゃん」って馬鹿にされて。
コメディ映画で相手を馬鹿にするような顔ってあるじゃないですか。あれでやられたんですよ。で、周りの人間が逆にぶち切れて、「お前は何(差別的に)ふざけたこと言ってんだ、こいつに謝れ」みたいな状態になったぐらいのことがあって。
何を言いたいかというと、その頃は、そもそも画面にバーコードを出すことが交通の手段になるなんてまったく常識外だったものが、たかだか10年ぐらいで、逆に「紙持ってくんなよ、紙めんどくさいよね」というのに完全に変わっちゃったわけですね。
中山:変わってるんですよ。
■とはいえ最後に頼れる「紙」
中山:ただ、最終的に信じられるのは紙だったりするので、結局プリントアウトして用意しといたほうがいい。
この間もね、ラオスでバスに乗るときに、そもそもネットで買っていて。予約票は来てたんだけど、その予約票を窓口に見せてチケットと交換してもらうはずだったと思うんですよ。
ただ、窓口に行ったらネットワークが悪くて、予約票のPDFが全然ダウンロードできなくて。
西田:あー、はいはいはい。
中山:そうこうしてるうちに窓口もしまっちゃって。直接バスのとこ行って、「この予約票持ってるんだ」と言ったら、そこでピッと読み込んで乗れたから、それは良かったんだけど。やっぱり、スマートフォンっていざというとき使えないこともあって。盗まれるし。
西田:まあ、そうですよね。
中山:ま、普通の人は多分1台しか持ってないと思うんですけど、僕らは何台も持ってるから、1台なくなったぐらいじゃわりと困りはしないんですけど。
いや、困るは困る(笑)。困るけど、致命的なダメージにはならないんですけど。
普通の人はたぶん1台しか持ってないから、その場合はやっぱり紙にプリントアウトして、どっか鞄に忍び込ませとくなりはしたほうがいい。
いいんだけども、基本的にはもうみんなスマートフォンで動いてるというのがある。
西田:入国の時の審査書類。審査書類というか、「我々はここに行きます」とか、「ホテルはここです」というのは印刷をしておいたほうがいいのか、デジタルでいいのかという話もあるじゃないですか。
そこはどうだと思います?
中山:入国審査が厳しいところ、厳しくないところがあって。
それこそ、シンガポールなんかは今、事前申請をすると日本人は機械で入国できるんですよ。日本の出入国とほぼ同じ感じに。
西田:パスポートをぽんと置いて、顔認証みたいに。
中山:はい。人と人が対面でチェックするところがないので。そういうとこだとね、基本的に聞かれないから。
西田:それがアメリカみたいな属人性が高いところだと、やっぱり「見せろよ」って言われた時にスマホをごちゃごちゃするよりもさっと紙で出したほうがいい、みたいな。
中山:そうなんですよ。だから、国による。ほんとに。
なので、やっぱり事前の調査は必要かなと。
■情報は「鮮度」確認しながら
西田:そういう意味では、昔から事前調査をするためにネットで調べるとか、『地球の歩き方』を読むとか、古典的な手法があったわけだけど、それ自身が変わってるわけではない。
中山:ない。
ただ、事前にSNSで調べたり、リアルタイムでちょっと調べたりは、したほうがいい。
というのは、いわゆる、その手の現地でスムーズにことを進めるためのテクニックって、やっぱりコロナ前とコロナ後で結構変わっているんですよね、
でも普通にGoogleで検索すると、2019年とか18年ぐらいのがヒットしちゃうんですよ。
西田:あ、ちょっと前の旅行ブログみたいなのが出るとか。
中山:そうそう。僕が調べる時は必ず、Googleのツールを使って、1年以内ぐらいとか、何か月前までの情報を検索対象にするようにしてます。
西田:検索に引っかかるレンジを決めて、というのができますね。
中山:はい。それで1年ぐらい前までの情報にはしてるんですけど。
結構ね、バスの時間とかかなり変わってるんですよ。
西田:そうすると、SNSで、自分が行く国の最新の情報が引っかかりやすいから見といたほうがいいと。
中山:うん。「バンコク バス 深夜」とかで調べたり、SNS、例えばTwitter(現X)とかで調べたほうが、その件についてつぶやいてる人が引っかかるので。
西田:たいてい「これで通れた」とか「これで失敗した」って話を書いてる可能性が高いから。
中山:そうですね。それはしてます。
西田:なるほどそうか。
そういうところも考えても、やっぱりスマホというものをうまく使って、旅をする時の必須のツールにするというのが変化としては大きいってことなんですね。
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