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大舘のアメ事業② タイムリミットは夏。絵になる物件を探せ!

MNHの小澤です。

2015年3月。
ぼくらは、秋田・大館市で、消えゆくアメ事業を引き継ぐと決めた。
機械をもらう先の、大舘最後のアメ屋・佐久間さんは、なんと夏に工場を壊してしまうという。

それまでに新物件を見つけて機材一式を運ばねばならないという、絶対的なリミットが突如現れ、うかうかしている時間はもうなかった。

前提として、ぼくらはアメ事業に専念してもらう「人材」を採用しようとしていた。
大館市内にそういった若者はまずいないだろうし(*1)、他から来てもらうのが現実的だろう。
それなら、せめて「大館市内から車で30分圏内がいい」と範囲を定めていった。

まず最初に、鹿角市の物件を見に行った。
ただの民家だったが、温泉が近くにあって、ロケーション的にはなかなかのところ。
ただし、「絵づら」が良くない。

と、ここで、この時点のぼくの心中を共有しておきたい。
ぼくは、大館の地で続いてきたアメ産業というストーリーを礎に、アメをリブランディングして都内で売りたかった。大館市内で売れる量はたかが知れている。都内で売るのはマストだった。

ということは、そう、「写真うつりが良い」ところがいいのだ。
大館市といえば、山々に囲まれた盆地が広がるイメージ。山がバックにあったほうが絶対にいいだろう。

要はそれを商品のホームページなどに載せて「ああ、いい場所だな」「歴史ある土地のアメなんだな」と共感してもらえるビジュアルが欲しかったのだ。

そんな想いを抱え、次に見にいった物件は、市内の空き家。ここは大館市内にしてはかなりお高い物件だった。東京ならまだしも、地域でこの値段は…と腕を組んだ。

……そうこうしている間に、ついに出会ったのだ。


空き家バンクのサイトで目に飛び込んできたその物件は、築140年の建物。
大館市内からも車で20分。すぐに見に駆けつけたところ、やっぱりいい物件だった。
何がいいって、絵がよかった!!

周りが田んぼで、男神山が目に入る。きれいな円錐形をした山だ。
この山をバックに、140年のストーリーがある古民家。ここに工場をもてば、映えること間違いなしだ、と。

かくして、ぼくらはそこを本当に購入した(*2)。


登記などの手続きのために、何度も大館に通った。
そして、2015年の夏に調印をするのだった。

この家屋は、屋根までの高さはとても高いものの、かつては大家族が住んでいたのだろうか、無理矢理2階が作られている造りだった。ここを改装して仮に(1階と2階の間の)天井ぶち抜くと、大きな丸太の梁が露出し、広々とした大空間になる。

それを想像したぼくは、「改装したら、めちゃくちゃかっこよくなるだろうな」と胸を高鳴らせていた。

古民家の内部。建築士にお願いして、ドローンを飛ばして全体写真を取り、図面を起こすまでしていた。

そして、2015年の夏。
佐久間さんの工場を壊す直前に、この物件にアメの機材一式を持ち込んだ(*3)。

佐久間さんの家のアメ機材(引っ越し前の工場で)

この事業の行く先が前途多難なのは重々承知していた。
ただ、一方で、このロケーションだけはしびれるほど気に入っていた。

消えゆくアメ事業を、この大館の地で。山のふもとに140年たたずむ古民家で。

そんなストーリーと改装後の魅惑的な空間が、ぼくの眼前に確かに広がっていたのだった。

(つづく)

(*1)大館市の産業を守りたい、という若者が仮にいれば、とっくにこのアメ事業に取り組んでいて、このように絶滅寸前にならなかっただろう、という意味。

(*2)そして今でも所有している。当時は200万くらいだった。

(*3)引っ越しは日本通運に頼み、50万ほどかかった。


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