高いギャラの求人CMが、日本沈没を予感させる理由
「デューダする」人、「サリダする」人
乃木坂46、松本人志、山田孝之、松坂桃李、斎藤工、泉里香、高橋一生、小栗旬、ヒカキン、松岡茉優、劇団ひとり、、、
アイドル、芸人、俳優、それぞれの分野で第一線で活躍している芸能人たちだが、僕の好きな人を並べているわけではない。
彼らにはある共通点がある。
すべて人材紹介の会社のCMに出演たことのある人たちだ。
5年前くらいから、急に人材紹介のCMが増えた気がする。起用されているメンツを見る限り、広告費もかかっていそうだし、よほどアツい業界なのだと思う。コロナで下火になっていたが、昨年から人材系のCMが再び増えているという。こうしたCMが増えていることからも、人材の売り手市場になっていることがわかる。
「デューダする」という言葉が流行語大賞にも選ばれた1980年代後半のバブル全盛期も、人材の超売り手市場だった。当時は好景気で年率5%で経済は成長していた。
ということは、これは良い前兆なのだろうか?
いや、全くそうではない。生産人口が伸び続けていた80年代とは違うのだ。
ただ、少子高齢化が進んでいるだけなのだ。現状、介護分野などを中心に多くの業界で、人材不足が深刻になっている。
生産人口は毎年減り続けていて、定年年齢も切り上がっている。
そして、働く世代が減る一方で、高齢者は今後30年は増え続ける。それに伴って介護職員の必要数も今後、100万人近く増えると予想されている。
これから、人手不足はもっと深刻になっていくだろう。
「雇用を生む」という脊髄反射
人が足りないという問題が深刻に受け止められているかというと、甚だ疑問だ。
先日、熊本に新しい半導体工場が建設されるというニュースが話題になっていた。そこには「1700人の雇用を生む」と書かれていた。
その表現に違和感を感じた。国内に半導体の生産拠点が作られることは喜ばしいことだ。半導体不足に悩まされることも減るだろう。
だが、雇用を生むことが目的なのか?
人材が余ってしょうがない状況なのならまだ分かる。雇用が生まれて万歳だ。しかし、今は人材不足なのだ。プロジェクトが決まって、お金さえ集めれば、工場が完成するわけではないのだ。
いったい、いつの時代の話をしているのだろうか。
高給待遇で人材を確保をしようとしているらしいが、案の定、難航しているらしい。仮に集めることができたとしても、他の工場でさらなる人材不足を生むことは間違いない。
雇用を生むことに喜びを感じる脊髄反射は、そろそろやめたほうがいいだろう。高齢者が増えていくから、介護現場では放っておいても雇用は生まれている。
「ちなみにその夕飯のステーキ、誰が焼いたんですか?」
生産人口が減っているから、という話をすると、「女性の労働参加率を上げれば問題が解決する」という人たちが出現するのだが、そんな人たちにはぜひ聞いてみたい。
”会社で”働いていない女性は、みんなヒマを持て余しているのかと。
先日、友達がすすめてくれた書籍「アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?」を買った。まだ、冒頭しか読んでいないのだが、経済学への辛辣な皮肉が書かれていて興味深い。
裏の帯にはこう書かれていた。
独身のアダム・スミスが「国富論」の執筆に専念できるように、彼の母親は身の回りの世話をしていたのだが、それは経済からは除外されていたのだ。
もしかすると、アダム・スミスが結婚していて、奥さんの尻に敷かれていたら、経済の定義は変わっていたのかもしれない。
この本の冒頭にはこんなことも書かれいてる。
経済学を否定したいわけではない。
現実社会に照らし合わせて、矛盾しているのであれば、アップデートしないといけない。
これは、今の日本の経済政策に求められていることだ。
「ほんまの制約は金やない、人なんや」
アップデートすべきは、制約条件。
下のマンガが全てを物語っている。
僕らはお金を食べて生きているわけではない。米や肉を食べたり、医療を受けたりしながら生きている。
どんなにお金があっても、食糧などのモノを作る人たちや、医療などのサービスを提供する人たちがいなくなれば生活できないのだ。
上で書いたように、事実として、人不足が深刻になっている。
時間はかかるが、少子化を止めないと手遅れになるだろう。若い世代の人口は年々減っているから、早く手を打たないと育てる親がいなくなってしまう。
財源がないから子育て政策にお金を使えないと言う話は本末転倒だ。人が育たなければ、そもそもお金が使えなくなるのだ。
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