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いつかその歩道橋を渡る日がくる ― 乃木坂46『歩道橋』と乃木坂道路楽曲を考える


乃木坂4637thシングル『歩道橋』が公式YouTubeチャンネルの生配信で選抜発表&初披露された。

大きな歩道橋を舞台に白い花が印象的な美しい衣装を纏って踊る彼女たちの姿は、やわらかい雪がはらはらと舞っているようで、今年の冬の訪れを感じさせた。かなり寒そうだったけれど、本当に本当に、美しかった。(アーカイブありがとうございます!)


『歩道橋』


センターは4期生の遠藤さくらさん。作曲は杉山勝彦さん。『歩道橋』ってタイトルだけで神曲の足音が聞こえてきていたけれど、やはり期待をまったく裏切らず超越してくる楽曲だった。楽曲・衣装・振付、最高。ありがとうございます!

『歩道橋』という楽曲では、歩道橋を渡っていて途中でふと足をとめる一瞬の逡巡が描かれている。この向こう側には何が待っているのだろう、このまま渡っていいのか?どうする? という自問自答。現在の自分のことがよく見えていて、その先のこともずっと遠くまで見ようとしているからこその迷い。遠藤さくらさんがそのすべてを表現している。

それなりにしあわせだけど いつか ここを渡る日が来るのかなあ」という歌詞を、現役でアイドル活動をしているメンバーが歌っていることがなんだか不思議で、アイドルとして過ごす時間の儚さと美しさが表現されているように思えた。

こちら側にいるファンとしては、そりゃあ渡ってほしくなんてない。いつまでもこちら側にいてほしい。それでも自分で決めて歩いていった、期待と不安に挟まれながらも向こう側に渡っていった、何人ものアイドルたちの姿を思い出した。それを見送ったときのことも、そのとき流した涙のことも思い出した。こんな楽曲をいま現在アイドルの最前線で輝くメンバーたちが歌って踊っている姿に、すごく、すごく、ぐっときてしまった。

推しの幸せを願って去りゆくその背中を見つめたことがある人は、みんなその日のことを思い出して聴いてください。名曲です。


乃木坂というアイドル×道路


そして思う。乃木坂楽曲のなかで、道路を舞台にした楽曲がわたしは好きすぎる。「乃木坂というアイドル×道路」の親和性が高すぎるのでは?? そもそも乃木坂も道路だし、ってこと??

と、よくわからないことを考えはじめた気がするものの、好きな乃木坂道路楽曲(そんなジャンルない)をご紹介させてください。


『きっかけ』


2016年のアルバム『それぞれの椅子』のリード曲として発表された楽曲。シングル楽曲ではないもののライブの大切な場面で披露されることが多く、紅白歌合戦でも披露されたこともある、乃木坂を象徴する楽曲。作曲は『歩道橋』とおなじ杉山勝彦さん。過去に遠藤さくらさんがソロでTHE FIRST TAKEに出演して歌っていたものが最高なので観てほしい。心の浄化を約束します。



「交差点の途中で不安になる」という歌い出しからこの楽曲ははじまる。横断歩道を渡っていて、あの青信号はいつまで青色なんだろうかとふと思う。黄色になってみんな一斉に急いで走り出す、それに流されるだけの自分でいいのか。理屈とかルールとかだれかの指示とか、そんなもので時間切れを待って動くのではなくて、自分の意思を持って流されずに生きたい。

決心のきっかけは 時間切れじゃなくて
考えたその上で未来を信じること
後悔はしたくない思ったそのまま
正解はわからないたった一度の人生だ

乃木坂46 / きっかけ

この楽曲で描かれている、横断歩道でふと立ち止まるその心のさまよいが、何度もわたしの決心のきっかけを後押ししてくれた。わたしにとっても大切な楽曲だ。


『車道側』


35thシングルのアンダー楽曲。センターは4期生の筒井あやめさん。

アンダーメンバーとは、そのシングルの表題曲を歌う選抜メンバー以外で構成されたメンバーのことだ。大所帯のアイドルグループだからそういった選抜的なことになるのは仕方がないものの、上下の意味での下を意味する言葉を使うなんて異常すぎる。もう毎シングル思う。ぜっっっったいに下のメンバーなんかではない!!!

という、アンダーへの気持ちも含めてこの楽曲の良さを語りたい。



小さなころからもうずっと一緒にいる君と並んで道路を歩いている。でもいつまで友達でいるんだろう、と思う僕。距離感が難しい、近くて遠い幼馴染。時が経ち、アスファルトに伸びる影はもう大人の影になっている。車道側を僕が歩こう、と僕はあらためて自分の気持ちをたしかめる。

ずっと一緒にいる幼馴染への淡いラブソングではあるものの、わたしはこの曲の最後の一行がとても好きだ。

どこにいたって 君のことが好きだ

乃木坂46 / 車道側

この一行に、ファンとして乃木坂を応援するわたしの気持ちがすべて詰まっているなあ、といつもしみじみ感じてしまう。

毎回新曲が出るとワクワクしてうれしいものの、推しのポジションはいつも変わってしまう。表題曲の選抜になっていないとテレビでその姿を見ることすら叶わない。どうしても選ばれるか、選ばれないか、どこに選ばれるか、という世界になってしまっている。

でも本当は、選抜とかアンダーとか、センターとかいちばん後ろとか、そんなことはどうだっていいのだ。どこを歩いていたって、いま輝いていて、幸せでいてくれたなら、その姿を応援できたなら、もうそれだけでいいのだと思いたい。ポジションなんて極論どうだっていいのだ。どこにいたって君のことが好きだ、そう思って応援していたいのが、わたしにとっての推しという存在だ。


歩いてきた道、心の揺らぎ


ここじゃないどこかに進んでいくために歩く道路という場所。どこかに向かって歩いてきた道。通り過ぎていくその一瞬のなかで、ふと立ち止まる瞬間。その心の揺らぎ。その儚さとか危うさみたいなものを、そのときの最高のメンバーたちで表現されているのが乃木坂道路楽曲。

名曲ぞろいのそのなかに、『歩道橋』が追加されました。もうその歩道橋をだれも渡らないでほしいのが本音ではある。


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tsuki | つき
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