WBC2023:MLB選手の保険加入問題
来たる3月に控えた第5回WBCの米国代表に内定していた、ロサンゼルス・ドジャースに所属するクレイトン・カーショウ投手が土壇場に来て、保険の加入の問題を理由に参加を辞退せざるをえなくなったことを報じられました。
https://nordot.app/1000155325680451584?c=768367547562557440
カーショウが所属するロサンゼルス・ドジャースの地元紙であるThe Los Angels Times(LA Times)が、本件について、詳細に報じているので、その抄訳を掲載しておきます。
【WBC】MLB選手の出場保険、カーショー個人加入は「想像を絶する高額」で断念、米紙解説 - MLB : 日刊スポーツ
ロサンゼルス・ドジャースのクレイトン・カーショウ投手とデトロイト・タイガースのミゲル・カブレラ内野手は、二人ともMVPを受賞したことがあり、将来的には殿堂入りを目指す選手である。
カーショウはサイ・ヤング賞を3度も受賞している。カブレラは2012年に打撃三冠王を獲得し、500本塁打と3,000安打を達成した。このオフ、両選手はそれぞれの母国のためにワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場することを約束した。
2月上旬、この二人に立ちはだかったのは、WBC大会の参加に必要な保険加入の問題だった。
カーショウとカブレラの契約はともに今季で切れるが、負傷歴があるため、保険に加入できないと判断されたのだ。
カブレラは保険に加入していないため、参加できないことを知らされたが、数日後にプレーが許可された。
一方、カーショウは、「複雑な事情」があり、「すべての立場にいる人間が本当にうまくいくように努力した」としながらも、詳細について掘り下げることなく、先週金曜日に「”チームUSA”のために投げることはない」と渋々、発表した。
その違いとは何か?
デトロイト・タイガースは、カブレラの保険加入義務を放棄し、カブレラが大会で怪我をした場合の金銭的リスクを引き受けるという異例の決定をした、とこの件に関して公の発言を許されていない事情通は述べている。
ドジャーズはカーショウのためにそれをしなかったということだ。
39歳のカブレラは、8年総額2億4800万ドルの契約の最終年を迎え、今季は3200万ドルを稼ぎ、引退する予定だ。
来月35歳になるカーショウは、昨年12月に1年2000万ドルの契約にサインした。今季限りでの引退も辞さない構えだが、ドジャースは再びワールドシリーズ制覇を目指すため、カーショウを先発ローテーションのトップに据えることにしている。
カブレラにとって状況は異なる。彼はプレーオフ進出を争う見込みのない再建中のタイガースの指名打者である。
メジャーリーグ機構(MLB)や選手会は、WBCが盛り上がることを望んでおり、スター選手が集う大会はスポーツに長期的に大きな利益をもたらすと考えているが、各チームは当然ながら短期的なことをより懸念している。大会終了後は、162試合のシーズンが待っている。開幕の8日前に決勝が行われるという大会の開催のタイミングは、選手を派遣するチームにとって不安なものだ。
保険は潜在的な打撃を和らげることになる。WBCで負傷してシーズンを全休しても、数試合を欠場しても、選手には保証された給与が支払われる。
この保険は、ピッツバーグを拠点にするNFP社に最近、買収されたTeam Scotti社を通じて提供され、WBC大会に起因する負傷のために欠場した選手に支払う必要がないようにチームを保護するものだ。
WBCで負傷したと判断された場合、チームはその選手が欠場した期間分の年俸相当分を弁済する。WBCの参加者は、負傷の情報を得るために、大会参加時と終了時に身体検査を受けることが義務付けられている。
MLBはリーグ関係者の話として、WBCの第1回から第4回までの負傷者データをまとめている。そのデータは公開されていないが、その幹部は「ケガをすることとWBCでプレーすることに相関関係はない」と主張した。
当該データを共有せずにそう言うのも、MLBにとっては得策だろう。
2017年の前回(第4回)のWBCが開催された数日後に、ワシントン大学が行った調査では、WBC後に大会参加者がケガで欠場する日数は平均で2.35日、増えたことが判明している。投手の場合は、平均4.07日の増加だが、野手の場合、平均1日未満の増加で済んでいる。
これらは小さなサンプルサイズであり、リスクがないとチームを納得させるには小さすぎるのである。
この特別な取り決めは、MLBの40人ロースターに登録されている選手を対象としており、大会に出場する選手がいる他のリーグは含まれていない。
・フリーエージェントはMLBに登録されていないため、保険は必要ない。
・保険料は、すべての選手をカバーするためにNFPと交渉される。
・アンダーライター(引受人)が各選手の医療記録を確認し、そして、保険に加入できる選手と加入できない選手の2つに分けられる。
ある事情通によると、選手が保険に加入できなくなる理由は、幾つかあるという。
ひとつは、怪我の履歴から「慢性疾患」であること。
もうひとつは、前シーズンにかなりの期間、インジャリー・リスト(IL)に載っていた、あるいは前シーズンをインジャリー・リストで終えた選手である。
カーショウとカブレラ(の故障)は「慢性」の部類に入る。
カーショウの故障歴には、2021年の重大な肘の怪我と、過去10年間の様々な背中の病気が含まれている。
カーショウは昨シーズン、10日間負傷者リストに2度、入ったが、2度とも背中の問題によるものだった。
カブレラは過去4シーズン、左大腿二頭筋の怪我やその他、様々な厄介な故障に対処してきた。
選手は他の保険に加入することはできるか?
答えはYESである。カーショウは保険金を得るために他の方法を模索し、この大会のために個人的な保険も検討したが、解決策を見つけることができなかった。
ある代理人は、選手が大会のために個人で保険に加入することを、"とてもクソ高い "と表現した。こうしたことが、WBCのために行われたことはないと思われる。
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