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教員3年目が感じる若手が失敗する"学校の構造"とその対策 日本の学校考察#1

学校で働いていてもうすぐ3年経ち、気づいたことも多い。

その中の1つは、「学校とは非常にユニークな構造を持っている組織」であるということと「その構造上若手教員は失敗する」ということである。

ぜひ4月から学校の先生になる人、これから学校の先生になる人に知っておいて欲しい。

この構造を理解することは以下の2点において非常に重要である。

1、若手教員が失敗した時に「それってあるあるだよね」とわかることで、その対策を事前にすることができる。
2、さらに大事なことは、「自分が悪い、能力が低いから問題が起きている、のではなく構造上の問題なので仕方がない」と思うことができる。

「いやいや、個人の努力が足りない、力量がない」というのはもちろんそうだが、そもそも【構造上"失敗する仕組み"になっている】という理解をしているかが重要である。

そして、この構造を理解すると、失敗するパターンとその対策を考えることができる。まだ働き始めて3年も立たない未熟な自分が見えてきたことを書き、失敗する人が減る&失敗してもへこまない人が増えることを願う。





①見えてきた若手が失敗する"学校の構造"


企業で働いた経験がないので想像での"企業"になるが、企業と比べるとその構造のユニークさが際立つ。

まず、教員として配属されてすぐに教壇に立つ。「教える・管理する」ポジションである。

これは、企業でいうマネージャー的なポジションである。

管理する部下は、30~100人程度。(特に担任・校種によって異なるが中学校だったら 担任+教科担任合わせて100人前後だろう)

しかもその部下は非常に様々である。
1を聞いて10 わかる部下もいれば、
仕事をやらない部下、
他人の仕事を邪魔する部下、
チームにとってマイナスなことを積極的にする部下(企業なら即クビだが学校ではそうはいかない)と多様である。

そんな環境のマネージャーに4月からいきなりあなたは就任である。

マネージャーの仕事は"30人ほどの部下・チームの成長"である。成長とは、学力面はもちろん、精神面、健康面、スポーツ面、人間関係、キャリア開発、場合によっては親子関係においても含む。

そのための裁量はかなり大きいし、意思決定の数は非常に多い。

この家庭背景は非常に多様な30人の部下のマネジメントをするポジションに、いきなり大学を卒業してすぐに就任する。

これが先生である。

当然、今までそんなに多くの人の、更に細かい部分までの管理をした経験がない若手は失敗をする。

ドラゴンクエストの魔王の城に"レベルが十分になされていない状況で、研がれていない剣"と共に挑んでいるのが今の学校である。

そんな状況で失敗することは当たり前のことで、それは構造上のものなので、多くの人が経験してきたあるあるなのである。

②失敗する3つの原因とその対応策

実際にどのような場面で失敗するのか大きく3つ挙げる。
1、意思決定が一貫しない、迷う、遅い
2、専門性の浅さ
3、全体がみえない

失敗する原因①意思決定が一貫しない、迷う、遅い
  先生は判断することが多岐にわたる。部下が自分で判断することができずに、先生に判断を求めてくることが1日に数え切れないほどある。その1つ1つに明確な判断基準で答えていくのは、最初は非常に困難なことである。そもそも、こちらが判断するのか相手に判断させるべきなのかも含めて判断しなけれないけない。

例えば、
「挨拶の時は立ちますか?椅子はしまいますか?」
「健康観察の返事は「元気です」か「はい」どちらですか?」
「親と連絡をとるために携帯を"明日だけどうしても"持ってきてもいいですか?」
「冬なので寒いんですがコロナで換気が大事って言われたんですが、窓はいつ開ければいいですか?」
- 生徒が授業中落書きをしている、注意したが止めない。個人を優先するか全体を優先するべきか

などなど、毎日瞬時に判断しなければいけないことが山積みである。
これらを、「一人ひとりの生徒に決めさせる」のか、「学級で統一する」のか、「学校で統一する」のかの判断をしなけばいけない。

そして、「生徒に決めさせる」判断をしたが、実は「学校で統一してた」ケースや、とりあえず「学級で統一したが、それって別に統一する必要がないよね」というケースもよくある。

判断が遅かったり・常に誰かに聞いてみるというと、生徒に「この先生はいつも誰かに聞いている」と思われてしまうことがある。

しかし、この意思決定に慣れるまでが非常に大変である。

そして、肝になるのは一度決めた意思決定を覆す時だ。生徒は「え、だって先生〇〇って言ってたのに、なんで今度は違うこといってるの?変えるなら、最初からそうしてよ」といって、信用がなくなっていく、、というのが「若手あるある」である。

その対策として、
対策①安易に判断しないこと
対策②迷ったら、仮の判断で、今後変更になる可能性を伝えること
が挙げられる。

失敗する原因②専門性の浅さ

教える教科・教えるスポーツなどの専門性がない。
単純な知識量が少ないことに加えて、抑えるべきポイントをしっかり抑えることができていない、賢い生徒は「塾の先生はこういっていた」と言ってくる。それに対して、しっかり生徒が納得できるだけの知識が教員になるまでに蓄えてられるかどうかが教科を教える上で非常に大事である。そして、盲点や自分があまり理解できていなかった所が積み重なり、「あの先生本当にわかってる?」という信用がうすれていくのが、「若手あるある」であるの2つ目である。

その対策として、
対策①わからないことをしっかり伝えて、生徒一緒に考える・調べてくることを伝える
対策②日々学び続ける

ことがあげられる。しかし、多くの質問に「わからない」と返答をすると信頼が失われるので、ベースの知識は持っておくということは前提である。

失敗する原因③全体がみえない
特に最初の1年は全体のスケジュール感が掴めない。どの時期に何をして、生徒がどのような状況になるか、どのような準備を教員がしなければいけないのか、生徒が準備しなければいけないのか、中学校でいうと3年間、小学校でいくと6年間の中で、生徒は発達段階的にどのレベルにいて、卒業までにどのようなことを理解させなければいけないか、の大枠を知っているか知らないかで、先を見据えた指導ができるかが変わっている。

対策①わかるスケジュールはすぐに手に入れ、敏感になる
対策②スケジュールはすぐに生徒に伝える、学期の流れ、年間の流れ、わかるなら卒業までの大枠

そして、先を見据えた指導には、その場その場の判断ではないので一貫性があり生徒が納得することが多い。

まとめ

以上のことをわかっていても、できるようになるまでには時間がかかる。実際に場数を踏んで、経験を積んでいく中でスキルとして獲得していくことが大事である。

先生は、職人の一面をもつ。

ものをつくる技術ではなく、集団・人をまとめる技術を職人のように経験しながら獲得しなければいけない。

以上の理由から、繰り返すが「若手の先生が失敗するのは構造上仕方がない」ということを3年間学校現場で働いてみて感じた。

なので能力がない、自分が悪い、と自己嫌悪に陥る必要はない。

ただ、失敗パターンが予測できれば、対策ができる。また、日々学んでいくことは必要だろう。

また、逆に若い教員の強み、経験がない中でのバリューの出し方も3年間働いて感じたのでそれはまた別のnoteに書こうと思う。

20210328
公立中学校教員 中村 柾



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