ワタヌキの恐怖体験
実は私、新卒で入った会社が宇宙開発の仕事で、1年ちょっと茨城の筑波宇宙センターで働いていたことがあるんです。
右も左もわからない社会人1年目で、まったくそれまで未知の分野だった世界に飛び込んだということもあってなかなか仕事についていけなくてですね。若い頃によくありますよね。悩む事も多くなって、結果一年ちょっとで辞めちゃったんですよ。今思えばもっと上手くやっていけたんじゃないかなんて思ったりもするんですけど、まぁ辞めた理由は他にも色々あってですね。実はその中に怖い体験をしたというのもあるんです。
当時私はつくばの宇宙センターで普段は仕事をしていたんですが、つくばでやる仕事が無くなって、あるとき種子島に出張で仕事をしに行くことになったんです。働き始めて1年くらい経って、季節はちょうど今くらいの春の頃でした。
この時、私は自分の他に二人の先輩と一緒に種子島に行ったんですが、種子島に居る間に生活する民宿ホテルを探すのに苦労して、なんとかみんな同じ民宿の部屋を取る事が出来たものの、私一人だけ離れの部屋に泊まる事になったんですよ。
最初は「自分一人だけ離れで気を使わなくていいし、気楽でいいやなぁ。」なんて気持ちだったんですが、部屋に入ってみるとなんだか中世のお城をイメージしたような変な内装がされていてですね。なんか妙な部屋だなぁなんて思ったりもしたんですけど「まぁ嫌なら他の部屋に空きが出来たときに替えて貰えばいいや。」と、そのままその部屋に宿泊することにしたんですよ。
それでしばらくその部屋で生活をしてて、特に変わった事も無く過ごしてたんですが・・・二週間くらい経った日でしたかねぇ。その日は休日だったんですが、疲れてたのか朝からずっとゴロゴロしてて、いつのまにか眠ってたと思ったら朝1時くらいに目を覚ましちゃってですね。「何もせずに休みを無駄にしちゃったなぁ」なんて項垂れながらシャワーを浴びて、バスルーム脇にある洗面台に立ったんですよ。その時気づいたんですが、そういえばこの洗面台には鏡が無い。よく見ると壁には鏡が貼ってあった痕跡があるので割ってでもして、それっきりになってるのかなとか思ったりしてたんですが・・・。
ふと、背後のほうでドアが開く音がした。洗面台はドアのすぐ横に設置してあるので、洗面台に人が立っていると開いたドアが背中にぶつかるんですよね。私は背中にぶつかったドアを肩で押し戻したんですよ。するとまたすぐに押し戻したはずのドアが背後からぶつかってきた。最初は新しい部屋でもなかったのでドアが開いたのも立て付けが悪くなってるんだろうくらいの意識だったんですが、二度目の時にぶつかってきた感触でそれがドアではないことに気がついたんです。人の指で突かれてる感じなんですよΣ(゚Д゚;)
そう気づいた瞬間、「うぅーわっ・・・」って動けなくなっちゃったガクガクブルブル((;゚Д゚)); ガクブル
しばらく経ってから思い切って振り返ると誰も居ない。バスルームの外にも誰も居なかった。そしてハッと思ったんです。そうか、それで洗面台に鏡が無いんだ。洗面台に鏡があれば背後からやって来る何者かが映り込んでしまう。それで鏡を外してるんだ・・・。もうその後は恐くて早く部屋を替えてもらう事ばかり考えてました。
そして朝になって朝食を食べに食堂に行ったときに、民宿の方に何気なく泊まってる部屋のことを聞いてみたんですよ。あの離れ部屋だけなんだか雰囲気違いますよね、と。すると「あの部屋は亡くなった女性オーナーが個人的に使ってた部屋なんですよ。取り壊すのも勿体無いので貸し部屋としてご利用いただいてます。」と返ってきた。
そう聞いた時に私は「あぁ・・・じゃあ、あの時に感じた気配というのは亡くなった女性オーナーなんだなぁ・・・。」と思って、続けざまに鏡が無い事も聞いてみたんですよ。
すると民宿の方が「あの洗面台の鏡ねぇ、亡くなった女性オーナーが鏡を外せって言ってたんですよ。鏡を付けるなって言うんですよね。なんか縁起でも担いでるんですかねぇ。」って言ったんですよねぇ。
ということは昨日のあれは女性オーナーじゃないのか・・・と、同時に分かった。亡くなった女性オーナーっていうのは見てるんですよね。鏡でその後ろの気配の正体を。だから外せって言ったんですよね(;´д`)
部屋を替える件、ちょうど空き部屋が出始めていたのでそのまま替えてもらったんですけど、替わってもしばらく怖くてなかなか眠れなかったですよ。もうこれはたまんねぇなって精神的にかなりヤラれらました。今でも覚えてますが、もう15年前の4月1日のことです。そんな体験をね・・・したことがあるんですよ。