宿泊施設の食事、安さを求めた裏側(消費者編)
前回、宿泊施設の食品における裏側をお伝えしました。
さて、ではお客さん側。
朝食バイキングは比較的食べ残しが少ないのですが、土日祝や年末年始など、お客さんの層にバラつきが出る時は食べ残しが多くなります。
自分の食べられる量、またはコンディションがわかっていないのか、パンなど、取ったものの手も付けずにそのまま…というケースが多々見られます。これは、自身で食べられる分を把握して取るか、何度か往復して様子を見ながら食べるべきです。一旦皿に移されたものは、空いていないもの(個包装の納豆や海苔、ジャムなど)を除き、例え手付かずでもすべて廃棄されます。
お皿に移されなかった、食べ残しでないバイキングの残りはどうなるか…というと、わたしたちスタッフの食事として社員食堂で提供されます。廃棄にならず、その点はいいところなのですが、それでも昼過ぎには残っていればそれも廃棄されます。特に気になっているのがカットフルーツ。種類によるのですが、お客さんにも、スタッフにもあまり人気でないグレープフルーツ。毎日廃棄になっているのを見て悲しくなり、なるべく少しでも捨てられてしまわないために、毎日食べるようにしています(わたし一人の頑張りではあんまり意味がないんですが…)
おそらく安いという理由で出されているのだと思いますが、こういった廃棄の多いものをやめてしまうのもひとつ。または、出し方を検討して、外国のようにフルーツを丸のまま出す…というのもありかなと思いました。日本のりんごは大きくて不向きですが、みかんやミニバナナなど。これなら、お客さんが一度テーブルに持っていって食べなかったとしても、皮という天然ラップがしてあるので廃棄になりませんし、お客さんが帰りの電車や車で食べるかもしれません。
また少し企業側のことに脱線してしました。次は夕食について。
旅館の夕食は量が多いイメージがあると思いますが、食べ残しは平均して非常に多いと感じます(特に高齢の方)
もし、食べられないと感じる場合は、手を付けずにスタッフに断るか、下げものをしに来たときに手を付けていないことを一声かけていただけると、わたしが働いている旅館ではアルバイトの学生が食べています。それを聞いて、えっ…と嫌な気持ちになられる方ももしかしたらいらっしゃるのかもしれませんが、ゴミになってしまうより、腹ぺこの若者のおなかに入っていった方が、気持ちがいいと思いませんか?(衛生上これが良いかはわかりませんが、一応施設としては食中毒予防の観点からNGになっているので、自己責任でしていると思われます)
あとは、コース料理はおしながきがあるところが一般的なので、自身のおなかの様子を見て、キャンセルしていただくのもひとつの手です。もうごはんは食べられないから出さなくていい、でもお吸い物だけちょうだい、なんてことも対応してもらえると思います。ひとくちふたくち突いて食べられず破棄、というよりは、キャンセルしてもらった方が断然よいかと。口に合わなかった場合などは仕方ないのですが。
最後にお出しするごはんは、お客さんもおなかいっぱいだけど、お米に対しては特にもったいない、という念があるみたいで「おにぎりとかにして部屋に持って帰っちゃダメ?」と聞かれることが非常に多いです。わたしも望むのならぜひそうして欲しいので、お断りするのがいつも心苦しい…
食中毒を防ぐのは大切ですが、食べ物の廃棄を減らすのもすごく大事。ここの折り合いや新しい取り組みを生み出さねば、日本の食料廃棄率はなかなか減らないと思います。
昔、何かの本で「武士は自分の必要な食事量がわかって一人前」というようなことを読みました。いつどこで読んだ、何の本だったのかも覚えてないのですが、この意味の力強さはいまだに頭に残っています。いつ戦が起きても戦えるように、常に体調を万全に整えておかねばならない。食べすぎも食べなさすぎも体によくないし、自分の体のコンディション、そして適量をわかっておく。
自分の体のことを知ることは、健康にとって一番大切なことでもあります。そして今の時代を生きるわたしたちは、それに加えて環境のことを配慮する必要もあります。
これからすぐに出来る、宿泊施設で廃棄を減らす最大のアクションは
①自分の食べられる量を知る(体調含め)
②食べられないと思ったら触らない、断る
このふたつだと思います。
本や映画、美術館などの文化教育、またはサスティナブルな物作りをしているところで使わせていただきます。