窯に、預ける
今年になってスラックスが四着ほど、とある縫い目が破けてしまった。なんてことだ!縫えば済む所ではない。運動不足による身体の弛みか。はたまた、気持ちの弛みか。何年も穿いているがゆえに破れるのは仕方がない。さらには、コロナ禍に伴い、スラックスも毎回洗濯していたので、劣化するのは止むを得ない。形あるものは、いつか壊れる。
8年前に惚れ込んで購入した琉球グラス『源河源吉』、そして10年以上前に北海道で購入した北一硝子は健在なのだが、職人の技が煌めくグラスにはつい魅了されてしまう。グラスは窯に入れてみないと、どんな仕上がりになるかは分からない。そこが難しいところだ。だからこそ、何度も何度もガラスと対話しながら、魂を吹き込むことを繰り返す。失敗の数は知れない。しかし、そういうことを乗り越えてきた結果、素敵な作品が生み出され、そこに引き込まれる。さて、あなたにとって、何か魅了されるようなモノはあるだろうか。
ところで、高麗茶碗とは朝鮮半島で焼かれた茶碗の総称だが、もともと雑器として使われていた。斗々屋茶碗はその一種だが、千利休の審美眼に見出されて抹茶碗に見立てたのである。茶道具でないものを茶道具として使うための美しさを見出す力が不可欠だ。茶人は、茶を嗜むためにさまざまなことをずっと考え続けている。
陶芸家のSHOWKOさん(『私らしい言葉で話す』の著者)によると、焼き物を窯で焼成させることを「窯に預ける」と表現するようだ。確かに、成形した生素地を窯に入れたら、誰の手も加えることはできない。どんなに最上の過程を経てきたとしても、最後の工程は自分の力ではどうにもコントールできない。だからこそ、素地を作る過程では対話を深めながら、細部まで想いを込めて、丹念に作り上げる。適当に食材を入れて、電子レンジでチンみたいな具合には到底いかないのである。
上述したことは、勉学においても同じことがいえるのではなかろうか。学習を継続していても、成長が停滞してしまう現象を「プラトー現象」と呼ぶ。どんな人でもプラトーは経験する。でも、そこで諦めずに地道に継続することで、次のステップが見えてくる。“達人はプラトーを愛する”という言葉がある。停滞するのが当たり前で、自己を充実させる時期なのだ。駄目だな、できないとネガティブな感情だけで捉えてそのままにしておくと、その経験はつらいものになってしまう。しかし、どんな経験も今後の自分の活動に生かせないだろうかと心を切り替えて、より高い“感性の解像度”で理会しようとしたら、一瞬にしてポジティブなものに変わる可能性がある。人生において、自分の中にない新たな感情が湧き上がってきたら、その感情に出合えたことをココロから喜んでみてはどうだろうか。認めたくない自分も、好きな自分も、どちらも自分だから、あるがままに一緒に受け入れてあげる。やるだけやったら、信じて待つ、すなわち窯に預けてみることも必要だろう。
설레어 멈출 수 없는 걸 ワクワクして止められないの
(purple kiss『7HEAVEN』)
🎵 人生いろいろ。人の色もいろいろ。対話を楽しもう~ 🎵
【Color 75】都会と田舎の勉強格差はあると思うのですが、その格差を埋めるためにどんな勉強をすればいいと思いますか。また、社会はどうやって格差を減らしていくべきなのでしょうか。
【A】よく世間では言われていることですね。でも、現役のときも、現在も感じたことはありません。もしかしたら、鈍感なだけかもしれませんが。あしからず。勉強は、都会にいてできる人もいれば、田舎でできる人もいますから。その逆も然りです。有名な塾や予備校に行ける可能性はありますが、勉強はそういうものとは違う気がします。何のために勉強すべきなのか本人が問い、答え(納得解)を見つけようと継続することが必要不可欠ではないでしょうか。その上で、どういう格差を減らせばいいと思うか、問いを深めていくのがいいかもしれませんね。
【Color 76】塾で教えてもらったやり方と授業のやり方がたまに違うときがあって分からなくなってしまいます。自分がより理解できる方法で解くか、計算が速くできる方法か、どちらを優先すべきですか。
【A】私は教科書とも、塾や予備校とも異なる方針で(独自路線で)説明することはときどきあります。それぞれ良かれと思って教えていることなので、一長一短だと思います。ただ、色々な方法を教えることで迷わせてごめんなさい。答えへの辿り着き方はたくさんあるのです。だから、誰にとってもよい絶対的なルートがあるわけではありません。もしそんなものがあったら、私にとっての数学は興味のないものとなるでしょう。だから、私にしかできないことを考えています。塾で学んだこと、授業で学んだことで、自分が理解できて入試本番などに使いやすい方を選択されるのがよいかと思います。本番で立ち向かうのはあなた自身ですから、どんな方法を選んだとしてもよいのではないでしょうか。
【Color 77】数学の過去最低点はどれくらいですか。
【A】『二次曲線』という分野で、30点くらいだったでしょうか。そのときはすでに受験勉強状態に入っており、この分野は単独では出題されないため、安易に考えていました。しかも、数学のテスト勉強を一度もしたことがなかったので、範囲のことを気にしていなかったのでしょう。これはダメな例ですから真似しないでくださいね(笑)。1学年最初の実力考査で100点、中間考査で99点をとったために、めっきり数学の世界を目指すことになりました。でも、驕れるなかれ。
【Color 78】数学の勉強は、基礎をやるのと応用問題をやるのとどちらを多くやった方がいいですか。
【A】教科書にあるような基礎問題が手につかないのに、応用問題に取り組んでもさっぱり分からないですよね。例題のやり方を見ないで解けるようになってきたら、応用問題にどんどん取り組んだらどうでしょうか。これはスポーツや音楽などと同じです。基礎ができていないのに、プロと対決しても結果は見えています。また、料理をしたことが全くなく、レシピを見ずに料理を作ったらどうなるでしょうか。ただ、基礎ばかりやっていると飽きるかもしれないので、応用問題に挑戦してみて、今の「実力(身の程)を知る」こともいいかもしれませんね。
【Color 79】ネタ帳にはどのようなことが書いてあるのですか。
【A】みなさんに伝えたいなと思うことがあったら、その都度メモしています。思い浮かんだことはすぐ忘れてしまうのでノートなどに書き留めています。
2023.11.17