伝える、伝わる
たった一文字が異なるだけで意味が全く違う。たとえば、「食わない」と「食えない」である。前者は断食で健康的であることが多く、後者は病気で不健康なことが多い。同じ行為に見えるが、結果は明らかに別物である。なぜなのか。自意識的に食べないことを決めているのと、他者・外部の束縛(圧力)によって食べられないのとでは大きな差を生むのだろう。こういう事例を踏まえると、勉強も含めて様々な活動は、自発的に取り組むかどうかで結果に差が出そうである。
表題もこれと同じことなのだが、この2つの言葉を区別して使い分けるのがなかなか難しい。この通信は、私が過去の自分をターゲットにしつつ、現在目の前にしている事象を結び付けて“伝えたい”思いを紡ぐ。しかし、それは必ずしも“伝わる”かどうかは分からない。伝えるのは自分、伝わるのは他者のこと。だから、酷な話だが、思いがすべて伝わると思うのは幻想でしかない。そもそも見ているモノ(世界)、感じているモノは同じではない。そのようなものを描写して、何とか伝えようとするときは、誰か一人に伝えようとするあり方がとても大事である。たとえば、恋焦がれる人に誕生日プレゼントを選ぶときは、その人のことだけを考えるはずだ。何かを伝えようとするときは、その一人のことを思い、その人に伝わるようにコトバを丁寧に選び、紡いでいく必要がある。とはいえ、これは容易なことではない。実際、プレゼントを渡しても、それを気に入ってくれるかどうかは分からない。でも、大切なことはプレゼントそのものではなくて、その人の想いではなかろうか。
さて、“二元性一元論”という考え方がある。硬貨には、表だけでなく必ず裏もある。また、カッターは切れる刃だけでは成立せず、それを支える(持つ)部分が必要である。二面性を持っているように見えるが、どんなものもすべて一如であるという捉え方である。これは仏教の考えだが、「心身一如」という言葉に出会い、仏教や禅の本を読むようになった。勿論、中身は殆ど分からない。でも、本を読むというのはそれでいいと思っている。すべてを理会しようと思う方が詭弁のように感ずる。ただ、小難しいものに挑むからこそ、見えてくる世界がある。新たな世界が開ける。そんな世界を見てみたいと思えたら素敵ではなかろうか。
ところで、受験生ならばいずれ志望校の過去問を解くだろうが、私はまず“敵”を知らないと戦えないと考えていた。しかし、とある現役東大生はこれから行きたい大学なのだから“味方”だと表現した。素晴らしい表現だ。志望校の傾向を掴み、今どれくらいの位置にいるか把握し、「自分を知っておく」ことが必須であろう。目の前にしているものは、自分の鏡である。それを敵と捉えるか、味方と捉えるか。それはあなた自身である。どちらにしても同じもの。あなたの心が具体的に露になって、目の前に真実として“ただ”あるだけ。
색안경 끼고 보는 게 죄지 色眼鏡で見るのは罪よ
(ITZY『SNEAKERS』)
🎵 人生いろいろ。人の色もいろいろ。対話を楽しもう~ 🎵
【Color 12】先生は行動の選択肢が2つあって、そのうちの1つを選んでいったときに、後々やっぱりあっちにするべきだったのか、それともこれで良かったのかと考えすぎてしまうときはどうしたらいいと思いますか。
【A】なるほど、よくあることですね。まず迷ったときは少し時間を置くようにしています。少し時間が経ってから必要だと思ったら行動に移します。たとえば、欲しいものがあったとして、そのときの衝動で決めるのではなく、時間が経過しても欲しかったら購入します。迷うということは、意外と不用なのではないかと考えるようになりました。迷う必要がなければ、そもそも即決のはずですから。とはいえ、あなたが悩んだ末に選んだものは“必然的に”そちらを選ぶようになっていたのです。どちらにしても良かったのです。起こってしまったら、それはすでに過去のことです。そこに時間を費やしたところで、過去の出来事を変えることは誰にもできません。しかし、過去の出来事をどう捉えるかという現在のあなた自身の考え方(捉え方)は変えられます。そもそも2つの選択肢のどちらを選んでも正解か不正解かどうかなんて、誰にも判定なんてできません。あえて言うなら、それを完璧に選んだ、あなたは正しくて、それが真実となっているだけです。考えてしまうこと自体は悪いことでは決してありませんが、あなたのこれからの人生を考えたら、どこを向いた方がいいでしょうか。
【Color 13】音楽が人を惹きつける理由は何だと思いますか。
【A】面白い問いですね。そもそも人が誕生する際に、初めて耳にする音とは何でしょうか。赤ちゃんは生まれるまで、母親のお腹の中で心臓の音や子宮内の血液の流れる音を胎内音として聴いています。そういう意味でも、人を癒すのみならず、鼓舞したり、気持ちを高めたりするなど感情に訴えかけるも のとして発達してきたのかもしれませんね。
【Color 14】人はなぜ緊張するのですか。
【A】確かに、緊張しない方が何事もうまくいきそうですよね。私は小心者で、人前に立つと緊張するし、汗だくになります。今になっても、テストをやると言われると、緊張するし、頭が真っ白になります。
おそらく、狩猟採集時代からでしょうか。獲物を仕留めようとするときに、何も考えずに挑めば人間の力では到底敵わないはずです。力を高めるために、心臓をバクバクとさせ血流を増やしたのではないでしょうか。その名残かもしれませんが本能とも言えますし、もしかしたら緊張している方が力を出せるのかもしれませんね。
【Color 15】なぜ出版業界は不況に陥っているのですか。
【A】本を読む人が明らかに少なくなってきています。あらゆる本の電子書籍化が進んでいるので、大ピンチなのです。私は紙が持っている感覚が好きなので、電子書籍はどうしても馴染めません。
【Color 16】好きな食べ物の中で、制限がなければ、ずっと食べていられそうなものは何ですか。
【A】茶碗蒸し、ゆで卵、土瓶蒸し、ポテトチップス、サラダ軍艦(かっぱ寿司)、韓国のり、枝豆、もつ煮。思いつく限り書いてみました。まだある気がします…。
2023.5.27