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一冊の本をさがす about books no.3
同人誌に書評を書いているので、毎回、取り上げる本をさがす。
季刊誌なので年に4回締め切りがあり、ざっくりと選書基準もある。
私が心がけているのは、できるだけ新刊を選ぶことと、翻訳本が連続しないこと。
書評委員会に送られてくる新刊も多数あり、そこから選ぶ筆者もいる。
私の場合は自ら希望を伝えることが大半で、ほとんどの場合「じゃあ、その本でお願いします」と快諾してくれる。
全体のバランスもあるので、調整係のKさんは大変だなあといつも思う。
前号は13冊の本が取り上げられていた。
今回、5月中旬が締め切りなので、連休中に書いておきたいと思っている。
時間が限られているので、探すのに手間取っていると間に合わなくなってしまう。
それなりに選書ストックもあるのだけれど、新しい本も出版される。
幸いにも、通勤途中に大型書店があるので新刊の物色には適している。
以前は、自宅近くの図書館もよく利用した。ただ、新刊は貸出中も多く順番待ちをしていると時間だけが過ぎてしまう。できれば何冊か読んで、その中から選びたいと思いながら、最近はその余裕がなくなりつつある。
もともと本の新旧に興味がないので、新刊はこの時しか意識しない。
前回、前々回と2冊続けて音楽の物語だった。
前回は絶対音感を持つギターの得意な少年の話で、その前はラッパーを夢見るティーンエイジャーが主人公。
クラッシックギターは、私もたまに聴くしCDもいくつか手もとにあるので、彼らが演奏している曲や演奏風景も読みながらイメージできた。
でも、ラッパーは、ヒップホップは、好んで聴くジャンルではなかったし、わからないに等しい。
音楽そのものがテーマではないので、ヒップホップを知らなくても物語は理解できるように書かれていた。けれど他の音楽ジャンル、例えばロックとかポップスとかでは成立しない側面もある。当然のことだ。
ざっと一読してから、ヒップホップについて調べたり、本を読んだり、アルバムを聴いたり、そう言えば映画も観た。
偶然、選んだ一冊の本から始まり、ヒップホップのいろはを知ることになった。
これが、本当にこんなことがあるのかと、自分でも信じられないほど多くの物事とつながった。(このことはまた別の記事に書きたいと思う)
一冊の本との出会いは、その数を思えば奇跡に近いかもしれない。
今回、選んだ本を読み終え、ふと想った。
なぜこの本だったんだろう?
そのことを言語化すると、なんだか少し違うような気もして迷ってしまうのだ。