『老舗ミニシアター 第二章へ着々』 no.3
『ナゴヤキネマ・ノイ』のピンクのフライヤーに目が止まり、思わず立ち止まって見入ってしまう。
そういえば、この本屋には映画のポスターがやたら貼ってあったのを思い出した。
すぐ横にはフレディー・マーキュリーが拳を突き上げている。
彼も応援してくれているような気がするのは、私だけだろうか…
この映画も見たいなあと思っていたのだ。
『ナゴヤキネマ・ノイ』の情報がアップデートされるたび、CFのニュースレターが送られてくる。
チラシの掲示や配布の記事も読んだ記憶があった。
本と映画は明らかに異なるようで、どこか共通項がある。
映画を観る人は本を読む人が多いのかもしれない。
私の友人で映画好きは一人しか浮かばないけれど、確かに彼は本も好きだ。
彼との話題は映画と本が多かったと、今更のように思う。
この場合の映画好きは、あくまでも映画館に足をはこぶ人をさす。
ネット配信やテレビのロードショーで観る人もいるだろう。
私はよほどでない限り映画館でしか観ない。
先日、改装準備中のシアターの中の写真がアップされていた。
シアター内の座席が半分ほど出来ていた。
そして、本日はCFの最終日。
当初の目標金額を大きく超えていた。
呼びかけ人の方たちに知った名前をちらほとと見かける。
閉館した『ちくさ正文館書店』の店長、古田さんも。
閉館を残念に思っていたが、ここにちゃんといてくれる。
年始に初めて行った本屋にも『ナゴヤキネマ・ノイ』のピンクのフライヤーが張ってあった。
すぐそばにレジがあり、お店の人と目があった。
彼女は、私を見ていたようだ。
フライヤーを見ている、私を見ていたのだ。
話しかけると、ぱっと反応してくれた。
シネマテーク閉館のニュースから今日に至るまで、彼女も私と似たような気持ちで日々を過ごしてきたようだった。
初対面の人とも再スタートのニュースを喜び合えるのは、シネマテークという共通項があるからだ。
ささやかな時間と会話でも、これほど温かい気持ちになれる。
ただただ、嬉しい。
この本屋はギャラリーを併設している。
帰省中だった娘とギャラリーに行ったついでに偶然立ち寄った。
彼女の大学の先輩が個展をしているという。
先輩といっても彼女が知っているだけで、年齢もかなり離れている。
それでも共通項が大いにあるようで、二人は会場で話し込んでいた。
この本屋のことは前にも娘から聞いた記憶があった。
自宅から地下鉄でふた駅。
このすぐ近くの図書館に以前は通っていたが、改装で閉館している。
以来、近いけれど来る機会がなくなった。
ふた駅程度なので、天気の良い日は散歩がてら歩ける距離だ。
またゆっくり来ればいいと思いながら、ついつい本棚を見てしまう。
棚のラインナップは、明らかにセレクトされたものだった。
増やしたくないと思いながらも、まあ文庫だからとまた買ってしまう。
一度、ハードカバーを手放した記憶もあるのだが…
『プレーンソング』保坂和志・著
懐かしい知人に会ったような気がした。