『人形つくり』 サーバン
「リングストーンズ」と表題作の二つの中篇から成る。
自由を渇望する少女たちは著者の願望を反映しているのだろうか、現実の社会における様態を解放し、再配置せんとする試みが描かれている。ただし、その試みは「自由はすばらしい束縛のなか」という言葉が表す通り、被虐的な立場に陶酔する者と支配する者との関係性こそ至高とする独自のエロティシズムに基づいて為される。若く美しいものへの執着は不死性への憧れと結び付き、異教の神や魔術、永遠の世界の魅力を説いて少女を誘い縛り付ける。
一方、自然は愉悦の束縛関係と対置される。魔物や妖精の邪悪さと重ね合わされ、人間に対する敵意を持つものとして。また、変化・再生する真実なるもの、孤独と自立の象徴として。
表題作のラストはアクションエンターテインメントになってしまっているが、淫靡な夢のような作風は多くの方に好まれるのではないか。
解説で言及されていたマッケンの「白魔」は読んでおきたい。