【WBC】ドミニカ共和国の紹介
いよいよ開幕した第5回WBC。「MLB30球団ファン合同note」では、企画の一つとして主な出場国の戦力分析を行ってまいります。
今回はドミニカ共和国の戦力についてまとめました。ぜひご一読ください。
チームの概要
あまり詳しく知らない人の為に今回の(今回も?)ドミニカ共和国を一言で表すと、真のドリームチームだと思います。
日本の報道では「今年のアメリカ代表はドリームチームだ」と良く報道を耳にしますが、ドミニカ共和国も負けず劣らずで、攻守の総合力でいうとアメリカを上回っていると予想している声も非常に多くあります。
これまでのWBCでの結果は以下の通り。
前回大会は2次ラウンドで敗退したものの、第3回では栄えある優勝をつかみ取っています。
今季は王者に返り咲くべく、Nelson Cruz(SD)が選手兼GMとして、早い段階から選手のスカウトに動いていました。42歳と球界最年長野手ならではの人脈と、その人望で幅広い世代のスター選手への声掛けを精力的に行っていました。
が、一次登録された50人の選手のうち、18人が辞退。全てが上手くいったわけではありませんでしたが、それでも豪華な顔ぶれになっております。
ドミニカ共和国ロースターと予想ラインナップ
そんなドミニカ共和国の予想デプスチャートと予想スタメンは以下の通りです。
以降、投手・野手の注目ポイントについて述べていきます。
先発投手
昨年は満票でナ・リーグのサイヤング賞を受賞したSandy Alcantara(MIA)を筆頭に、昨年からローテに定着、オフには5年6400万ドルの契約も獲得したCristian Javier(HOU)の二本柱は非常に強力です。
Alcantaraは全ての球種が一級品なのに加え昨年6完投を記録したように、球数制限があるWBCでも長いイニングを投げることが期待できます。Javierもプレーオフで2試合に先発しともに無失点(ALDSでは1試合にリリーフ登板し、1失点)。大舞台を経験し、結果を残していることからしっかりと役割を果たしてくれるでしょう。
3番手には昨年マイナー契約からスタートも、見事復活を遂げたJohnny Cueto(MIA)、そして今季からローテに定着した23歳のRoansy Contreras(PIT)が、辞退者続出の結果4番手を託される見込みです。
Framber Valdez(HOU)、Luis Castillo(SEA)、Luis Severino(NYY)、Frankie Montas(NYY)、Freddy Peralta(MIL)といった、エース級の投手が軒並み辞退した為、100点満点のローテーションとはなりませんでしたが、十分戦える戦力は揃っていると思います。
リリーフ投手
中継ぎ陣も各チームで重要な場面を任される投手が多くそろった盤石なリリーフ陣を形成…のはずが、Gregory Soto(PHI)、Jose Leclerc(TEX)、Jarlin Garcia(PIT)が相次いで辞退。
その中でも、一定水準以上の選手は集まっており、クローザーを任せられる投手も多くいるのですが、今大会ではジャイアンツの若き守護神Camilo Doval(SF)がその役割を担うのではないのでしょうか。
そのDovalにつなぐセットアップの役割が期待されるのは昨年世界一に輝いたアストロズのRafael Montero(HOU)、Bryan Abreu(HOU)のコンビです。
共にポストシーズンでも結果を残しており、大舞台の経験が充分に生かされるのではと思います。
彼ら以外にも、安定した投球で18ホールドを記録したLuis Garcia(SD)、荒れ球ながら剛球で9ホールド・7セーブを挙げたDiego Castillo(SEA)、フィリーズ時代には28セーブを記録したHector Neris(HOU)、あらゆる場面で当番が可能なYimi Garcia(TOR)と経験豊富な投手が多くおり、彼らがセットアップ・クローザーの役割を果たしても全く違和感はありません。
また、先発投手が早めに降板した場合にはCesar Valdez(LAA)、Luis Ortiz(PIT)、Genesis Cabrera(STL)の登板が予想されます。
経験豊富なリリーフ陣が多くいる一方、辞退者が多く出たことで層が薄くなってしまった感は否めません。またDoval、Montero、Castiiloは四球が多い投手で、制球が定まらないところを付け込まれないか、球数が増えて投球制限に引っ掛かり駒不足に陥らないか…という点も不安要素になります。使える投手・使えない投手は誰か、首脳陣の適材適所の運用が求められます。
野手
まさにMVP級のプレーヤーが勢ぞろいです。
外野は若き天才打者Juan Soto(SD)、ルーキーながらにしてスーパースターの座に上り詰めつつあるJulio Rodriguez(SEA)、コンスタントに長打が期待できるTeoscar Hernández(TOR)が軸になるでしょう。しかし、Sotoはふくらはぎの違和感があるとのことで、別メニュー調整を続けています。1次ラウンド初戦には間に合うとされていますが、不安は残っており、強打のEloy Jimenezがスタメン出場する機会も多くあるかもしれません。
内野は昨年MVP投票2位のManny Machado(SD)が中心となります。本来ならサードでフル出場してもおかしくないRafael Devers(BOS)がDHに回る贅沢ぶりです。
二遊間は人や記事によって予想が大きく異なる部分です。まずショートは31本塁打を記録したWilly Adames(MIL)、プレーオフで大活躍したJeremy Pena(HOU)、21年にセンセーショナルな活躍をしたWander Franco(TB)がいます。誰が出場しても遜色ありません。
セカンドを本職とする選手は、昨年は不振だったKetel Marte(ARI)、今年からサードへの転向が予定されるSean Segura(MIA)が名を連ねますが、本職がショートの3人の誰かがセカンドを守ることによる攻撃力の大幅な強化を目指すと予想します。
Marteはセンターのバックアップとしても機能できることからUTとして重宝されるのではないでしょうか。
ファーストには、本来は三冠王も狙える大砲Vladimir Guerrero Jr.(TOR)が入り、強力クリーンナップを形成する予定でしたが、直前に右ひざを故障したことで代表辞退となりました。
代わりに招集されたのはJeimer Candelario(WAS)。21年にはリーグ最多の42二塁打を放った実績はありますが、Guerrero Jr.と比べるとどうしても見劣りしてしまいます。
最後に捕手はGary Sanchez(FA)、Francisco Mejia(TB)のどちらかがマスクを被りますが、他の野手陣と比べると見劣りする陣容です。SanchezはWBCを通じてアピールし、新たな契約をゲットしたいところです。また、彼らは手薄なファーストのバックアップの役割も求められるかもしれません。その点でも攻守にわたる奮起を期待したいです。
注目選手
Sandy Alcantara(MIA)
昨年終了時点で、現役No1投手と言っても過言ではない選手。100マイル近い速球・シンカーに加え、精度の高いスライダー、チェンジアップを駆使する非常に完成度の高い投手です。Statcastを見ると三振の指標が高くないように見えますが、これは球数を抑えているためで、勝負所の中盤~終盤に100マイル越えの球を投げることも珍しくありません。
昨年は現代野球では中々お目にかかれない228.2イニングと6完投を記録。
昨年0.3%しか投げていなかったカーブを増やす趣旨の発言もしており、WBCでは更なる進化を遂げた姿を見ることができるかもしれません。
優秀な投手がそろっている中でも、頭1つも2つも抜けている存在なので、重要な試合で極力投げてもらいたいところ。1次ラウンド第1戦に投げるのであれば最短で登板できるのが準々決勝で、その後は投げられないことが想定されますが、組み合わせによってはスライドさせて準決勝、決勝への登板もあるかもしれません。
Camilo Doval(SF)
サイド気味のフォームから放たれるシンカーは平均98.4マイル、ツーシームは平均99.4マイルを記録し、昨年はその球の速さがMLB上位1%に位置しています。
しかしそれ以上に厄介なのが投球の4割を占める、大きな変化量を持つスライダー。昨年の被打率は.158で、豪速球とのコンビネーションは相当厄介です。打球関連指標は軒並み優秀で、一発や長打を打たれて逆転、という心配も多くありません。実績あるリリーバーが多くいる中、クローザーに抜擢されても不思議では全くないと思っています。
ただコントロールにはそこまで優れておらず、四球率はMLB下位15%に属しているので、調整が充分に行えていない春先がゆえに、制球乱れから大崩れしないかは気になるところです。
Manny Machado(SD)
言わずと知れた球界のスーパースター。昨年は打率.298、32本塁打102打点。OPS.897を記録し、MVP投票では2位に位置づけました。
また、今季は初めて守備防御点でマイナスを記録しましたが、華麗な守備は魅力です。
Machadoといえば悪童、というイメージも今は昔、気の抜けたプレーをしたTatis Jr.を叱咤したりと、チームリーダーとしても大きな役割を果たすようになりました。Cruz、Canoがいる中、グラウンド内でのリーダーとして選手をまとめてほしいですね。
Jeremy Pena(HOU)
昨季は新人ながら22本塁打、DRS+15を記録。移籍したCarlos Correaの穴を埋める見事な活躍を見せました。
特筆すべきは、シーズン中の成績もさることながらポストシーズンでの大活躍ぶり。地区シリーズでは延長18回まで0対0だった均衡を破る決勝ホームランを放った他、リーグ優勝決定戦では第4戦に同点となる3ランを放つなど2HR、OPS1.176と印象的な活躍でMVPを獲得。
そしてワールドシリーズでも打率.400、OPS1.023と絶好調でまたしてもMVPを獲得。このセンセーショナルな活躍はまだ記憶に新しいのではないでしょうか。
大舞台で活躍できる素質があることを昨年のポストシーズンで証明したPena。ショートのポジションにはAdames、Francoとライバルが多くいる為、出場機会は充分ではないかもしれませんが、彼の力が必要になる場面は多くあるはずです。またはマイナー時代に17試合だけ守ったことのあるセカンドでの出場も考えられると思います。
Yimi Garcia(TOR)
スーパースターぞろいの中で地味ながらチームをしっかり支える役割を期待する選手を一人ご紹介。
昨季は22ホールドをマーク。スピンの効いた、手元で伸びるようなストレートが武器で、初球だろうと2ストライク後だろうと投げ込みます。そのため、昨季奪った58三振のうち42三振がストレートによるものです。
上述したDovalら、他のリリーフ陣と比べても比較的四球が少ない点も大きな特徴で、安心して見ていられる投手の一人です。
その安心具合から、試合の終盤に限らず試合の中盤や先発投手が球数制限の影響でランナーを残して降板したシチュエーションでの登板機会もありそうです。
大会展望
試合日程と登板予想
ドミニカ共和国の他にベネズエラ、プエルトリコがひしめき、死の組と称されているグループD。この2チームに何としてでも勝利することが求められます。
初日のベネズエラ戦はAlcantaraの登板が決定的です。となると、プエルトリコ戦にJavierが登板し、残りの2試合をCueto、Contrerasが登板するということになりそうです。
そうなると、日程の問題から準々決勝はAlcantara、準決勝をCueto、決勝をJavierが投げると予想します。
ただ、ここに関しては首脳陣の方針も大きく影響しますので動向をきちんと見守りたいと思います。
最終成績予想
とにかく、1次ラウンドを無事に突破できるかにかかっています。4グループの中で最も過酷とされているため、下手すれば1次ラウンド敗退も考えられますが、私はドミニカ共和国の優勝を予想します。(日本人なのでもちろん日本にも優勝してほしいのではありますが…)
懸念点はいくつかあるものの、攻守にバランスの取れたチームです。1次ラウンドを突破した際には優勝の可能性も大きく近づいてくると思います。
1次ラウンド突破の為には、強豪ベネズエラとの初戦できっちりと白星をとることが重要です。エースAlcantaraをはじめ、スター軍団が全力で戦い勝利する姿を期待しています。
※トップ画はMLB.comより引用