サブカル大蔵経592軍司貞則『高校野球「裏」ビジネス』(ちくま新書)
今日、センバツ高校野球が始まりました。
選手を全国に売る。あの人、二重人格や。ユニホームを着ている時と背広着てニコニコしてるときの態度があまりにも違いすぎる。ユニホームを着るとヤジは汚いは、審判に文句を言うわ、相手チーム怒鳴りつけるわ、ひどいもの。それでいてチームの人数は100人ぐらいいるから、すごい売り上げや。会費2万とったらいくらになるか。しかも選手は日本全国に売るんや。北陸・北海道・東北・九州そして四国。p.95
巨大な〈高校野球〉という存在の陰で蠢く者たち。ブローカー、選手という商品、供給源としてのボーイズリーグ。闇の常識。
どこかの学校みたいに金に任せて選手をとってですね、良い設備を作るそういう学校いっぱいあります。やっぱり今は北が多いんじゃないですか。北と九州です(笑)あれはえげつないです。絶対問題になると思います。小遣いくれるって言うんだから。p.31
今日、明徳、仙台育英に初戦敗退してしまいました。インタビューを受けた馬淵監督、本書では出色の存在です。
ダルビッシュは本当は明徳だったんですよ。羽曳野のバッテリーで明徳に入りたいと。その時ダルビッシュの親父が条件出してきたんですよ。ペルシャ絨毯かなんかと。弟も一緒にとってくれと。弟は問題が多い子なんですよ。広陵も欲しがったんですよ。中井が。でも明徳に決まりかかっとったんですよ。宮本有を名乗れと。親父は専属トレーナーをつけてくれと。アストロズに行くから、70球以上投げさせてくれるなとか。イスラム系やからあんまり豚肉出すなとかね。p.20
ダルビッシュ兄弟を護る父親。
東北はトレーナーつけたり、70球以上投げんで。お小遣いもそれは当然ですよ。練習試合した時ほんま取っとけばよかったと思って(笑)でもウチでは逃げていったでしょ。p.21
明徳の自負と矜恃。
やっぱりね、そういうものがないと今来ないですよ。明徳行ったら早稲田行けるとか、智弁和歌山行ったら慶應行けるとか。そういうものがないと、やっぱり子供も親もそこを見てます。出口がない所はいきませんよ。p.29
馬淵監督の哀愁。
よくあんな足の速い選手を「集めたな」という言葉がボヤキっぽいのかな?(笑)
南海ホークス、リーグ受賞11回・日本一二回を成し遂げたその鶴岡一人が少年野球の世界に降りてきて作ったのが、日本少年野球連盟、ボーイズリーグである。拠点を南海ホークスの使用する大阪球場に置いた。p.48
ボーイズリーグの原点がプロだったとは。しかも南海の鶴岡親分。それで大阪が本場なんだ…。
彼らにとって硬式野球を続けることには意味があったのだ。顔も知らない父親・母親と出会う唯一のチャンスなのだ。俺ら父ちゃんも母ちゃんもいないんで。p.149
全国に名前が出る高校野球の陰のさまざまなドラマ。
苫小牧のことをよく知る議員はこういう。香田さんに対してリスペクトが足りないんじゃないの。香田さんは北海道の野球100年かかってもできないことを短期間でやってのけた人だね。すごいことをやったんだよ。もっとリスペクトしないと。なんでもっとリスペクトできない。香田さんが辞めたんで、また北海道レベルが元に戻って、全国でもビリの方だよ。他所から来た人を良い時だけ持ち上げて、うまくいかないと、知らん顔して切って捨てる。北海道には甲子園レベルの全国に通じる監督は出現しないだろう。p.180
全くその通りだと思います。なぜリスペクトが足りなかったのか。よそ者だから?
野球の世界でボールは、政治の世界での絵画と同じ性格を持っている。野球の世界ではボールはお金なのだ。誰が画廊の役目をするんですか。スポーツメーカーや運動具店ですな。その1つの中に融通をきかせてくれる人たちがおります。大手メーカーは全国の強豪チームにしっかり食い込んでます。ボールを含めたキックバックがチームの監督や関係者に行くと言うわけです。p.223
ボールは通貨なんですね…。