サブカル大蔵経216 一ノ瀬正樹/正木春彦『東大ハチ公物語』(東京大学出版会)
ハチ公を東大が研究する。
特に、ハチ公が焼き鳥を食べたことの検証として、胃の中から残った串が出てきたとか、主人より焼き鳥を求めていたのは大袈裟な誤解だとか。
そういった東大の考察チームに対して、遠藤秀紀さんが団体内反乱を起こしていたので、その後、著作を買いました。
東大の各分野の先生たちが考察。ハチ公を通して何かを伝えていこうとされる。
いきなり、ギリシャ哲学から。
犬のような生活を理想とするとした犬儒派。アレクサンダー大王に日を遮るからどきなさいと言ったとか。犬のような生活など道徳的に劣った下劣なものだと言う常識に真っ向から異議を挟む態度であるがゆえにシニシズムすなわち皮肉と言う言葉の語源ともなった。p.16
上野博士の死後の詳細な物語。
ハチは秋田から来て病気を半年間繰り返して上野博士自らが看病した。博士の死後、夫人とともに暮らした家では農家から畑を荒らすと近隣の農夫に棒で叩かれ血を流し戻ってきたこともあつた。そのうちハチが見えなくなると知人から渋谷にハチがいると知らせが来た。そしてハチの幸せを考え、ハチがなついてた渋谷の植木職人の小林菊三郎に預けた。駅改札付近にいるハチに、駅員から水をかけられたり、客から邪魔だと蹴られたり、顔に墨で落書きされるなどのひどい扱いを受ける。斎藤弘吉が朝日新聞に投稿し、可愛がられるようになり、7年半通う。p.58
朝日新聞に投稿、掲載されたのが大きかったというか、全てだった。
秋田犬は買収できない。p.72
大館駅に秋田犬代表として、ハチ公の像があった記憶があります。
科博のハチ剥製。胴体の中に封筒。p.97
このくだり、完全に仏像ですよ。
渋谷駅南側稲荷橋付近で死亡。p.102
事件ファイル。
ハチ公、ガンですよ。75年後判明。p.110
死因が判明。どうでもいいことのようこそ真理なのかも。
(以下遠藤秀紀氏の項)命の化け物、ハチ。忠犬に酔いしれる国や社会。ラッシー、百一匹ワンちやん、西洋のイヌ話。犬に手玉にとられてきた。p.148
化けるハチ。
在野のイヌ学者・斎藤弘吉が広めたハチの話は、修身の教科書に取り上げられて、イヌの行動を忠義になぞらえて、時代を背景にした明らかな国家主義教育の一頁に化けていくこととなった。p.153
国はなんでも利用する。その手先は。
大学もイヌ話を消費する。東大も、一パーツ、イヌ話のバイプレイヤーでしかない。苦悩なき表現、力なき言葉、理念なき経営、執着なき演出、知なき宣伝、哲学なき主張。だが、それでもまだ大学は大学でなければならない。否、大学を目指さなければならない。p.161
ハチに呑まれる大学。
八重子夫人は入籍していなかった。都の理解を得られず、青山霊園に合祀されていない。p.201
その後の物語の検証も。
ペット市場は奴隷に似ている。p.216
ペットショップという闇
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