サブカル大蔵経495御厨貴・牧原出編『聞き書 野中広務回顧録』(岩波現代文庫)
徒手空拳ではなく、小此木メモや他党まで広がる人脈、武器が見える武将・野中。
disりと、いい話、大放出。聞き上手。
野中さんが好きな、コーヒーを飲みながら答える姿を思い浮かべながら読みました。
せいぜい中間駅の駅長で終わっていただろう私が、中央政治にも関与するような状態になったのは、偶然の結果ばかりでした。p.7
駅長さん、すごいなぁ。
安倍晋太郎先生は、「よく世間で俺は岸信介の息子みたいに言われるけれど、俺の親父は昭和17年大正翼賛会の時に、それに反対して反戦政治家として出た安倍寛なんだ」と言うことを胸を張って言っておられたことを私は忘れません。そのことを私は安倍晋三君にも申し上げたことがあるんですが、残念ながらそういうお父さんあるいはおじいさんの遺志をついでくれなかったのかな、と言う気がして、今思い出しております。p.63
安倍晋三さんは継がなかったんですね。
青木幹雄さんから電話がかかってきて、野中さん何とかもう収めてくれよと言ってきた。ああいいよ、だけどね、明日の午後3時までに、加藤幹事長のところへ詫び状を入れろと言った。村上さんはあの頃が大将だったからね。p.116
青木と村上を向こうに回してまで上司の加藤紘一を立てる野中。その加藤を斬る。
お前は、初めは外堀から埋めて、最後は真髄にグッと行く。やっぱり野党経験を京都で長いことやって、蜷川を苦しめてきたやり方で、なかなか追い込みが上手だのうp.150
議員へ推挙した竹下登に言われた言葉。
京都が再びおかしなことになるのは、経済界が先導した時だ。そういう警戒心が常にあった。p.159
〈経済界が先導したらおかしな事になる〉という金言。これを読んで、経団連やロビー議員の発言は疑うようになりました。
小此木メモというのはずいぶん効いたなと思いました。リアルに書いてあるんですよ。小此木さんのは面白いんですよ(笑)(そのメモはまだ野中さんはお持ちですか)それはもちろん。だけど、それはあんまり出さん。p.170
あんまり出さん(笑)。小此木さんは、菅総理が秘書として仕えた方。このメモを探せ!って、週刊誌はならないのかな?
僕は伊吹君に、なんで君は海部と書くんだと言ったら、そんなものなんぼなんでも社会党が総理なんて書けませんよ私は、と言う。そんな馬鹿なことをしたら京都で歩けないようにするぞ。p.172
怖〜(笑)!伊吹さんも、同じ選挙区、野中さんが逝去されてから、重石がとれたように偉そうになったような…。そして…
鈴木宗男のところに行って、伊吹君が白紙にするかどうか見てくれと言った。そしたらはい、わかりましたと言っていた。それで後から見たら、当の鈴木宗男が書いてへんのや。村山と書かずに、海部と書いておるんだ。それで、お前、何と言う奴だ。と言ったら、野中さん、社会党にいじめられて、いじめられてきた北海道の人間に、社会党の村山と書けと言うのは酷すぎます。だから野中さん、騙してすまなんだけれど許してください、と言って跪いて謝りおった。それはしょうがないわと思ったけれど、危ないところでしたよ(笑)p.172
ムネオさんとヒロムさんのコントだよ。
僕は騙されたんだ(笑)あいつが僕を騙したのはあれが初めてで最後だ。p.195
嬉しそうに語るなぁ(笑)
対抗馬が小泉さんですね。個人プレーのような感じでしたけれど、何回も出ているうちにほんまもんになって、取り返しがつかない結果になった。p.245
出ているうちに、モンスター化。
橋本さんが僕に、君は橋本というのは味も素っ気もない冷酷な男だと思ってるだろうと言う。そう思ってる、と僕が言ったら、こんなのは言い触らす話じゃないけどな、野中さん、あんたはな、俺によく嫌なことをズバッと言ってくるから、聞いてくれよと言って、今入院してる母親は、俺の母じゃないんだ。大二郎の母なんだ。だから親父がお母さんと呼べと言うけれど、俺は絶対に頑固に呼ばなかった。六つかそこらになった時いっぺん自分で腹を決めて、お母さんと言った。聞いた母親がびっくりして、仏壇の位牌と写真を指して、あんたのお母さんはそこに居ると言った。その時何を言いやがると思った。自分が呼ぶのが嫌で嫌でおったのを、父親がそこまで言うからと思って言ったのに、あんたのお母さんはそこに居ると位牌と写真を指さされた時から、本当に俺は人間が変わった。そして生意気な、いけずっぽい言い方をする人間になってしまったんだ。とやや涙ぐんで僕に話したことがあります。その話を聞いてからは本当に彼を助けてやろうと言う気になりました。僕が最後になってこの人に惚れたのは、そういう問題があったからですね。p.255
橋竜さんにも物語があったんですね…。日本の政治は、野中の直言を聞ける人と聞けない人で、分かれてしまったのかも。
橋本さんは、防衛庁長官は見かけに心が弾むような人がいいんだ。俺みたいないけずの小生意気な奴はだめなんだ。中川君がそうだとは言わんけど。p.259
自虐しつつ中川秀直さんを落とす。橋竜のこのセンスもっと発揮して欲しかった。
それと困ったのは、ブッチホン。総理ね、それはあんた、なんぼなんでも今日質問してくれた人にありがとうと言って、彼の法案について、わかったそれは官房長官と相談してくれとふるのは…。そんなことまで聞いておったら、あんた、身体が持ちませんでと。p.331
質問した野党にもお礼を言う小渕さんと、身体を予言者のように心配する野中。
二階俊博さんは自自連立のテレホンカードを作りましたね。p.347
二階さんの名前が出るかと思ってたら、テレフォンカード!陰湿なイメージはなく、二階さん、明るい人なのかな?
過去のわだかまりを取る役目をやってくれた人はおります。第3者です。わかるでしょう、劇団四季だから。p.362
小沢さんとの間に入った浅利慶太さん。
青木さんは葬儀の時、竹下があるのは私と2人でやったんだということ、いやに力んで言ってたね。みんな、あまり良い気持ちで受け取らなかったんじゃないですかね。これからの島根は俺がやるんだと言うことがにじみ出ていたと思います。p.405
青木さんのこと認めてなかったんだ…。
古賀誠さんが僕の本当の戦友でした。p.461
古賀さんとムネオだけが野中人脈で残った。菅総理もその系譜だったのだが…。
(飯島秘書官については?)それは秘書官としては立派だったけれど、総理を笠に着て権力を行使するという男だったと思いますね。田中真紀子やめさせるためには、鈴木さんに議運の委員長を止めてもらうしかありません。ひとつご了承と言うから、俺が了解する話と違う。君は何の資格で来たんだ。これは本人の問題であり、貴重な問題だ、君はどんな資格なんだと言ったら、あーとか言って小さくなっていたけどね。p.471
飯島さんの著作を読んだばかりなので、立場や人で見方が変わって、面白いです。
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