サブカル大蔵経501伊藤博康『決定版 日本珍景踏切』(創元社)
踏切の良さは〈音〉と〈待たされること〉だと思っています。
地元の宗谷本線にも踏切がありますが、本数が少ないため、カンカンという音を聞けると、ラッキー。
あの音は、世界遺産にしてほしいくらい。
人や車を強制的に待たせて時間を止める。信号よりも不規則だからドラマチック。
日常で立ち止まれる貴重な機会。
もともと異文化である鉄道と道路が交差する箇所だからこそ、そこに個性が生まれる。p.2
その踏切の特異さが映し出す全国の風景をおさめた写真集。音と強制待機のない写真だと臨場感が湧いてこないのと、北海道が皆無なのが残念ですが、労作です。
【伊予鉄道高浜線】(梅津寺〜港山)右・左の安全を確認後、遮断ざおを押し上げてご通行願います。p.31
踏切という危険性の高い場所とふんわりした警句のギャップがたまらない。
【西武鉄道新宿線・西武園線】(東村山〜所沢・西武園)ぺチッ!と道を叩く遮断かん。いまも竹が多く使われている。p.36
あれは竹なんだ…。
【江ノ島電鉄】(鎌倉高校前〜七里ヶ浜)「スラムダンク」にこの踏切が登場するため、同作品のファンが聖地巡礼として訪れるのだという。p.72
私は『スラムダンク』ではなく、『恋風』を思い浮かべました。
【JR東日本常磐線・東武鉄道伊勢崎線】(北千住〜南千住・牛田)上も下も奥も手前も電車。奥が東武伊勢崎線。手前が常磐線。高架上が東京メトロ日比谷線。いちばん上がつくばエクスプレス。地下を東京メトロ千代田線。いかに便利な地かわかる。p.83
北千住が日本の中心にならないかなぁ。
【JR東日本奥羽本線(山形新幹線)】(羽前千歳〜北山形)。在来線と新幹線が踏切で平面クロス!保線関係者に向けて「ちょっと待て!!」の注意看板。p.130
交わるはずのないものが交わるロマン。細野不二彦『東京探偵団』で、山手線列車が連結して環状を脱しようとするシーンが思い浮かびました。