サブカル大蔵経701のりす・はーぜ『神の子羊』全三巻(光風社出版)
『一度きりの大泉の話』の中で、〈大泉サロン〉の中心人物として登場する増山法恵さんの単行本です。
1994年発行。『風と木の詩』の角川書店版を読み終えた頃、えげつないタイミングで店頭に並んでいました。即買いして、結局30年間読まないまま現在に至ります。
『風と木の詩』を再読した時、読もうと思います。
とりあえず、一巻の竹宮惠子の推薦文、二巻の石原郁子氏の解説、三巻の自身によるあとがきを読みました。
あと、本書の竹宮惠子の挿絵が尋常じゃないレベルで、『風と木の詩』の連載時よりもさらに神々しく見えました。
「のりす・はーぜ=増山のりえに言いたいこと」竹宮惠子
増山のりえは、結構書ける人である。しかし、おもいっきり高い理想と激しい自己卑下のヘキのせいで、しょっちゅう進退ならなくなってしまう。困ったもんだ。世の中ずうずうしく生きなくちゃ、したいことの半分もできやしないっていつも言ってるのに。一巻p.265
〈ずうずうしく生きる〉ことの背景。この一言からいろんなことが想像されます。
というわけで、この本を推薦します。「風と木の詩」と「変奏曲」(当然ご存知の方も多いと思いますが、「変奏曲」は増山の原作作品です)の世界が適度に混じり合った、まるで増山と私の20年間のようなハーモニーの「神の子羊」を可愛がってやってください。一巻p.266
〈20年間のようなハーモニー〉の中には、二人以外はいないのか。
解説 石原郁子
増山のりえさんというブレインがいらっしゃるということは、ファンのあいだで既に伝説になっていました。/最初はセルジュとジルベールを求めて、でもいつのまにか、増山さんの創造なさった、まったく独自な新しい世界の魅力に、すっかりのめり込んでしまったという人、私だけではないと思います。二巻p.257
当時この解説文で増山がどういう存在なのかを知りました。
あとがき 『風と木の詩』のファンの方々から、お叱りの言葉が、飛んできそうだな、と不安でした。/その後のセルジュ・バトウールの生涯を描くという精神的余裕が、無くなってしまったのです。竹宮惠子からは、「『風と木の詩』の後半部分は、あなたに任せたんですからね。」三巻p.310
竹宮は『海の天使』で後日談を描く。
「あなたは、少年よりも少女を描く方が、ずっと上手だわ」三巻p.310
少年とうわごとのようにつぶやく人が、まさかの批評。結局増山のりえは、少年よりも少女側にしか立てなかったのか?
無愛想ながら、いつも的確なアドバイスを述べてくれた友人の竹宮惠子(あ、そうだ挿絵も描いてもらったんだ、この人に)氏。私が小説を書くことを、まるで自分のことのように喜んで、いつも励ましてくれた佐藤史生氏と、いとうあいこ嬢。三巻p.312
竹宮惠子と佐藤史生への謝辞