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サブカル大蔵経545江永泉、木澤佐登志、ひでシス、役所暁『闇の自己啓発』(早川書房)

雑談にもいろいろありますが、時代が呼び寄せた、人外のクラブハウスの読書会の文字起こしのよう。ほとんど飛ばし読みしてしまいましたが、世の中には博学な人がいるんだなぁと、久々感じられただけでも嬉しいというか、頼もしかったです。題材のテキストに新書が選ばれていたのが意外で嬉しかった。新書の可能性を再確認。

本書で印象的だったのは、冒頭と末尾の二か所。

「自己啓発」されていく時、私たちはだんだんと、社会に都合の良い「人形」に姿を変えてはいまいか?p.4

書店でいつのまにか棚を占めている自己啓発コーナー、そして、ロングセラーとしての『ファクトフルネス』。

教えを説くには、まず聞き手を従順にしなければならない。教育を低労力で達成するためのひとつの手段は、支配関係を導入することだ。たとえは、大人と子供。ー『ファクトフルネス』の著者は、初めに読者を「チンパンジーにすら勝てない」存在に仕立て上げてから、読者に「子供のよう」な心構えで読み進めるように指示を出す。p.398

これだけ博学な方々が、立ち止まって考える上で唯一頼りになるのは〈読書会〉だとの提言も印象的でした。

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墨家の、主君や家族を愛するとかイデオロギーやんけ、と批判するところには、人類種の特権視は有害なイデオロギーだから撤廃せよと迫るタイプの、ある種の功利主義的な種差別批判と同じようなすごみを感じさせられます。p.83 

 中国思想の新たな見立て。危険な墨家。単なる礼賛でない見立てこそ、現代に諸子百家を蘇らせる、今のための思想。

日本にはちゃんとした宗教がないからサンマーク出版とかが伸びる余地があるんですよね。p.129

 これも書店での漠然とした疑問でした。サンマーク書籍のテーマの〈願いが叶う〉や〈健康〉の闇を感じながら、買いたくなるのは何故か。隙間というより、もう必須の地位か。実は一番人に寄り添っている出版社はサンマーク出版なのかもしれない。

地球と言う制約を外すなら、宇宙に快楽漬けの知性体を可能な限り敷き詰めて、空間を埋めていくのが理想と言うことになりそうですね。p.218

人間だけでなく地球の制約もはずす思考。

ある意味で一種のダンス映画ですしね。p.226

 映画「Joker」を見る補助線。

【ひで】AIとかロボットに代わりに社会をやってもらったら良くないですか?人間には、歴史から退場してもらえばいい。【暁】でも、ロボットも人類が生み出したもので、その文化の後継者とも取れるので系譜としては続きと言うちゃうのかな。【江永】仏教でも、諸説あるらしいですが、一説には釈迦が輪廻転生からの解放を唱えたと論じられたりしているらしく、これって「系譜原理」の徹底的な切断かもしれないと思わされます。【木澤】仏教は畢竟すればEXITの思想かもしれないですね。p.378

 なるほど…仏教はイグジットかぁ!輪廻からの解脱とは何なのか、あらためて考えたい。ジョジョ!俺は今から人間をやめるぞ!!DIOもゾンビも解脱だったのか…?

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永江雅邦
本を買って読みます。

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