サブカル大蔵経394ジャック・ケッチャム/金子浩『老人と犬』(扶桑社文庫)
馳星周の直木賞受賞作『少年と犬』繋がりでの?復刊。ケッチャム作品の中でこれだけ未読だったので再刊ありがたいです。
C・イーストウッドの映画「グラン・トリノ」を思い出す内容。非道な少年たちに鉄槌をくだすために、動かない法律を動かすために、命を賭した決死の方策と行動。
確実に、他の作家にはない「何か」がある。p.271
的を得た中原昌也の解説。なぜケッチャムの掌篇は人を引き込んでいくのだろう。
いい犬だった。ほんとうにいい犬だった。体にはまだ温もりが残っていた。p.27
抑えた筆致が、怒りと悲しみをより伝えさせる。
フェアじゃないのはわかってる。なにからなにまでフェアじゃない。だが、それが法律なんだ。p.64
法とは何か。法の欠陥。韓非子の修正。
だれがだれになにをしたのかをはっきりさせたいだけなんです。p.202
たったこれだけの被害者の思いが報われない現実。理不尽のたたみかけ。
あなたはその子に、使えるだけの時間を使って与えられるだけのものを与える。その子も同じことをしてくれるはずだわ。それでこそ、立派に生きたといえるのよ。/この新しい命と出会ったこと、そして自分も子犬も、連綿と続く魂の一部であることがラドロワに涙を流させているのだった。p.269
老人と犬と輪廻と。
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