サブカル大蔵経537山口謡司監修『偽書が生んだ異端の日本史』(メディアソフト)
真かと思えば偽。偽かと思えば真。真偽の境がわからなくなってきました。真偽を超えて楽しめれば良いのだが、そこにからむ利害と怨念。プロレスと『ギャラリーフェイク』を想う。
メディアソフトのムックは、編集者の姿勢が冷静で、筋が一本通っている印象です。
なかには、あれだけ膨大な「和田家文書」をたった1人で構想し、書くことが本当にできたのだろうかと、新たに推理をする者もいる。p.23
以前ご紹介した『東日流外三郡誌』も掲載されています。解決したと思ったら、そういう推理もあるんだ…。斉藤光政『戦後最大の偽書事件「東日流外三郡誌」』を読んだ時も、少し引っかかっていたことです。
戸来村では、国立公園指定に外れ、新たな観光資源を開発するため、当時、中央画壇で活躍していた鳥谷に相談した。p.26
国立公園から外されたことが偽書を生みだし、キリストの墓という〈観光地〉が生まれた。
弾圧された『九鬼文書』新興宗教の勢力争い。p.34
九鬼家と大本が本部を置く綾部幻想。また山陰本線で行ってみたい。
偽書としての『古事記』。古事記の信憑性は果たして、何によって担保されてきたのかというと、やはりそれは王権との問題だろう。/時の権力、そして人間の野望によって作られると言う意味では、その政策のプロセスは偽書と大差がないことになってしまう。p.48
歴史とは、史料を基に研究し、仏教も経典を基に伝道したり研究するわけだが…。
鎌倉時代『平家物語』。その頃には聖徳太子の予言書の存在は広く知られていた可能性が高い。『太平記』では、楠木正成が聖徳太子の『未来記』を読んだとする記述がある。p.51
楠木正成と聖徳太子。親鸞聖人と聖徳太子の関係と似ているか?
すなわち、清国の6代目皇帝である乾隆帝が「朕の姓は源で、義経の子孫。清和源氏の出身だから国号を清と定めたのだ」と。p.60
元のジンギスカンだけでなく、清の乾隆帝まで及ぶ義経幻想。よほどその後の時代がつまらなかった裏返しなのか。
すべてがでっち上げ!西洋人が騙された「台湾誌」。サルマナザール。p.92
種村季弘『アナクロニズム』でも紹介されていた偽台湾。
ホロコーストの原因となった史上最悪の偽書『シオン賢者の議定書』。偽書がプロパガンダとして、時の為政者の願望や欲望に沿って使われた史上最悪にして典型的な形であると言えるだろう。p.103
民族や宗教を政治が利用する時の根拠はよほど監視しないと危ない。そう言ってる私が一番騙されている。
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