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プロダクトデザインの醍醐味|カラフルなHAKO と 寄木のTRAY(HC28)

HC28のための商品開発である。社長の厉さんは家族もパリ在住の中国市場のための会社だからセンスがいい。株主もフランス人も何人か参加しているようだ。ただ、商品である家具のテイストが僕のデザインとずれている。突出したデザインではなく売りやすいマイルドなデザインであり、僕のデザインはちょっとずれているから家具はあまりデザインしないことにしている。茶のテーブルだけは高額なのによく売れている。そこで小さいものを時々デザインしている。

プレゼントのための箱をデザインしろという。デザインができて商品となってみるとプレゼントを容れる箱にはちょっと難がある。使い方は分からないのだが、きれいだから売れるだろう・・・と勝手な考えをしているのだが結果は知らない。

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木の箱なのだがその厚みの中に強力な小さいマグネットを仕込んでいる。だから雄雌になっていないのだが、同じディテールの箱がサイズだけ合わせるとパチっと閉まる。
見た目の色彩とパチっと閉まる感覚とで箱なのだがデスクの上や飾り棚の上にそれなりに居場所があるのじゃないかと思っている。遊び心のデザインだ。デザインしてから使い方、売り方を考えるやり方だ。

もう一つはトレーである。別のチャンスだったのだがトレーがほしいという要望だ。パワーポイントに12角形のメニューがあるのでそれを使ってデザインを始めた。12角形は時計も12だし、十二支だってある。ゾディアックには黄道帯の意味があるが黄道一二星座の意味もあって神秘的である。12角形からデザインを初めて、寄木のデザインを数案提案して二案ほどを製品化した。評判は良かったのだが、家具にしろこのような小物にしろ消費者は飽きやすいのかどんどん入れ替えが起こる。今でも売っているのかどうかは分からない。

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技術がどんどん進歩する領域では一年に何回もデザインが変更になる。もちろん性能も変わる。自動車もそうだし、カメラもデザイナーには寂しい限りである。僕のデザインしたリコーのカメラは当時まだ学生だった息子が自慢気に「父のデザインだ!」と使っていたのだが、新型カメラの液晶が大きくなり性能も上がっていくと、新しいタイプに買い換えるといいいだす。キャノンの僕の友人は自分のデザインがどんどん消えていくのを寂しがっていた。

その点、機能が曖昧なプロダクトデザインと称する領域ではデザインが長命だ。僕のゴムのテーブルウェア、GOMシリーズはG-MARKの長寿商品として表彰されたのだが今でも販売している。もう50年ほど続いている。
永久に美しさの変わらないデザインがしたいと思っている。「新しいデザイン」ではなく「深いデザイン」を主張しているし、100年経過しても美しさの変わらないデザインを探しているつもりでもいる。

人間は進歩してはいないし、これからも進化もしない。新しい時代の環境に適応することはあっても、それは進化ではない。生物は猛烈なスピードで自己のDNAをコピーしているのだが偶然のミスコピーが変異となり、環境への適応性のいい変異が生き残って栄えていく。新型コロナウィルスがそれである。結局は進化はしない人間なのだから、デザインも時代への適応はあっても長寿な筈なのだ。僕のGOMは新しいデザインを目指さず深いデザインを探してきた成果なのだと思っている。

HC28も、新作をつくらないで適応させる工夫をするといいのに・・・と思っている。

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《黒川 雅之》
愛知県名古屋市生まれの建築家・プロダクトデザイナー。
早稲田大学理工科大学院修士課程卒業、博士課程修了。
卒業後、黒川雅之建築設計事務所を設立。
建築設計から工業化建築、プロダクトデザイン、インテリアデザインと広い領域を総合的に考える立場を一貫してとり続け、現在は日本と中国を拠点に活動する。
日本のデザイン企業のリーダーが集う交流と研究の場 物学研究会 主宰。

〈主な受賞歴〉1976年インテリアデザイン協会賞。1979年GOMシリーズがニューヨーク近代美術館永久コレクションに選定。1986年毎日デザイン賞。他、グッドデザイン賞、IFFT賞など多数。

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タイトル写真:調査中


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