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三角のテーブル | テーブル展のための作品

人は堂々と人と向き合えばよさそうなものなのだが、攻撃するときは別として、普通にいるときは人と真正面で向かい合いたくない。これは僕の感覚なのだが、きっと誰だってそうだろうと思っている。
悪いことをしたわけじゃないのだが、人をじっと見つめるのも変だし、会話しないで向かい合うのはバツが悪いものだ。

彼女だったとしてもじっと見つめ合うのは辛いし、目をそらしても他意があるように誤解される。ま、できればちょっと斜めの関係がいいなと僕は思っている。目はお互いに衝突しないで通り過ぎる。話したい時だけ目を合わせるのがいい。人間と人間の関係はいつも微妙である。
コロナのためにソーシャルディスタンスという概念が流行ったのだが人間関係には昔から適度な「間」が大切だと教えられている。

他人なしでは人間は生きられない。一人では生存できない。そんな人間関係をテーブルで捕まえようとしたのだ。
三角形のテーブルである。人は決して向き合うことがない。まっすぐ座っても視線がずれるようになっている。このテーブルで呑み食い会話していい関係が生まれそうである。

三角形だと尖った形になるから一辺がカーブしている。カーブした線が三角形をつくっている。それだと優しい関係になる。三角関係のトラブルにはならない。

このテーブルのデザインはもう十数年前なのだが「脚」への配慮が足りない。脚とは柱でもあり、本当はいちばん大切な部位のはずである。
その後のデザインではこの脚のデザインに真剣である。建築なら柱に重要な意味を見つけている。

ついでに柱の話をすると、柱は日本の建築では神の宿るところである。神を数えるのに1柱、2柱というのはそこから来ている。書院造は柱を樹林と同じ感覚で配置している。霊魂が宿るところとして柱を捉えているのである。聖性をもつ柱とテーブルの脚は通じ合っている。これは勝負のしどころである。

人間関係を支配するテーブルの形とその脚について考えたデザインの例である。

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《黒川 雅之》
愛知県名古屋市生まれの建築家・プロダクトデザイナー。
早稲田大学理工科大学院修士課程卒業、博士課程修了。
卒業後、黒川雅之建築設計事務所を設立。
建築設計から工業化建築、プロダクトデザイン、インテリアデザインと広い領域を総合的に考える立場を一貫してとり続け、現在は日本と中国を拠点に活動する。
日本のデザイン企業のリーダーが集う交流と研究の場 物学研究会 主宰。

〈主な受賞歴〉1976年インテリアデザイン協会賞。1979年GOMシリーズがニューヨーク近代美術館永久コレクションに選定。1986年毎日デザイン賞。他、グッドデザイン賞、IFFT賞など多数。

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タイトル写真:調査中

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