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スイスの企業との仕事 | セクレタリーボックス 1987

集成材にメラミンシートを接着してパネルをつくるノウハウをもったスイスの企業から家具の設計依頼がきた。ヨーロッパの企業からの依頼は楽しい。ついでに色々見たいものがあるから打ち合わせに出かけるのも大歓迎だ。Zoomもない頃の話だし、インターネットでの相談もできないのだから図面を郵送して飛行機で出かけて打ち合わせたり試作品を見たりするのだ。

数年前だったかそこの社長に会うことになった。山に素晴らしい別荘を持っている。ビジネスが成功していたのだろう。WOGGという名の会社で、
担当だった社長の弟の自宅でチーズフォンデュをごちそうになったり、楽しい思い出がいっぱいある。インターネットがない時代はまたいいものだったなと思う。

いろいろ提案して、キャビネットをつくることになった。WOGGの提案で収納ではなくセクレタリーのためのボックスになった。箱が開放されると劇的に空間が飛び出してきて面白い商品ができたなと思うのだが、どれだけ売れたのかは知らないままである。

この箱の仕掛は僕の提案なのだが卍の形にジョイントが展開する特殊なアイディアである。だからなんでもない板が基本材4枚とドア用が2枚と上下の支持材が2枚で基本の箱ができる。しかもナットが埋め込まれていて、シンプルな板なのだがそれが卍に合わさるとボルトだけで接合されて箱ができる。

このWOGGは友人だった大島優子さんに紹介して彼女の会社が代理店になって日本で販売していたのだが、その後どうなったのかは知らない。僕はこのような構造体のシステムのアイディアを考えるのが大好きである。アルミニュームの引出し材を基本素材にした棚のシステムや、アルミニュームの板材による本棚のシステムや、建築のシステム、SYSTEM-CUBEもこの卍のジョイントである。

僕の仕事のテリトリーは広い。工場生産建築の開発は新日鉄や日鉄カーテンウォールや小松製作所などとやっていたし、普通の建築から家具や室内の設計、プロダクトデザインなど仕事の対象は「都市|建築|家具|道具|器具」に広がっている。それに研究会の組織化や理論研究までなんでも試みてきた。

今、それを総合するデザイン論を「原初思想」としてまとめている。都市論から建築論、道具論にまで広がる思想体系を目指している。

P0350WOGGíI(HAKO)_001 - コピー

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《黒川 雅之》
愛知県名古屋市生まれの建築家・プロダクトデザイナー。
早稲田大学理工科大学院修士課程卒業、博士課程修了。
卒業後、黒川雅之建築設計事務所を設立。
建築設計から工業化建築、プロダクトデザイン、インテリアデザインと広い領域を総合的に考える立場を一貫してとり続け、現在は日本と中国を拠点に活動する。
日本のデザイン企業のリーダーが集う交流と研究の場 物学研究会 主宰。

〈主な受賞歴〉1976年インテリアデザイン協会賞。1979年GOMシリーズがニューヨーク近代美術館永久コレクションに選定。1986年毎日デザイン賞。他、グッドデザイン賞、IFFT賞など多数。

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タイトル写真:調査中

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