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規制権限の不行使(2) 判断構造-水俣病関西訴訟判決を素材として-

 前記事では、規制権限の不行使の判断基準を概観した。歴史的にみると規制権限の不行使が問題となったのは、公害訴訟がその走りであった。そこで本稿では、水俣病関西訴訟判決を素材として、違法性判断の構造を検討したい。 1.水俣病関西訴訟判決の概要水俣病関西訴訟判決(最判平16.10.15民集58.7.1802頁)は、 と、権限の不行使が国家賠償法上の違法を構成する場合の一般論、定式を示した後、著しく妥当性を欠くかという判断の認定で以下の通り判示した。 と、①行使すべきであったこ

国賠訴訟における規制権限の不行使(1)

1.はじめに  先日、福島原発事故で被害を受けた住民が国を訴えた裁判の最高裁判決(判決文は左リンク参照)があり、一般ニュース等でも大きく取り扱われ、注目も集めた。 原発事故、国の責任否定 最高裁「対策命じても防げず」: 日本経済新聞 福島第一原発事故で国の責任認めず 最高裁判決をどう見る?:NHK この判例について言及する前段階として、そもそも国賠訴訟における規制権限の不行使を問う国家賠償訴訟はどのような基準で判断されるのか。概観したい。 本件で国に対し損害賠償を求める