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歌うように、文章を書きたいと思うの。
ふと気がついたんだけど、どうやら私はあらゆる文章の中でも、歌の歌詞が特にグッと来るらしい。
昔から歌を好きになる基準はメロディラインよりももっぱら歌詞で、恥ずかしながら子どもの頃はシンガーソングライターの真似ごとで歌を書いたりもしていた。
日常的に本を読んでいる私だが、実はあまり小説は読まない。
だが、エッセイや詩集は好んで読むことが多く、その人ならではの言葉遣いを感じるのがすごく好きなのだ。
歌の歌詞も、それとよく似ている。
絵本の物語のような歌詞、文学的な歌詞、言葉遊びをするような歌詞、どれもグッとくる。
ということで、今日は特に好きな歌詞をいくつか紹介してみようと思う。
風の来ない海で
言葉をもたらせるのは誰?
時のない世界で
今日という日はもうこないから
この時間この思いこの空気
風船につめこんで飛ばしたら
明日の空が見える
私の小学生時代からの推しアーティスト・RYTHEMの歌詞は天才的。
まさに「絵本のような世界」を歌で表現するアーティストで、RYTHEMの歌はいつも淡いパステルカラーのイラストが目に浮かぶ。
そんなRYTHEMの歌から、もうひとつ紹介。
人の手は
悲しい人を包むためにある
人の手は
愛を包むためにある
この歌詞を書いた当時のRYTHEMは、なんと高校生。
なにを食べて、なにを見て育てば、JKでこんな素敵な歌詞が出てくるの?っていつも不思議で仕方ないのよ。
本当に表現が天才的なアーティストだから、みんなに全力でおすすめしたい。
続いては松田聖子さんのこちら。
恋する切符を 手にいれたこの渚で
ひとつのソーダに ストローが二本揺れてた
なんかもう、ため息が出るような美しい歌詞で。
あまり小説を読まない私だけど、この歌詞はなんだか小説っぽいな、と感じてしまうほどに情緒的というか文学的というか。
この歌詞を聞くたびに、夕暮れの浜辺でストローが揺れるセピア色の映像が脳内再生されるのよ。
君がくれたプレゼントは
このやけに優しい世界だ
髭男は、言葉遣いが独特で好き。
「やけに優しい世界」って、普通言わなくない?
こんな表現が出てくるなんて、幼いころどんなものに触れて育ったんだろう。
仮初めまみれの日常だけど
ここに僕が居て あなたが居る
この真実だけでもう 胃がもたれていく
「仮初め」も「胃がもたれる」も、言葉としてはなにも珍しくないのよ。
でも、歌詞に入れようとはなかなか思わないじゃない??
でも「なにかいいこと言ってやろう」感とか「かっこいい言い回ししてやろう」感がなくて、身体にスっと入ってくる。
もともと私自身、歌を歌うのが好きなこともあるけど、やっぱり歌の歌詞が文章としてすごく好き。
残念ながら今世の私に歌の才能はなかったけれど、来世に生まれ変わって幼いころの夢が叶うなら、歌を書いて歌いたいと思うほど。
そして言葉を紡ぐ今の私は、歌うように文章を書けるのが一番の理想だと思ったりするのです。