伊藤取締役・角田社長 対談レポート|MKIオープン社内報
こんにちは、三井情報(MKI) 公式note編集部です。
先日、MKIの公式YouTubeチャンネルで新しい対談動画を公開しました🙌
今回記事は、MKI 伊藤 取締役とLegalForce 角田 望 社長との対談レポートです。記事最後にある動画と共にお楽しみください♪
弁護士とリーガルテックの企業経営と
今回の動画では伊藤取締役がLegalForce 角田社長と対談した。社外の方との対談は、「浅野社長・寺島学長対談」「浅野社長・西野氏対談」「蒲原副社長・田中先生」「成田部長・近理事・伊藤真利奈選手」に続く、第五弾。
伊藤取締役は、三井物産法務部でAI契約審査プラットフォーム「LegalForce」を4年前に導入したことがきっかけで、角田社長と知り合う。
LegalForce社は、リーガルテック分野で革新的なDXサービスを提供する、いわゆるスタートアップ企業。角田社長は、国内最大手の法律事務所の弁護士だったが、独立するにあたり、法律事務所とリーガルテック企業を立ち上げた。弁護士の傍ら、急成長するスタートアップ企業を率いる。各方面のメディアにも登場し、注目されている。その志の高さ、仕事への向き合い方、社会に対する価値提供などに、対談を通じて、多くの方が共感すると思うとのことで、今回の対談ゲストとして角田社長をお迎えした。
LegalForce社、創業のきっかけと優れたサービス
伊藤取締役 LegalForce社のAI契約審査プラットフォーム「LegalForce」は、現在、三井物産の法務部でも、当社でも導入中。すっかり「LegalForce」のヘビーユーザでもあるが、改めて、LegalForce社とその素晴らしいサービスを説明してほしい。
角田社長 LegalForceは、2017年、「全ての契約リスクを制御可能にする」をミッションに創業した。契約は締結すると、そのまま権利義務が確定される。契約書は紛争時には証拠となるため、契約締結前は目を皿のようにして、文面チェックをする。見落す不安が付きまとい、生産性も決して高くない。このような契約書のリーガルチェックの負担を軽減する。また、法務×テクノロジーを通じて、社会への価値提供もできるのではと思った。
現在、LegalForce社の社員は創業6年で400名くらい。投資家から資金調達し、人材採用や開発、マーケティングなどに投資するいわゆるスタートアップ企業。
伊藤取締役 弁護士として、契約書の文面チェックや管理業務における課題を感じていたとは思う。ただ、ユーザとして便利なサービスが欲しいとは思っても、ベンダーとしてそれを提供しようとは思わない。すごいエネルギーだと思うし、どのような思いがあったのか。
角田社長 創業を志した2016年当時は、AIブーム。海外の法律事務所がAI弁護士を採用するというニュースに衝撃を受けた。自分たちのアナログな仕事を何とかしたい気持ちから、AIへの好奇心が湧いた。それがきっかけ。
AIで何ができるのか、最初はわかっていなかった。AIが裁判官にはなれるわけでもなく、人間の知性や知能に置き換わるのは無理だと学ぶ。しかし、AIは大量情報を扱うツールとしてとても便利。何でもできるわけでないが、サポートツールとして優れている。
伊藤取締役 契約書は人が書かねば・・と、AI活用への抵抗感もある。三井物産でも本当にAIが役立つのか、「LegalForce」導入時には、検討にかなりの時間をかけた。
角田社長 AIに過度な期待を持つと、失望する。いまは、AIが何でもできるといった感じはない。ガートナーのハイプサイクルのように、本格的な普及期に入るには、過度な期待が無くなる必要がある。
伊藤取締役 契約書業務の全部を賄うのは無理。「いいとこ取りすれば、絶対楽になる、効率が上がってくる」といわれ、それから、ぐっと使えるようになった。使う目的が大事。
契約書を読み込んで、文言追加するなどにはとても便利。企業法務の仕事はそれ以外にもある。うまく切り分け、企業法務を強くする仕事に注力する。自分たちも企業法務を整理するきっかけになった。客先からの反応は?
角田社長 「LegalForce」導入によって、生産性と共に、契約書の質が上がったと言われることが本当にうれしい。もちろん、厳しい意見も真摯に受け止めている。
伊藤取締役 どのくらい「LegalForce」が役立っているか。省力化でもスピードアップでもいいが客観的に評価しづらい。効果を計るために、何か、良いアイディアはある?
角田社長 契約内容は一件毎に違うので、単純に比較できない。同じ契約書を30分と時間を決め、「LegalForce」と人手でリーガルチェックしてみると客観的な比較が可能かも。
伊藤取締役 なるほど、一度やってみようかな。
企業風土や目指すべきミッション
伊藤取締役 LegalForce社には弁護士資格も持つ方もかなりいるようたが、人材を集めるのは大変では?
角田社長 LegalForce社の社会的な価値や思いを込めて話す。また、サービス開発に興味を示す弁護士もいる。法務キャリアから外れても、社会への貢献、それにやりがいを感じる人が確かにいる。
伊藤取締役 LegalForce社はスタートアップ企業としてどのような感じか。
角田社長 ストイックなスタートアップ。果たすべき責任を意識し、期日まで成果を出すことを大事にする。社内はフラットな雰囲気であり、そうすることで、成果に直結し易いと考えた。ルールは極力少なくし、しっかり結果にコミットする。
伊藤取締役 顧客へのコミット、マーケットへのコミットとは?客先の契約リスクを軽減するという点では弁護士と同じだが、違いは?
角田社長 契約リスクを減らす。生産性の向上に寄与する。空いた時間を、企業を守るための企業法務の強化に力を注ぐ。そのため、「LegalForce」サービスの質を上げていく。
弁護士はオーダーメイド、カスタマイズでベストな解決に導く。「LegalForce」はあらゆる契約に対して、リスク回避のための土台を提供する。土台を提供することで中小企業も含めた様々な会社のリーガルリスク対応の底上げを図る。その土台をステップとして弁護士や企業法務担当者を通じ、より高度なリーガルサービスが社会に提供されることを期待している。
締結後の契約書に潜むリスクにも
角田社長 契約締結までは一生懸命だと思う。しかし、契約締結後の管理は手薄になっている企業も多い。締結後の契約書に潜むリスクには、どれだけの注意が払われているのだろうか。契約書を保管すればよい、という発想から転換することが重要。
例えば、不要な契約を更新し続けることで、余計な支出を強いられたり、契約上の義務にうっかり違反して信頼を失ったり、契約上の権利を行使せず機会損失したり。
契約は権利義務を表象する、それは資産ともいえる。更新や終了期日を把握することが重要だが、企業全体の契約書が数百、数千となると、人手で把握するのは難しい。これを管理することができれば、更新時に不利な条項を交渉するなど戦略的に動ける。
伊藤取締役 契約締結後のサービスというと、検索や保存のあたりかと思いがち。クレームが来てから倉庫から持ち出すだけでは・・。そのリスクに向けて対応すべきだと思う。
角田社長 テクノロジーと人には、それぞれ得意領域がある。特に、AI は情報処理、数多くの契約を一元化して台帳をつくるのが得意。「LegalForceキャビネ」は、それを実現している。契約書を放り込むだけで、AIでスマートな契約管理ができる。テクノロジーに頼るべき。
これからの契約のあり方
伊藤取締役 「LegalForce」のCMを見たが、法務関係者にはキャッチーだった。特に最後の決め台詞の「及び、並びに」は絶妙。ここは「及び」なのか「並びに」なのか、どちらの文言を使うべきか、それは「LegalForce」にお任せと。自分も、このあたりはこと細かに教わってきた世代。今はそういう時代じゃないと実感させられる。
角田社長 自分もこういった法律的な文言には愛着ある。一方で、個人的には、いつも指摘され、負担感も大きかった。
伊藤取締役 「LegalForce」は、AIによる契約書自動検討サービスでは国内No.1。顧客も2,000社を超え、すっかりスタンダードに。AIサービスはもっと先かと思っていたが、革新的。「LegalForce」「LegalForceキャビネ」の次に来るものは?
角田社長 スマート・コントラクトの世の中になれば、最初から機械がプログラミングで契約書を自動作成する。「LegalForce」のようなサービスは不要になるだろう。その時、どうなるのか。技術の進歩に対して、常にアンテナを高くしキャッチアップしていく。
伊藤取締役 NDAの統一規格化を目指し、個別・独自の秘密保持契約はしないという、「OneNDA」のような動きもある。また、例えば、インコタームズ(Incoterms)のように、条件を標準モジュール化し、それを組み合わせることで、契約書を作るとか。その分、契約の実交渉に時間がかけられる。
角田社長 そういう時代もくるかも。どう仕掛けるか、どのようなステップとなるか、考え始めると切りがないが、そのような変化に後れを取らず、意識していく。
企業の社会貢献について
伊藤取締役 いま、企業の社会貢献、サステナビリティを強く求められている。SaaSでリーガルサービスを提供する企業としては、どのように考えているか。
角田社長 企業の社会貢献は、社内でも随分話題に上る。ただ、契約書にまつわるサービスを提供している会社の割には、契約書の意味合いについて、社員の多くが意識していない(笑)。法務経験のない、開発系や営業系の社員も多く、契約書リスクといってもピンとこない。まずは、自社のサービスの意義を丁寧に説明し、理解してもらうところから始めている。
「事業」とは価値交換の繰り返しで、それにより、企業価値が高まる。しかし、その交換に当たり、何が起きるかわからない。この不測の事態をコントロールするのが契約。社会における経済活動は各企業の事業で成り立ち、それを構成するすべての事業にはリーガルサービスが必要。当社のサービスはその一部であり、社会の経済活動を下から支える役割を担っている。
また、法務機能など、企業内のコーポレート機能の進化も支えていきたい。コーポレートの力で、各企業が事業を安心して伸ばせるように。コーポレート部門はもっとアグレッシブに。例えば、法務が責任を取って、事業を後押しする場面があってもよい。
伊藤取締役 ICT企業である当社の場合、IT、DXによって、客先が業務の生産性を上げ、本業に注力でき、業績が上がることがうれしい。顧客が本業を通じて社会に貢献することで、間接的に当社もそこに貢献できると考えている。一方で、コーポレート部門が強くなければ、企業は強くならないという点は同感。コーポレート機能を高めて、会社を強くし、結果として社会にも貢献する。それを常に意識しながら仕事をしていきたい。
ICT企業は大抵の業界と関係する。今は、ICTがないとビジネス展開がままならない。それを支える責任もある。それと共に、何か、新しいものを作り出していきたい。今日の対談で、リーガルサービス、モノづくりへの情熱を感じ、とても共感できた。
最後に
対談後、角田社長は「会社が大きくなったことで、会計やCRMなど社内システムをどんどん変えていかないといけない。SaaSの組み合わせだが、ほんとうに大変」と、急成長が故の苦労も話す。
角田社長には米国のスタートアップ創業者を彷彿させる秀才ぶりと熱意を感じる。過去に角田社長が掲載された記事によると、資金調達額では世界のリーガルテック企業に肩を並べているらしい。また、アメリカを中心とした海外進出も明らかにする。英語圏ではすでに1,000社を超えるリーガルテック企業が存在するが、黎明期であり、勝算があるとのこと。
町でお会いしたら、気さくな大学生(?)かと思うくらいのフレッシュさと爽やかさ。そこから垣間見える、熱い想い。今後の彼とLegalForce社の活躍から目が離せない。
LegalForce 角田社長×MKI 伊藤取締役【前編】
LegalForce 角田社長×MKI 伊藤取締役【後編】
三井情報では今後も、様々な対談動画の公開を予定していますのでお楽しみに😊