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もしも認知症になった時に備える③
前回は、任意後見制度と法定後見制度の違いを見ながら「成年後見制度」について簡単な説明を行いました。
今回は、任意後見制度の利用を検討した方が良い方について説明を行います。
任意後見制度についての簡単なおさらい・・・
任意後見制度は、認知症や障がいなどで、将来自身の判断能力が不十分となった後に、本人に代わってしてもらいたいことを備えるための制度です。
本人の判断能力があるうちに、自己の生活、財産管理や介護サービス締結といった療養看護に関する事務の全部または一部を信頼できる方に依頼し、引き受けてもらうための契約を結びます。
この契約を任意後見契約といい、委任する内容は公正証書によって定められるものです。
任意後見制度の利用を検討した方が良い3つのパターンをご紹介します。
パターン①
子供がいない夫婦+親戚が少ない+要介護(今後介護が見込まれる)
夫婦のみで子どもはいない。
夫婦それぞれの両親はすでに亡くなっており、兄弟姉妹はいない。
夫婦のどちらかがは要介護で、一人では自分の身の回りのことや事務手続き等を行うのは難しい。
このようなケースの場合は、夫婦それぞれの判断能力があるうちに任意後見契約、生前事務委任契約、死後事務委任契約の3つの準備しておきます。
妻が要介護状態であると、夫は自分一人で全てのことを行うことは難しいでしょう。
生前事務委任契約を結んでおくと、もし夫が先に亡くなってしまって妻一人でできないようなこと、例えば銀行に行ってお金をおろす、役所で住民票の写しをもらう、といった手続きを、契約を結んだ相手にお願いすることができます。
※任意後見契約は、被後見人(お客様)が認知症になり家庭裁判所に後見開
始の申し立てを行う必要があり、後見が開始してからでないと任意後見人
は法律行為を代理することができません。
生前事務委任契約では、後見開始前に希望する内容を代理してもらう契約
を行います。
また、死後事務委任契約を結んでおくと、夫が亡くなったときに死亡届の提出や葬儀、納骨など妻一人でできないことを任せることができます。
※死後事務委任契約とは、財産に関すること以外の死後に行って欲しい内容
を依頼する契約です。
内容は非常に幅広く、死亡後の遺体の引き取りや葬儀に関すること、病院
や介護施設等の費用の支払いや荷物の撤去、住居の遺品整理など依頼者の
希望に応じて内容を決めます。
夫婦それぞれに兄弟姉妹がいないケースで述べましたが、子どもはいないが、もし兄弟姉妹がいて甥や姪もいて付き合いがある。信頼もしている、というケースであれば、財産管理や介護の契約など法的なことを兄弟姉妹や甥や姪と任意後見契約を結ぶのもよいでしょう。
パターン②
独身+親は既に他界(高齢・要介護状態)+兄弟姉妹もいない
結婚歴なし、子どももいない。
両親はすでに亡くなっている。
一人っ子で親せき付き合いもしていない。
判断能力があるうちに財産管理などを任せられる信頼できる相手を決めておくといいでしょう。
このケースのように家族や親族を頼れない場合は、友人など信頼できる人か、法律の専門家と「任意後見契約」や「生前事務委任契約」「死後事務委任契約」を結ぶとよいです。
自分一人で身動きが取れなくなった場合や認知症で判断能力が衰えてしまった時に、任意後見契約を結んでおけば入院の手続きや本人の財産から入院費の支払い、介護サービスの利用契約支払い手続き、要介護認定の申請や認定に対する承認、審査請求、保険契約や解約、保険金の受け取りなど自分の生活を守ることお願いすることができます。
またおひとり様の場合は死後事務委任契約を結び、自分が亡くなったときに死亡届の提出や火葬、納骨や死後のことなども生前にしっかりと準備しておく必要があります。
任意後見契約は、家族や親族、友人など基本的には誰とでも契約を行うことができますが、気を付けておかないといけない点として、任意後見人を依頼した人が自分より先に死亡してしまう可能性がある場合です。
そのリスクを下げるために、自分より年齢の若い人で健康状態に問題が無い人を選ぶ、または専門家に依頼することを検討しましょう。
パターン③
子供が遠方にいる+親族が少ない(遠方にいて近場にいない)
子どもが遠方に住んでいる。(海外やすぐに来れない距離など)
家族が仕事などが忙しくなかなか連絡がとれない。
親せきが近くにいない、親せき付き合いをしていない。
このケースでは、結論から言えばご夫婦の両方がまだ元気で判断能力があるうちに任意後見契約を結んでおいた方がよいでしょう。
判断能力の衰えは、夫婦のどちらが先というのは予測ができません。
例えば、妻が認知症になってしまい、夫がお金の管理や事務手続きなどをすることになるとします。
しかし、その夫が転倒してケガをして身動きが取れなくなってしまうといった事態になってしまうと、お金を引き出したり、病院や行政の手続きをする人が誰もいなくなり、日常生活を送ることができなくなってしまうからです。
夫婦両方にまだ判断能力があるうちに、信頼できる方、または専門家などと任意後見契約を結んでおくと安心です。
また、遠く遠方に子どもが住んでいる場合は、夫婦だけが知っている人ではなく、子どもも安心して信頼できる人に任意後見人をお願いするといいでしょう。
子どもと任意後見人がお互いに知っている同士だと、メールや電話などで連絡やコミュニケーションを取れるため、より安心して制度を利用できるというメリットがあります。
また、もし妻か夫が急に亡くなってしまった時、もし子どもが遠方に住んでいる場合はすぐに駆け付けられるとは限りません。
任意後見契約に加えて死後事務委任契約も結んでおくと、遺された配偶者だけでは難しい葬儀や火葬の手配などを進めることや、遠方にいるご家族が到着する前にご遺体の引き取りだけを任せるといったことができます。
離れて暮らす、または遠方の病院や介護施設等に入られているご家族がいる場合は、任意後見契約と死後事務委任契約をうまく組み合わせて活用するとようでしょう。
その他の任意後見契約の活用の仕方
任意後見契約では、代理してもらう内容を個別に決める(代理権目録の作成)を行いますので、お金に関わる財産管理のことは兄弟姉妹や甥姪などの親族に任せ、その他の内容を専門家に依頼するといった方法もあります。
財産管理と身上監護(介護契約等のお世話など)を全て行うことは非常に時間と労力を要することになるので、ご家族やご親せきが近くにいるものの負担をかけたくないという方は、周りの方と話し合って一部の内容だけを専門家等に依頼する方法も検討してもよいのではないでしょうか。
現代では、親子間で同居する家庭が減り、また親せきの付き合いも希薄になる傾向も強く、甥姪に年老いた後の介護をお願いすることは気が引ける・・・といった方や、お子さまもお仕事や家庭のことで忙しくなかなか親御さんのことをする時間がない・・・といった方も多くいます。
そのような時は、任意後見制度を上手に利用してご家族やご親族、専門家などを上手に活用しましょう。
当事務所ホームページにも任意後見契約について記載がありますので、ご興味をお持ちの方は是非ご覧ください。
介護・福祉業界での仕事を経験し、家族・親族の介護も経験した
介護・福祉のスペシャリスト行政書士
大阪府豊中市で皆様のサポートを行う
行政書士MK法務事務所
https://mk-houmujimu.com