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認証制度を見つめなおす:ブルシット・ジョブを生むことなく、いかに価値を担保するか

米国在住スミさんが、東京の友人コイさんと、哲学・テクノロジー・歴史などについて毎週Facetimeでトークします(第29回)。

1.会社の人格が問われる時代

図22

(…Facetimeの呼び出し音)

ーもしもし。スミさん、お誕生日おめでとうございます。

ありがとうございます!
0時の瞬間は、同僚と次の配属先について話してました。私たちももう若手じゃない、マネジメント層になるなあって笑

ーいいじゃない。新しいステージの始まり。

ただ、マネジメントの負担が増える分、新しい企画や深い思考に割ける時間もなくなるよね、と。

ーそんなことはないよ。
甲本ヒロトがこんなことを言ってたよ。

「大人になるというのは、やらなきゃいけないことい押しつぶされてやりたいことが出来なくなるのではなく、やりたいことをやるためにやらないといけないことをやれるパワーがつく。だからやりたいことが、やれるようになるんだ。」
(「甲本ヒロト『やりたいこと』をやるには」より)

いいこと言うなあ。

ー彼自身がそういうふうにほんとに感じてるんだろうなと思われる。
門出にふさわしい言葉!

ありがとうございます。
米国での大学院生活もあと半年で終わりかあってちょっと気持ちが落ち込んでたから、元気でてきた。笑

ーそれはよかった。

そういえば私、コイさん「B-Corp」って知ってます?
最近今日もって色々調べてたんですけど。

B Corpは、米国の非営利団体「B Lab」により2006年に発足しました。環境・社会に配慮した事業を行っており、透明性や説明責任などを果たすなど、五つの分野(ガバナンス、従業員、コミュニティ、環境、カスタマー)から構成される基準を超えることが条件です。
「世界標準『B Corp』を知っていますか アジアで広がる『良い会社』認証」より抜粋)

ーうん。知ってるよ。巷では、ちょっともてはやされ始めてるよね。

私個人の問題だとは思うんですけど、「B-Corp」マークがついてるからこの商品を買おう、ってならない気がするんですよね。

ーまあ、そうじゃない人もいるとは思うけどね。
環境にやさしいとか、動物実験をしてないから、という理由でプロダクトを選ぶ人も、一定の割合でいるんじゃないかな。

いや、それはわかるんですよ。
特にアメリカは、そういう価値観ベースで消費行動する人は確かにいて。コスメにも、「cruelty free」とか、よく書いてある。

ーうん。特にアメリカはBLMのムーブメント以降、企業が自社の価値観を示す、説明責任を果たすということが求められてきてるよね。

そういえば、前にもこういう話になりましたよね。

ーそうそう。会社としての「人格」が問われる時代になってきたんだと思うよ。
株価や株主還元だけじゃなくて、社会のステークホルダー全体に対すつアクションが求められからこその、B-Corpなんじゃないかな。

なるほどねえ。

ーただ、そもそも日本企業って公正性とか、安全性・信頼性で売ってるところもあるから、それを追認しても効果がないかも。笑

確かに、中国の無名の企業がB-Corpをとったら「おおっ!」ってなるけど。笑

ーそうね。笑

2.大事なのはチェックリストじゃない

図23

でもね、それを担保する手段が「認証や基準をクリアする」ってことなのかなあと。
実施団体のB-Labが設定している200問くらいのアセスメントに回答していき、その証左がとれたら合格になるらしいんですけどね。

ーほう。

でも、その基準に会社の在り方を寄せてるのは、本末転倒じゃない?
本来なら、会社が目指す「価値観」がまずあって、それに従ってプロダクトやサービス、ガバナンスの仕組みをつくり、その結果が評価されるべき。じゃない?

ーそうだね。

綺麗事かもしれないけど、そこをすっ飛ばして、型だけ寄せても意味がないと思うんです。

ーうん。
もうちょっと言うと、型だけ寄せて「できた」という整理にしてしまうことも、罪深いよね。

と、言いますと?

ーつまり、価値観設定が出来ていない、世の中に認められていない企業ほど、認証や基準の形式にかたちを揃えることで、問題が解決したように見せられるということ。
和民が「ホワイト企業」認定をされたがる、みたいなことに近いかも。

確かに、本当に出来ている企業は、わざわざ取ろうと思わない気もする。

ーこれって、企業に限らず、政府も同じだよね。
毎年のように成長戦略を作って、それに基づいた工程表や、実行計画や、フォローアップが山ほどある。

形式があることで、本当の仕事が免責されている。

ーうん。これから派生して、無駄な仕事が作られることもまた罪深い。
いわゆる、ブルシット・ジョブだよね。笑

3.ブルシット・ジョブから解放されたら

図24

確かに。笑
でも、どうしたらいいんだろ?笑

ーん?

認定制度を通じて、世の中が認知してなかったような企業が、まっとうな評価を受けられること自体は、いいことだと思うんですよね。

ーそうだね。
たとえば、チェックリスト形式じゃない認定の仕組みもあるよね。

あ、そう?

ーたとえば2020年にできた「DX認定制度」の場合は、細かいチェックリスト群をクリアするんじゃなく、社としてのスタンスを、世の中にはっきり示しているか、ってことが認定基準になってる。

【DX認定制度の主要要素】
・「経営ビジョン」を策定する
・「DX戦略」を策定する(体制・組織案、 ITシステムの整備に向けた方策)

なるほど。
各社の設定している中身や、フレームワークに細かい注文つけるんじゃなくて。

ーそうだね。
取締役会の承認と、公表っていうプロセスを経て、ステークホルダーが外からチェックしやすいかっていうメタ的な部分が評価される。

中身は、マーケットの色んな人がが判断できるようにっていう話ですね。
夏にわれわれで話した、新しいガバナンスに近いかもね。

ーそうそう。
こうやってブルシット・ジョブをなくして、空いた時間で各人がやりたいことをすればいいと思うよね。地元のおばあちゃんともっと話すでもよし、子育てするもよし、課外活動に打ち込むでもよし。

いいですね、それ。
個人的に、無駄な仕事をどけた時間でもっと生産的な仕事をするっていうのにも、違和感があったのですよね。

ー笑。

そんなに人間がんばれないだろうって。
でも、GDPとは関係ないところで、ウェルネスを高める活動にあてられたらいいなあ。

ーでしょう。だから話を戻すと、B-Corpを批判的に見てみるのも面白いと思うよ笑

ありがとうございます。また勉強になりました。

ースミさん、誕生日からまじめですね。

はい、一層精進いたします。

ーがんばってくださーい。ではでは。

はーい。

(…Facetime終了)




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