(詩)〜 ジャングル 〜【何もかもが色付いて、煌めいていた世界で自身もそう生きていると謳歌していたある日、世界は一変しました。その思い上がりと惨めさ、現実を過去に綴りました。】
歩いている。
極彩色の中を。
青々と茂る木々。
鮮やかな羽を広げ、舞い踊る蝶の群れ。
美しい旋律を奏でる鳥達に、芳しい香りを
放つ花々。
歩いていく。
極彩色の中を。
私も極彩色であり、光の中に在る。
美しく、瑞々しく、ジャングルの様に逞しい。
全てが目も眩むばかりに輝いている。
歩く。
極彩色の中を。
どんどん歩く。
極彩色の中を。
色と光にとらわれ、小石に毛躓いた。
転がる。
極彩色の中を。
転がる。転がる。
色と光に溢れるジャングルの中を。
辿り着いたのは、鬱蒼としたジャングルの
深部。
立てない。
歩けない。
這う。
鬱蒼としたジャングルの深部を。
這う。這う。
光がささず、色失せたジャングルの深部を。
這い続ける内に地面が消えた。
私は泥沼の中に在る。
藻掻く。
泥沼の中を。
藻掻く。藻掻く。
悪臭漂い、汚物が浮遊する汚泥の沼の中を。
藻掻けば藻掻くほど、地面は遠ざかる。
私は汚泥まみれだ。
疵だらけで、悪臭を放ち、力尽き、
為す術もない。
此処にはもう、極彩色はない。
在るのは鬱蒼としたジャングルと汚泥の沼だけ。
私は漸く、己の醜さに気づき驚愕する。
沈んでゆく。
泥沼の中に。
沈んでゆく。
どこまでも。どこまでも。
ここには色も光もない。
もう、あの極彩色の輝きの中には戻る事は
できない。