[理系による「アート」解説] 能面の鑑賞方法
美術館・博物館に展示してあることがありますが、どう鑑賞すればよいかわからない方も多いと思います。結論としては、茶器と同様に抽象彫刻として鑑賞すればよい、ですが、より具体的に解説します。
能面で必要な要件は、中庸(偏りがないこと)の表情、であることです(無表情ではないのでご注意あれ)。"中庸の表情"とは、鑑賞者の喜怒哀楽をそのまま反映する表情です。つまり、鑑賞者が悲しい気分であればその能面の表情が悲しそうに見え、イライラしていたら能面の表情がイライラしているように見える、という意味です。
なぜ、このような要件が必要か説明します。
能面は能の舞台で使用されます。能楽師はこの面をつけて役を演じます。が、喜怒哀楽を表現するのに自身の顔の表情は使えません。よって、動きや舞で気持ちを表現するのですが、舞台中、役の感情は変化するので、面に喜怒哀楽があると矛盾がどうしても生じてしまいす。よって、能面はどのような感情を表現するにも耐えられように、中庸の表情、であることが求められるのです。
上記は、能楽師からの要件になりますが、それに応えられる面は鑑賞者からすると鑑賞者の心を映し出す鏡と必然的になります。というわけで、能面は作成者も鑑賞者もかなりな教養が必要とされる高度な抽象彫刻なのです。
ちなみに、これを海外の方に説明するととても関心されるので、何かの機会に説明を試みてみられるとよいと思います~。