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Loose Leaf Room(2)

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短編小説集です。1話で完結するものを中心に入れています
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2024年4月の記事一覧

【短編小説】if

【短編小説】if

ちょっと訊きたいんだけどさ。
「なにー?」

もし僕に、他に気になる人が出来たらどうする?
「出来たの?」
いや。もしもだってば。

「ふぅん…?」
で、どうする?

「まず率直な感想として、有り得ないね」
そんなこと言い始めたら、この話広がらないんですが。
というか有り得ない…って、どういうこと?

「だって実際そうじゃん。今のキミは私しか見えてないでしょ?」
いっそ羨ましいくらいの自信だね。

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【短編小説】ぐちゃ

【短編小説】ぐちゃ

ぐちゃ、ぐちゃ。

それは何かを踏んだような、潰したような音にも似ていた。

日を跨ぎ家を出てすぐ聞こえ始めたその音は、私の耳許から離れない。

そういえば今日は私の誕生日だったっけ。最近忙しくて忘れていた。

今頃彼は、私へのサプライズでも計画しているのかな。ここのところどことなくソワソワしていたし、そういうの隠すの下手なんだよなぁあの人は。
まぁ、そこが可愛くもあるけれどね。

ゆっくりと、け

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【短編小説】どうせ

【短編小説】どうせ

私は昔から、「どうせ」が口癖だった。

どうせ、私は落ちこぼれ。
どうせ、私は誰からも期待されていない。
どうせ、私は優秀で美人な妹の付け合わせ。

どうせ、どうせ、どうせ。

何をするにも妹には勝てなかった。
何かを達成しても、妹がすぐそれを越える。
両親を含めた周囲の人間は、いつも妹だけを褒め称えた。

どうせ、私は妹の陰でありお荷物。
例えばあの子が亡くなっても、その存在はきっとみんなの中に

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【短編小説】青蜂商店

【短編小説】青蜂商店

いらっしゃいませ、お嬢さん。
ご新規さんがここに辿り着いたのはいつ振りですかねぇ…。

ここは青蜂商店。青い蜂、と書いてセイホウと読ませます。
お客様が望むものを望む形で手に入れる為の品を扱う店、とでも言っておきましょうか。

お嬢さん、どうしても手に入れたい人がいるのでしょう?
隠さずとも分かります。えぇえぇ、そのお気持ちも痛い程分かりますとも…。
なので特別に、おまけしておきましょう。

さぁ

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【短編小説】幸せ

【短編小説】幸せ

嫌いな奴がいた。
周りから毒親だと言われてきたぼくの母にそっくりで、近くにいるだけで恐くもあった。

そんなアイツがぼくに告白してきたのが、今から4年程前だっただろうか。元々ノーと言えない性格でもあったが、面食らってOKしてしまった。

それが全ての始まりだった。

アイツはぼくの直属の上司だった。第一印象は『威圧的』。
実際その印象の通り、奴は周りの部下や気に入らない同僚、果ては性格の合わなそう

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