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京都の魔力

『ちょこっと京都に住んでみた』と、
『リバー、流れないでよ』を見た。

京都に惹かれている。憧れている。絶対京都に住みたい。それが今の夢だ。

とは言っても日常と京都をつなげたくはない。あくまで森見登美彦的な京都に住みたいのだ。京都は非日常でなくてはならない。だから、京都の会社に就職して、京都人に意味がわからない皮肉を言われながら、京都に骨を埋めるとかの京都生活はごめんだ。

ということは、俺は大学生のうちに京都に住まないといけない。
俺の京大生化計画だ。

運のいいことに僕の大学は3年で単位を取り切ってしまえば、四年になれば授業はゼミだけですむ。週に一回のゼミも先生に交渉すれば、オンライン参加を認めてもらえるだろう。つまり、俺は四年になったら京都に住むことが可能である。

しかし、問題は山積みだ。
まず資金。マンスリーマンションを1ヶ月借りたら大体10万円だ。それに食費がかかってくるというのだから、夢の京都ライフは1ヶ月で破綻するだろう。今月のクレジットカードの請求の3万円も口座に入っていないのに、どこに10万円以上の金があるんだ。どうにか1ヶ月分の10万円を集めることだけで精一杯だろう。だから京都に1ヶ月滞在したら、実家にトンボ帰りだ。

そして、いかに先生にオンライン参加を認めてもらうか。俺が京都に住む理由は、「京都に住みたいから」だ。外国に留学しに行くはもっともな理由だが、京都に文化を体験しに行くのは、立派な理由にならない。それも立派な理由だろとは思うけどね。東京で育った俺にとっては、京都の生活なんて海外の生活と一緒だけどね。せめて国内留学というか、京都の大学に授業を受けに行くとかならば、まだちゃんとした言い分になる。でも、東京の隅にある大学に、京都に単位互換協定を結んでいる大学なんてない。あれよ。京都のどっかの大学と協定を結んでくれよ。俺は京大の授業を受けたいよ。

誰か京都で1ヶ月なんかできることがあったら教えてください!この授業受けられるとか、インターンがあるよとか、なんかないですかね?

先生になんて言えばいいだろうか。「京都に住みたいんで、京都から授業出ます」でいけるのか。せめて「卒論の研究を京都でやろうと思って。」とか言った方がカッコつくが、それはもう長期滞在が必要になってしまう。先生に卒論の調査費という名の俺の生活費を賄ってもらわないといけなくなる。ただでさえ、今、学問を何もわかっていない自分が先生に大きなストレスを与えているのに、金銭的なストレスまで与えるわけにはいかない。しかも京都に住むということは現実逃避ということも含んでいる。俺はめんどうくさいいろんなものを全て東京に置いて、身一つ、ギター1本で行きたいのだ。そんな卒論なんて持ち込みたくない。

それでも京都に行きたい。鴨川の河川敷でギターを弾いていたい。先斗町を飲み歩きたい。磔磔でグッドミュージックを聴いていたい。京大のサークルに入りたい。下鴨納涼古本市に行きたい。五山送り火を見たい。紅葉に包まれながら秋を過ごしていたい。竹林を彷徨い歩きたい。知らない道をただただ歩いて、行き着いた餃子の王将でレバニラ炒めを食べたい。貴船神社で久保史緒里に会いたい。

一昨年の秋、京都に行った。バスを乗り継いで貴船に行き、川と山と神社というなんだか現実の世界ではないようなあの空間がとても好きだった。天狗の住む世界。その帰り、何も知らないまま叡山電車に飛び乗ったら、紅葉のイルミネーションのトンネルを通る電車で、感動した。ビバ!京都!天狗に騙されたような世界に夢中になっているとそこはいつの間にか、終点、出町柳。まさに出町柳パラレルユニバース。京大に進学したパラレルワールドを感じながら鴨川を渡った。心なしか蛾の大群に出会ったような気もする。

わかるだろうか。京都を歩いているとドラマが起こる。心の中では、京都の舞台の物語がうるさいし、現実のドラマも起こる。頭の中ではくるりとアジカンが交互に流れてくる。

大学一年生の夏に一人で京都に行った時、夜中、鴨川沿いを歩いて、対岸のカップルと自主練しているブルージャイアントみたいなトランペット奏者を見ていると、(ブルージャイアントは荒川?だけど)高校の時に一緒に花火に行った女の子から電話がかかってきた。あれも京都の魔力だ。福山雅治がいくら恋の魔力のせいにしても、俺だけは京都の魔力のせいにし続ける。その電話に出ないというよくわからない判断を俺がしたのも京都の魔力のせいだろう。

そうだ、絶対、京都行こう。俺はもう京都に住む。早くダサい街とダサい街の往復から抜け出したい。俺の頭の中では、在日ファンクのハマケンが京都レスポンスを始めている。京都!京都!京都!京都!

しかし、1ヶ月だけか。そうなると時期はどうしよう。8月にイベントは多いが、いかんせん暑すぎる。せっかく京都にいるのに四畳半地獄をさまよう羽目になってしまう。クーラーのリモコンだけ過去に行ってしまうかもしれない。京都はそんなことがまかり通る。上田誠はすぐ、時間の概念を超越する。暑い時期はできるだけ避けたい。とはいえ、あんなに雪の積もった貴船に参拝にしに行くのも大変だから、冬もやめたい。紅葉を見るため秋がいいが、そんな時期に京都に行ってしまって卒論は書けるのだろうか。

やっぱり5、6月付近になるのか。雨と竹林のマリアージュを味わおうか。

が、しかし。
この議論には大事な根底要素が抜けている。

それは俺が来年の春には就活が終わっているという根底要素だ。勝手にそんな仮定が正しいことにして、ここまで想像を膨らませている。

今、何もしていないというのに妄想ばっかりしやがって。結局そんな妄想をして、就活から逃げようとかそんなくだらないことを考えていたんだろう。何してるんだ。そんなんじゃ就活が終わらなーいってなって、そのまま卒業するまで就活してしまうぞ。


そんなことを書いていると、親が会社でもらった京都のお菓子を持って帰ってきた。仕方ない、とりあえず今日はこれで我慢して、エントリーシートでも書くとするか。


そんなこんなで結局俺はエントリーシートも書かず、『探偵はBARにいる』を見てしまった。今は味噌ラーメンが食べたい。来年は雪まつりに行きたい。冬の北海道を味わいたい。

なんて単純な男なんだとつくづく思う。

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