子供に読み聞かせたい児童文学 - 我が家のおすすめの10冊
私と児童文学の出会いは長女が3歳くらいのころソフトクリームを食べによく行っていたミニストップででした。イートインの片隅に地元のボランティア団体が設置した小さな書棚があり、そこにその団体が寄贈した本が入っていました。
娘がゆっくりソフトクリームを食べる間、暇を持て余していた私はそこの本を読み始めたのですが、どの本も素晴らしい本で、子供向けにこんな素晴らしい本があることを知ってびっくりしました。
幼少期に本を読む習慣がなく、家にも本という本がない家庭で育った私には、このとき始めて児童文学の世界を知りました。
その書棚にあった本を全部メモして、Amazonで調べてほしいものリストをつくりました。娘が大きくなったらこの本を1冊づつ読んで聞かせようと思ったからでした。
それから2年たって、娘が家にあった絵本をほとんど暗証できるほど読み聞かせてしまったころ、始めの1冊を買いました。
このときから長女への児童文学の読み聞かせがはじまりました。横で寝ながらこれを聞いていた長男はこのとき3歳、だいたい1ページ読んだ頃には寝息をたてて眠っていましたが、彼には3歳から児童文学の読み聞かせをしていたことになります。
これまで読んできた本の中から子供たちに人気の10冊を対象年齢の若い順に紹介したいと思います。
対象年齢は(5歳〜)のように〜がついます。大人が読んでも面白い作品ばかりですので上は何歳でも十分に楽しめます
1冊目:年とったばあやのお話かご (4、5歳〜)
娘に最初に選んだ本がこの「年とったばあやのお話かご」です。もう何百年生きているかわからない”ばあや”が、夜寝る前に子供たちに昔話をする、という形で1章あたり1つの物語が語られます。
ばあやが語る物語は、その昔ばあやが使えていた世界中のお家で実際に起きた物語、何百年も前のインドの王子様、スペインの王女様、ばあやが世話したいろいろな時代、国のお家で起きた不思議なお話が1章完結で語られます。
1章1章が短く完結しているので小さな子どもでも飽きずに最後まで物語を聞いていられます。
児童文学の入門としてとてもいい本でした。
2冊目:満月の夜のさんぽ (4、5歳〜)
ウィスコンシン州の農場で2人の子供を育てるお母さんの著者が月に1回満月の夜に2人の子供と外に散歩にでるお話です。
物語は1月の満月の夜のお散歩からはじまります。1章が1回のお散歩のお話になっていて、我が家では1晩に1章だけを読んで聞かせました。
1月は凍てつく氷の上を走る鹿の足音を子供たちはお散歩で耳にします。
2月は、真っ白の雪の上で樺の木の小枝を食べるうさぎたちを見つけます。
うちの子供たちは毎晩、次の月のお散歩の話を聞くのを楽しみにしていました。
1章は短いお散歩の話。動物の写実的なイラストも入っていて、小さな子が毎日楽しみにするのにちょうど良い文章です。
ここからは、5歳、6歳の子供たち向けのお話になります。
3冊目:黒ねこサンゴロウ 1 - 旅のはじまり (5歳〜)
単身赴任のお父さんのうちへお泊りに行くために特急マリン号に乗ったケン、車中隣に座った黒ねこのサンゴロウから宝の地図を見せてもらいます。
途中下車して、ケンとサンゴロウの小さな冒険がはじまりました。
特急列車に乗ってお父さんの所へ、という日常から何故か黒ねこと宝探し、という展開が子供たちには受けたみたいで楽しそうに聞いていました。
2冊目の満月の散歩までは1章づつの完結でしたが、これは1冊で1話、1章 -> 1冊へ、難しくなく、飽きさせないちょうどよい本でした。
4冊目:テーオバルトの騎士道入門 (6、7歳〜)
舞台は、中世のヨーロッパ。
王子のテーオバルトが一人前の騎士になるために龍の涙を探しに行く旅を書いた架空のお話です。
テーオバルト、フォン・グリュック男爵、ゲッテルフンケン公爵、と、とにかく長い名前の人ばかりが出てくるへんてこな珍道中。大人にはいまいちその面白さがわからないのですが、子供たちは笑いながらこの珍道中が進むのを毎晩楽しみにしていました。
5冊目:クリスマスの猫 (6、7歳〜)
まだシリングがイギリスの通貨だったころのイギリスの港町のお話。牧師の叔父の家でクリスマスを過ごすことになりこの港町へやってきた女の子。街の少年と出会い、貧富の差や貧しい暮らしの中にも存在する幸せなど多くのことを学びながらクリスマスの日を迎えます。意地悪なお手伝いさんに隠れて馬小屋に匿っていた猫の出産に立ち会ったクリスマスの夜のシーンはとても感動的です。
子供が猫の話が好きで、この本を選びましたが、思わぬ感動を与えてくれた本でした。我が家では毎年クリスマスが近づくたびに読み返している本です。
6冊目:ビーバー族のしるし (7歳〜)
開拓時代後期のアメリカ、マサチューセッツの森の奥に土地を買い、家族を街に残し、森に入って開墾を行う父と息子。街に残してきたお母さんの病の報に父が街に戻り、たった一人で森の小屋を守る少年、マット。
そんなマットの前にある日、インディアンの少年が現れます。
開拓時代のころの12歳の少年のたくましさが圧巻です。インディアンと白人の関係がこのころどうだったのか、インディアンの持つ知恵、価値観、それをどうマット少年が感じたのか。都会で生まれたうちの息子には印象的な物語だったようでした。私と息子のお気に入りの1冊です。
7冊目:ジンゴ・ジャンゴの冒険旅行 (7歳〜)
孤児院に住む少年を父親と名乗る人物が引き取りに来た。彼は本当の父親?、ジンゴとジャンゴ、2人のメキシコまでの宝探しの冒険が始まります。
ジャンゴの記憶に残るジプシーの言葉、冒険は自分のルーツを探す旅でもありました。アメリカに住む当時のジプシーたちの生活様式、文化にも触れられて、毎回次に何が起きるか本当にわからない、飽きずに読める本でおすすめです。
8冊目:よみがえれ白いライオン (7、8歳〜)
スピルバーグ監督で映画になった「戦場の馬」で有名なマイケル・モーパーゴの作品。
アフリカに住むイギリス人の一家が白いライオンの子供に出会うところから物語は始まります。一家の少年は厳しい父親に頼み込みなんとかライオンを飼い始めました。
ある日、ライオンは父親の一存でフランス人のサーカス経営者に売られることになり、少年とライオンは離れ離れになってしまいました。
そこから時は経ち、第一次世界大戦でイギリスの兵士となった少年はフランスで従軍中にあの白いライオンに出会います。
今回紹介する本の中でも最も壮大で感動的なお話です。
この本を読んでいる間は、イギリス植民地時代のアフリカ、第一次世界大戦、子供たちにこういう歴史の出来事を教えられる機会でもありました。
9冊目:マルベリーボーイズ (7、8歳〜)
私が一番好きな児童文学がこのマルベリーボーイズです。
ナポリで生まれ育ったユダヤ系イタリア人のドム。生活に困り将来が見いだせない状態にドムの母親は、貨物船にドムを載せ、単身、ニューヨークまで密航させました。
何も知らずにマンハッタンの路上に放り出された8歳の少年ドムがどのようにマルベリーストリートで生き抜いていったのか、作者が自分のおじいさんがニューヨークで生き抜いた昔の話を親族から聞き集めて書いた物語です。
毎日エリス島に世界から夢を求めて船で移民が押し寄せていた時代のマンハッタンのイタリア人街、マルベリーストリートの光景が鮮明に浮かび上がる素晴らしい文章です。
子供が寝付いた後も先が読みたくて読むのを止められなかった一冊でした。
10冊目:フクロウはだれの名を呼ぶ (8、9歳〜)
北カリフォルニアの街、フレスタ。州政府はマダラフクロウが絶滅の危機に貧して、原生林の伐採を禁止した。
林業に従事する木こりのレオン・ワトソンの息子ボーデンは、父親が失業し、家族が悲しみに暮れるなか、マダラフクロウに復讐するために原生林の森に入っていく、そこで木から落ちたフクロウの雛を拾うことに。
この本の文章は寝る前に読んでいると不思議と私達を北カリフォルニアの原生林の森の中に連れて行ってくれるような不思議な再現性に満ちていました。うちの子供たちのように自然と触れ合う機会がなかなかない都会の子供にこそ読んでほしい本だと思います。
近所のミニストップのイートインで出会った本たちを子供たちに読み聞かせるようになってから7年が経ちました。
仕事から帰ってくるのが遅くて読み聞かせが出来ない日が続いたり、子供たちが疲れていてすぐに寝たいというときもあり、跡切れ跡切れになりながらのすごくゆっくりしたペースで、7年、25冊くらいを読んできました。
子供たちは楽しい話は途中でもよく覚えていて、何週間も間が空いてしまっても、また途中から読んできかせればすぐに話を思い出します。
お姉ちゃんの読み聞かせを横で聞いていた3歳の弟も、驚くほど物語の内容を理解していたりして、読み聞かせは対象年齢やペースがめちゃくちゃでも案外うまく行くものでした。
子供たちだけではなく、私達大人も、日常の現実からはなれて、北カリフォルニアの原生林の中や、ウィスコンシンの凍った池の上、ニシンの匂いが漂うイギリスの港町に柄の間の旅をしているような気分になることができます。
3月から学校が休校になり、子供たちが国語の授業を受けられないなか、子供が文章に、そして文学に触れられる機会として、是非読み聞かせにチャレンジしてみてください。