国立近代美術館工芸館を見てきました
今日は昼休みに、国立近代美術館の工芸館までシェアサイクルで行って来ました。今の時期は、所蔵作品展になっていまして、テーマは「デザインの(居)場所」というもの。
今回は殆ど時間が無かったので、日本政府の招聘で明治9年(1876年)から翌年に掛けて4ヶ月間ほど来日した英国人デザイナー、クリストファー・ドレッサー(Christopher Dresser)の作品を中心に見てみました。
手前の2つはトースト置き(Toast rack)で日本訪問後の1878〜1880年頃に作られたものだそうですが、今でもホテル等で置いてありそうなモダンなデザインですよね。とても140年前のデザインとは思えません。
実際に今でも、イタリアのAlessi社が生産ライセンスを持っていて販売しています。
また、右奥のシンプルな水差しですが、こちらも1880年作。クラレットジャグ(Claret jug)といって赤ワイン用デカンターのことなんですが、本来はもっと装飾されたデザインです。今ではゴルフ大会の優勝杯として伝統的なものを模したレプリカが利用されます。
イメージ写真:©️gettyimages
こう言った日本の伝統工芸品を彷彿とさせる、素材の美しさを生かしつつシンプルでかつ機能性・実用性のある作品群は、クリストファー・ドレッサーが日本からの帰国後に制作したものを含め、1862年のロンドン万国博覧会が与えた西洋への日本の影響を受けた絵画と共にアングロ・ジャパニーズ・スタイルと呼ばれています。
日本の工芸品の持つ美意識の影響は、ドレッサーの訪日前の作品と比べると一目瞭然です。上はビクトリア様式の帽子掛けとガーデン・チェアです。
ドレッサーは、西洋の伝統的な装飾概念から自由で「斬新な」発想をもって、シンプルかつ機能的な作品を数多く創作したインダストリアルデザイナーの創始者として評価されていますが、そこには日本の影響無くして、この高みには達しなかったのでは無かったのではないかと想像してしまいます。
デザインの良さって、ある意味万国共通な感じがしていたのですが、どうも違ったようです。国力というか経済力や栄華を示すものが装飾性の高いデザインであると考えられて来たものが、日本のシンプルさを極めた工芸美術に触れたことで、完全に否定された訳ですよね。
ドレッサー以外にも、今でも古臭さを感じさせないシンプルで実用的なデザイン什器類がたくさん展示されていました。
例えば、フランス発のアール・ヌーヴォー。有機的な形態や流れるような曲線が特徴ですが、写真はエミール・ガレの「トネリコバノカエデ文鉢(Bowl, ash-leaved maple design)」。国を代表する装飾美術を国際競争力に繋げようとする動きが1900年のパリ万国博覧会で結実したと解説されていました。
エミール・ガレ「西洋カエデ文脚付杯」
19世紀終わりから20世紀にかけての時代は、デザインの世界も英仏競争時代だったのですね。
その後、1930年に掛けてドイツが英仏に遅れて興隆してくる訳ですが、特徴ある工業デザインが出てきます。上はヴィルヘルム・ヴァーゲンフェルトによる容器「キューブ(Kubus)」。以下はマルセル・ブロイヤーの「ネスト・テーブル B9-B9c」。名前も工業的です。
こうやって、実物を見ながら、デザインの変遷や歴史を理解するのも面白いものです。
実はこの展覧会、見に来たのは2度目なんですが、内容をすっかり忘れておりました。やはり、こうやって少しでもアウトプットしないと、理解を伴った形で記憶が定着しないものなのですね。
それでは、また。