【後編】SUMMER SONIC 2024 東京1日目の記録
前回の続きです。
⑤OneRepublic(Marine Stage)
以前別の記事で書いたとおり、私は彼らのサマソニ初出演ライブを観ている。
当時は1stアルバムをリリースし、Timbalandがリミックスを手掛けた"Apologize"がヒットしていた頃。あの時も今回と同じマリンステージでの出演だったが、当時と今で状況は随分と変わった。
前回は真っ昼間で、今回は夕方。
アメリカのバンドということを一瞬忘れそうになる、叙情的なサウンドが持ち味だったバンド初期。TikTok全盛という時代背景を感じずにはいられない、狙ったようにコンパクトでわかりやすい最新作(2分台の曲多数収録)を出したばかりの今。
バンドメンバーのタトゥーも随分と増えた。
だけど変わらないものもあって、私は昔も今も、Ryan Tedderの書くメロディが好きだ。
美しいメロディの中に一捻りのスパイスを加え、もう一度畳みかける構成は、彼の書く曲の特徴の一つだ。
例えば、ライブ中のセルフカバーコーナー(本人はカラオケと言って笑っていたが、全くそんなことはない)で披露していたMaroon 5の"Maps"。
サビ後半の"So I’m following the map that leads to you"以降の畳みかけは、まさにRyan Tedder節とでも呼びたくなる。
OneRepublic名義であれば、1番と2番でヴァースのメロディを少しずつ変え、かつ2番のみプレコーラスが入る"Good Life"や、メロディーラインの起伏を細かく上下しながらサビに向かっていく"Counting Stars"。
いずれも良い曲だ。そんな訳で、彼らのライブは間違いなくグッドメロディーの宝庫。最新作のカラッとしたポップな感じは屋外ステージにも合っていて、観客のウケもかなり良かったように感じた。
彼らの作品は2ndが個人的フェイバリット(次点が3rd)なのだが、この辺りの頃は来日が遠くて…。ここのところ毎年来日が続いており、日本でも安定的に売れてきているのかなと思うと嬉しい限りだ。
⑥Nothing But Thieves(Mountain Stage)
ワンリパ終演後は急いでメッセに戻ることにした。次のお目当てであるNothing But Thieves(以下NBT)まで、残された時間は僅か10分しかない。
とはいえ、この人混みの中では高速移動にも限度があり、NBTの開演予定時間ぴったりにメッセの再入場ゲートに到着するのがやっと。そう上手くはいかない。
ただ、開始時間が押していたらしく運良く冒頭から聴くことができた。その1曲目がこれ。キー高めの歌声に対して、一貫して低音を刻むリズム隊がかっこいい。ライブではより音圧レベル強めでより踊れる感じ。間に合ってよかった。
Wikipediaでは彼らの音楽の比較対象の一つとして、Jeff Buckleyが挙げられている。
メロディーラインの繊細さや高音を効果的に聴かせるボーカルの歌唱スタイルを考えれば、Jeff Buckleyを挙げるのは(最初こそ意外な印象を持ったが今は)ああなるほどな、と思う。
世間一般的にはMuseが引き合いに出されることが多いNBT。その音楽性は時にアグレッシブで、歌詞もシリアスなものが多い。
ラウド系の音楽は時として私の守備範囲からは外れがちだが、彼らの音楽は不思議と聴ける。繊細さに加えて難解になり過ぎないポップさも兼ね備えていて、聴きやすいのだ。ライブラストの"Overcome"はまさにそれ。彼らにしてはある意味では異色作なんだろうけど、ポジティブな歌詞のメッセージ性含め純粋に良い曲だなと再確認。
惜しかったのは促されても中々英語の歌詞を歌えない観客(次のGLAY目当てのお客さんには中々厳しいか)と、どう考えても尺の短いセットリスト。次の日の大阪公演で"Unperson"を演ったのはかなり羨ましい…(この曲も緩急ある曲展開とボーカルで、いかにもライブで盛り上がりそう)。
⑦Belle & Sebastian(Sonic Stage)
そのままマウンテンステージに留まればGLAYを観ることもできた中、若干の迷いはありつつもソニックステージに移動。お目当ては、実はこれが私にとって初めてのライブ観戦となるBelle & Sebastian(以下ベルセバ)だ。
(後々GLAYのセットリストを確認してやや悔しい気持ちになったのも事実だが、サバイバル→口唇→SOUL LOVE→HOWEVERの代表曲連打の最中で抜けられる程私の意志が強いとも思えないので、これで良かったのだと思いたい…)
そういえばこの曲が聴けたのも、ライブ冒頭からソニックステージに居たからだった。
ベルセバはとにかく作品数が多く、私自身も全ての作品を網羅できている訳ではなかったため、予習には直近の海外公演のセットリストの傾向を大いに参考にした。実際にそれが功を奏したのは確かだ。
しかし、それでも彼らのライブは「こんな曲も演るんだ!」というワクワクと驚きに満ちていた。大阪と東京で演奏曲がガラリと変わっていたのが何よりの証拠。どちらのセットリストも捨てがたい…(でも大阪公演のラストを飾った"Me And The Major"は聴きたかったな)。
手に取る楽器や歌い手が曲毎に軽やかに変化しながら、時には観客と交わりながら緩やかに繋がっていく。まるで同窓会に参加しているかのようなノスタルジックな多幸感が、とても心地よかった。観客がステージ上を練り歩く"The Boy With The Arab Strap"は、間違いなく今日のハイライトだったように思う。
あと、朝ドラ「虎に翼」のメインテーマである"You are so amazing"からの"Another Sunny Day"("The Life Pursuit"で個人的に一番好きな曲)で泣かされたのは、きっと私だけではないはず。心が洗われる、素敵なひと時に感謝。
⑧Maneskin(Marine Stage)
寝かしつけは私でないとダメな息子。夫や義両親にお世話を依頼することはできるが、そうするとまるで昼寝しない息子。
彼のためにも、就寝時間ギリギリの22時までには自宅に帰りたい。そう考えると、Maneskinをラストまで観ることはとても無理だ。それでも。
私は最後の力を振り絞ってマリンスタジアムに向かう。
そこまで熱心なファンという訳ではないが、アルバムはチェックしているし、何より今一番ホットなアーティストであることは間違いない。一目だけでもぜひ観ておきたかった。
実際に会場に到着すると、ブロック入場に規制がかかるほどの人、人、人…。
サマソニはそれなりの回数参加しているが、こんな光景は久しぶりに見た気がする。しかも年齢層が明らかに若い。大人気じゃないか。
バンドはボーカルにギターとベースとドラムという、ごく一般的な編成。そんな最低限の楽器でも、ここまでラウドかつ明快にロックが鳴らせることを証明しているかのよう。
そして、演奏から滲み出る自信と説得力はまさに、今一番ノリに乗っているバンドのそれ。マリンスタジアムの熱気は、私の予想を遥かに超えていた。
…が、まずい。このままでは多分私は終演までここから出られない。それくらい、お客さんの圧がすごい。
ということで、現地の運営スタッフさんに出口を都度尋ねながら、何とかその場を後にした。実際に聴けたのは3曲くらいだが、それでも充分だった。
自分のことばかりを優先できないのは、幼い子を持つ親の宿命。サマソニに毎年行かせてもらえる、それだけでも家族には感謝しなくてはならない。
そして私はまたいつもの日常に戻っていく。
改めて。サマソニ、今年も楽しい時間をありがとう。