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Sword & Spice ―出会い旅2023 vol.3
書く時間を野球観戦に全フリしすぎて、書ききる前にいくつもの旅がやってきてしまった。ようやくシーズンが終わって、リハビリのようにPCに向かっている。今回と次回は7月半ばの岡山への旅の記録。人生初の体験をした東京3日目の出来事は、またいつか。
有給休暇を使って新幹線に乗る金曜の朝。こんな新幹線に乗ったことがない・・・というほど、車内は異国情緒に満ちていた。英語に中国語にスペイン語・・・らしき言葉が飛びかっていて、唯一耳にとどく日本語は、車内放送だけ。周囲はおそらく外国人観光客ばかりで、家族連れや学生らしき若者たちのグループで賑わっている。
KYOTOで彼らの多くは下車したけれど、まだまだ車内へ残っている。是非、HIROSHIMAへ行ってほしい。わたしは手前で降りるけどね。
生まれてはじめて降りたった岡山駅のホーム、空が広い。大きな駅周辺にありがちな超高層建築物が見あたらない。視界がひらけているからか、旅先だからなのか、解放感たっぷり。スーツケースを引いて構内を歩いていると「デミカツ」と書いてある店が目に入った。
カツ✕デミグラス。 赤味噌文化圏に住んでいることもあって、この組み合わせは未体験ゾーン。岡山名物と書かれているからには、食べてみなければ。
デミカツなるものを、生まれてはじめて食べている。
— 水野うた (@uta_mizuno) July 14, 2023
ざくざくの衣、酸味と甘味がほどよい、洋食のそれとはひと味ちがったやさしいデミグラスソース、しっかり味が絡めてあるキャベツ…おいしい!
両親が東海圏出身で、こどもの頃からカツといえば家では味噌カツだったけれど、このお味も好き。 pic.twitter.com/dfuzQYXz1w
構内のスーパーに入ると、東海圏のスーパーでは見かけないメーカーのラーメンや乳製品が売っていて、興味深い。行列のできるラーメン屋さんシリーズの尾道ラーメンは初めて見たような気がするし、呉冷麺も見たことがない。第一、スガキヤの冷やし中華が一種類もない。面白い。
翌朝までの水分を買って、ホテルへ向かった。
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ホテルのロビーで待っていると、その人がやってきた。笑顔で手を振り、ハグをする。ん? 思っていたよりも背が高いぞ・・・?
どれだけその人の作品を読んでいても、何度となくZoomで話していても、背の高さまではわからない。初めてリアルに会う人に「うわ、デカい!」と失礼な物言いをして、ほんとうに申し訳ない。でも、とってもうらやましかったんだよね。チビなのがコンプレックスだからさ。
晴れの国はどこ?と思うほどの曇天の下、岡山のアーケード商店街を案内してもらって、ビアレストランへ。
時は16時ちょっと前。地元の女子高生に人気というハニー&キャラメルトーストをわたしと半分こしながら、その人は実においしそうにビールを飲んでいる。
つまみにするには甘すぎるだろうから、甘党のわたしに合わせてくれたに違いない。飄々としているように見えて、実はそんなやつなんだろうと思う。細やかに人を観察していて、気づかないフリをしているけれど、実は気づいている。それをどこまで相手に伝えようか迷ってきっとそれほど口にすることはない。結局、細やかな人間観察結果は、ほどよく熟成されてから作品に昇華されるのかもしれない。
そんな彼女の心遣いに甘えていたら、心の奥底に沈めた箱のふたが、不意に開いてしまった。気づけば、人間の根幹に関わる性とアイデンティティの深淵を、ふたりで覗きこんでいた。
きっとこのタイミング、この組み合わせだからこそ、そこまで潜れたのだろうと勝手に思っている。
人生は身を委ねたくなるほどに甘く重くとろけて、シュワシュワしててほろ苦い。
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どうして岡山なのに沖縄居酒屋なんだろう?と思ったけれど、行ったことのある店で美味しかったから・・・という彼女の実直さを、わたしはとても信頼している。ここで合流したのは、性別迷子のわたし達よりもかなり年若い男子。
飲めないわたしとは裏腹に、ふたりは淡々と顔色ひとつ変えずに酒を呑む。呑める人がうらやましい。呑める人生は飲めない人生よりもきっと豊かだろうから。
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どうやら撮り忘れたようだけれど、ゴーヤのおひたしがびっくりするほど美味しかった。薄切りのゴーヤが、シークワーサーとお出汁と塩で味付けされていて、細いかつおぶしがかかってた。この夏、何度かトライしたけれど、再現できないでいる。
書く人どうしが集まれば、おのずと書く話、書いている人の話になる。
ある書き手の話題になったときのことだ。熱弁をふるう彼を見ていて、ちょっとうらやましく思った。他者にフォーカスするには、自分を生きる以上のエネルギーが必要だけれど、わたし自身にはそんなエネルギーは今はもうないから。
誰かのことを語ると、自然とみずからを振り返ることになる。まぁまぁしんどい思いもしながら生きてきたけれど、今のわたしは嫌いじゃないな、とも思った。いっぱい傷ついてきたけれど、だからこそ解ることもある。
わたし達は侍のよう、だったそうだ。切れ味するどい刀を携えていて、居合抜きのようにすぱっといく。
そうかもしれない。でも、刀は抜いても、汚さないまま鞘に戻したい。懐刀は誰かを傷つけるためにあるのではなく、お守りなのだから。
少々呑みすぎたらしい。でも、アルコールは一滴も飲んでいない。
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翌朝は岡山駅のちょっと目立つ土産物売り場で、これまた会いたかった人たちと待ち合わせ。自分への岡山土産として、倉敷真田紐のシューレースを買った。和装の、たとえば帯締めなどにありそうな平紐の靴ひも。
待っている間に、カメラ遊び。F値を大きくして光量を絞り、シャッタースピードを遅く設定して、壁に自分を固定する。三脚を使うほど力の入った撮影はしないけれど、旅先でやるこういう遊びがたまらなく楽しい。
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待ち合わせたふたりも長いあいだ文章を読み合ってきて、Zoomでも会話をしてきた仲間。イベント本番までの空き時間のショートトリップ、行き先は倉敷。
観光もしたいけれど、せっかく遠方から集まるのだから、心ゆくまで話をしたい。だから、目的地は美観地区のカフェにした。思い返せば、店を決めるまでのやりとりも含めて、すべてが旅だった。
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それぞれがいま取り組んでいる勉強や仕事の話、家族の話、車の話・・・話題は尽きなくて、全然時間が足りなかった。岡山へ戻る電車の時間を見計らって、店までタクシーを呼んだけれど、なかなか来ない。乗り込んでから、電車に間に合うかを話し合っているわたし達を見て、運転手さんが機転をきかせてくれた。
「お客さん、ここでいったんメーターを切りますから、いま(信号待ち)の間に精算しましょう。そうすれば駅について、すぐに走れますから。まだ間に合うかもしれませんよ」
運転手さんの心遣いがあたたかかった。ありがとう。地元だったら、名刺を頂いて帰るところだったけれど、岡山だからね、なかなか次も乗るからね・・・ってわけにはいかなくて残念だった。
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乗るはずだった電車を逃したわたし達は、しかたなく特急やくもに乗った。
思いがけない珍道中は、旅のスパイスよね。
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