霧中

霧の中 ヘルマン・ヘッセ

霧をさまよう 不可思議さ
寂寥とした 草と石
木々も互いを まなざせず
すべてのものが ひとりきり

人生の明るい途上
世界は友で 満ちていた
いまでは霧に 包まれて
もはや誰にも まみえない

まったくもって すべてから
抗いがたく ひっそりと
ひとを隔てる あの闇を
知らない者は 聡くない

霧をさまよう 不可思議さ
人生はいかにも孤独
誰も互いに 見えわかず
ひとしくすべて ひとりきり

Im Nebel Hermann Hesse

Seltsam, im Nebel zu wandern!
Einsam ist jeder Busch und Stein,
Kein Baum sieht den anderen,
Jeder ist allein.

Voll von Freunden war mir die Welt,
Als noch mein Leben licht war;
Nun, da der Nebel fällt,
Ist keiner mehr sichtbar.

Wahrlich, keiner ist weise,
Der nicht das Dunkel kennt,
Das unentrinnbar und leise
Von allem ihn trennt.

Seltsam, im Nebel zu wandern!
Leben ist Einsamsein.
Kein Mensch kennt den andern,
Jeder ist allein.

ヘッセ「霧の中」は、わたしの先生が、講義中、七五調の訳を、二連目まで、諳んじてくださったことがありました。
すらすらと。ようようと。感動しました。
調べましたが、どなたの訳か、明確なことはわかりませんでした。先生の亡きいまとなっては、さらにわかりません。
思い出もあり、好きな詩でもあるので、自分なりに、できるだけ七五調で、訳詩してみました。
これで完成とは思っていません。深めていけたらと思っています。

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