さざれ石

引き出しのなか カラコロと鳴るまで
しまっていたことさえ忘れていた

なめらかな鈍色に託すほど
大切な記憶があったはずなのに

潮騒が聞こえてきそうな気はするけれど
もう何も思い出せない

小石は想い出の抜け殻か 否
波に幾度も洗われて丸くなった〈とき〉の形見だ

掌に ゆうにおさまる さざれ石
だが 重石であり 温石でもある

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