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エッセイ「水野虎二郎はねこである」

 水野虎二郎(みずのとらじろう)は、ねこである。生後二か月くらいの時に、母ねこに置いていかれ道端で鳴いていたのを水野家の主人に拾われてやってきた。水野家では、すでに柴犬が買われていたので、弟分ということで虎二郎と名前がつけられ、普段は「とら」と呼ばれている。

 現在は五歳になり、体長四十九センチ、体重六キロだから、大き目のすいかくらいの重さがあるので長い時間は抱っこできない。オス、雑種、柄は茶トラ、すなわちきつね色の被毛に覆われて茶色の縞模様がある、口周りとあごの毛はオフホワイトだ。ひげは真っ白で張りがあり長さはまちまち、左右それぞれ十五本ほどはえている。鼻と肉球は、普段はシクラメンピンクをしているが、興奮するとローズ色になる。オスの茶トラのわりには、顔が小さく耳がでかい(茶トラのオスは顔が大きい個体が多い、漫画ホワッツマイケルのマイケルのように)、目も円いので、いつまでも子供のような幼さがある。最大の魅力は、ガラスのビー玉のような、いやビー玉よりもずっと透明でまぢかで見ていると吸い込まれそうな瞳である。イエローに少しグリーンがかった澄んだ瞳には、世界はどんな風に映っているのだろか、人間の目には見えないものが見えているのじゃないかと思わせる神秘的な美しさだ。

 性格は、俺さまで怖がり、甘えん坊で飽きっぽい。撫でられるのが大好きで、感情表現はしっぽでする。しっぽの長さは二十九・五センチで、根本の柄は薄く全体にきつね色だが、先に行くほど茶色と白のコントラストが強くなり、縞々の間隔が大きくなる。ご機嫌な時は、しっぽを左右にゆっくり大きくふる。気分がだんだん興じて興奮してくると、ブンブンと激しくふる。怖い時は下にさがり、緊張が高まった時には毛が逆立ってぶわっと膨らむ。返事もしっぽでする。「とら」と呼ぶと、しっぽの先だけをパタっとふる。目を閉じて寝ていても名前を呼ばれるとしっぽだけが、はいよっと動く。動かなくなったら、すっかり寝ている証拠だ。

 しっぽでのコミュニケーションは、子猫の時から一貫しているのだが、年齢を重ねるたびに変わってきたことがある。子猫の頃は、ほとんどしゃべらなかった。鳴くことはあったのだが、人間に何かを言ってくるとかはなかったのだ。それが成長とともに、話しかけてくる回数が増えてきた。お腹がすいたとか、構ってほしいとかの要求している時はわかるのだが、何かを訴えているような、教えてくれているような、物申す的な時がある。きっととらの進化の速度に、こちらがついていけていないのだと推測する。あと二十年くらいたてば、もっと進化が進んでとらが人間の言葉を使えるようになるかもしれない、と期待をすることにした。ねこは二十五歳を超えると化け猫になる説もあるから、今後も観察を続けたい。

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